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【報告レポート】2022年度活動報告会-特別なスタンスとスキルを持つ介助者の実態把握とネットワーク構築

こんにちは。
今回は、3月18日に開催(日本財団助成事業)した、活動報告会についてまとめていきます!

  • 活動報告会-2019~2022年度の活動についての報告会開催について

※活動報告会のアーカイブ配信は4月18日まで。お申込みの方へYouTubeリンクをご案内しています。

概要

  • 日時:2023年3月18日(土)14:00~16:30

  • 方法:zoom

  • 申込者:121名

  • アーカイブ配信:3/19~4/18@YouTubeにて限定公開


はじめに

  • 団体&プロジェクト説明を行いました。

活動報告会より一部抜粋
活動報告会より一部抜粋
  • 理事長岡部(ALS当事者)よりメッセージ

今日は境を越えてのイベントにご参加くださってありがとうございます。また日頃のご支援に心より感謝申し上げます。
今日は活動報告ですが、この活動は境の中のいちプロジェクトではありません。まさに、境の柱となっているものです。
私たち重度の障がい者は支援無くしては生活が成り立ちません。重症度によっては生命の維持さえままなりません。いずれにしても、介助者がいること、また介助者との関係性が人生を大きく左右するということです。
私は、この介助者のことを「生きている呼吸器」などと呼んだりしていますが、まさに、私の一部なのです。人生の伴走者とも言えると思います。
ところが、そういう介助者の存在が社会では知られていません。
重度障がい者の介助者は、介助者の中でも大変少ない人数なのです。
ヘルパーの100人に1人か2人とも言われていますが、患者当事者の人生の伴走者までになれる介助者は、ヘルパーの中で1000人に1人か2人かもしれない程少ないのではないかと思うのです。
そういう稀有な存在の介助者のことを知っていただくことと、1人でもそういう介助者が増えてくれることを目指して境を越えてを立ち上げたのです。
また、そういう1000人のような介助者が互いに連携し合ってくれることを切に願っています。
今日はそんな介助者が集まっていろいろやってきたことを皆様にご報告できればと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
まだ直接この会に関わっていない方も、これを機会に私たちと繋がってくださったら大変嬉しいことです。


介助者たちによるトーク

  • はじめに:進行役の介助者より

・若い介助者たちもいるけれど、10年、15年以上の経験と十分なスキルを持っている方たちの集まりです。何か皆さんの日々のヒントになったり、「そうだったのか」というちょっとした救いになれたりしたら嬉しいです。
・「特別なスタンスとスキルを持つ介助者」と書かれているけれど、私たちはそうは思っていません。私たちも日々「これでよかったのかな」「もっとこうできたんじゃないかな」と悩みながら仕事をしています。

  • 自己紹介&失敗エピソードをお話していただきました。ここでは、一部ご紹介します。

【Aさん】
・この集まりは、ケアが特別上手にできるとかではなく「どのように向き合っているか」が共通しているメンバーだと思う。
・失敗はいろいろある。例えば、ベッド上で洋服のしわを直す場面での失敗。なんとかしわを直そうとがんばるけれど、それで1時間経つこともある。「優しくやりすぎたのかな」と思い、思い切りひっぱったら破れてしまった。胃ろうからの経管栄養中に、栄養剤や食事をぶちまけてしまったことも何度もある。

【Bさん】
・高校を出てから訪問入浴で働き、その後重度訪問介護の介助者になった。
・重度訪問介護のヘルパーになって最初の壁は「料理がまったくできないこと」。研修初日に、お米のとぎ方から教えてもらった。
・訪問入浴の頃には歩行を支えきれずに転倒させてしまうこともあったし、胃ろうから食事をぶちまけてしまうことは私も何度もある。
・この集まりに参加していて、皆さんと話すことで気持ちが整理できたり、こうしてみようかなとヒントを得られることがある。

【Cさん】
・成功談は話せないけど、失敗談なら話せることがたくさんある。
・(今はそうでないが)ベッドの上の棚から物を取ろうとしたときに隣にあった物を落として利用者さんの顔に落としてしまったり、利用者さんの外来通院時に自分がぎっくり腰になり受診をすることになってしまったり。
・失敗を隠すのではなく、現場のみんなと共有して、どうしたら防げるかを話し合ったり、新しく入ってくる介助者に失敗談や対策を交えながら教えたりしている。

【Dさん】
・コミュニケーションにおける失敗談。郵便で届いたご本人の医療証を「ここに置きますね」と言って仕舞ったが、本人には何が届いたか・どこにしまったか伝わっていなかった。そもそもこちらに意識を向けていないときだった。その後、他の介助者と大捜索をさせてしまった。視線や体を自由に動かせない症状の場合は、ご本人の視界の前で、どんな郵便物か・ご本人が理解したか、を確認すべきだった。

【Eさん】
・ご家族のフォローをしようと努めていたら、他の介助者の愚痴を聞くことになってしまい距離感が適切でなくなってしまった。

【Fさん】
・介助者が定着しないおうちというのがあると思うが、最近出会ったケースについて。介助に入りながら定着しない原因を見ていくと、そのおうちはご家族にあった。ご家族が介助者を「家政婦」のように思っていた。
・家族は介助者になってはいけないと私も思っているが、それは「家族のために介助者が入る」という意味ではなく、「介助が必要な方に介助者が入ることによって、家族が介助から離れて家族として存在できる時間がうまれる」ということだと思う。「介助者がいないから私がやらなくちゃいけない」と言うのは逆だと思う。


日常動画の紹介

  • 2022年度に作成した動画について紹介しました。

活動報告会より一部抜粋

・介助者って孤独だと思う。利用者さんと一対一のことが多いし、介助者同士で何かやるということも少ない。
・「私何をしているんだろう」と漠然と不安になることもあると思う。
・表に出づらい仕事だからこそ「一緒にがんばっている仲間がいるんだよ」ということを、動画で親しみやすく見てもらいたい。

動画作成メンバーより

当日は2本の動画について、参加者の皆さんと視聴しました。

・どうしてこんなハイレベルな介助者になったのかが気になる。
・うちでは、横のつながりを意識して、1時間ずつ重なって入れるようにしたり月1回集まって話したりシフトを決めたりしている。どうしても介助者内で解決できないときには、家族が入るようにしている。(ご家族より)
・「(続かない介助者は)気持ちが私に向いていない人かな」という言葉がすごくよくわかる!(当事者より)

参加者より

別の記事にて、全6本の動画をご紹介いたします!
この記事とあわせてご覧ください。


質疑応答

  • 事前にいただいていたご質問についておこたえいただきました。ここでは、一部ご紹介します。

【質問】
情動制止困難とハラスメントについて。また、その対応について。
【応答】
・介護現場でのハラスメントは「カスタマーハラスメント」と言われる。
介護現場におけるハラスメント対策 (mhlw.go.jp)(厚生労働省より)
・この中の「管理者向け研修のための手引」より
……「BPSD(認知症の行動・心理症状)による暴言、暴力、性的行動はハラスメントではないため、ハラスメント対策の取組ではなく、認知症ケアによって対応する必要があります。適切なケアのためにも、BPSDによる暴言、暴力、性的行動を受けた場合に職員が一人で問題を抱え込まず、上長や施設・事業所内で適切に報告・共有できるようにすることが大切です。報告・共有の場で対応につい て検討することはもとより、どのようにケアするかノウハウを施設・事業所内で共有できる機会にもなります。そのうえで、組織的に対応することが重要です。」
・情動制止困難もこれと同じラインで考えられるのではないかと思うが、大事な観点は、情動制止困難がハラスメントに当たるか否かという一元論で捉えるのではなく、情動制止困難であってもハラスメントであっても、従業員・ヘルパーの就業環境や精神衛生が害されるものであれば、一人または少人数ではなく、事業所や事業所外のネットワークも含めてチームでその対応やケアに当たっていくことが重要だと思う。
・違いを上げるのであれば、情動制止困難は病気や障害による症状の一つでありあくまでもケアの対象であること、モラハラ・パワハラ・カスハラの共通点は労働者の就業環境が害されることなので、事業所やチームによる対策が求められることだと思う。

CIL(自立生活センター)管理者より助言を受けての応答

【質問】
意思確認が難しい方のケア。自分のしていることが本当に利用者さんの気持ちに沿ったものなのか、迷いと不安がぐるぐる渦巻いている。
【応答1】
・私もまったく状況、同じ思いでぐるぐるしている。
・その中で私が大切にしていることがいくつかある。
①読み取りが難しくて文字の確定ができないときは、「ごめんなさい、わからないけど今やれることを最大限にやりますね」と断りを入れてから全力で向き合う。
②発信が困難な方には、できるだけ多くの選択肢や提案を出すようにしている。選択肢を増やすことで、その人らしい生活に近づけるのではないかと思っているから。
③過去の生活や趣味など、その方を知るための努力をする。
その方によりよい生活をしてもらいたいから悩むのだと思う。例えその日にしっくりくるケアができなくても、その気持ちは利用者さんに伝わっているはず。
【応答2】
・4文字を1時間半かけて読めるときもあるが、どうしても取れないときもある。「自分ができないからだめなんだ」ではなく、「病気の進行だから仕方がない」と一度心をそこに置いて前に進むほういいのではないかと思っている。
【応答3】
・意思確認ができていたときの自分たちの経験値(好きなもの、快適なものなど)を活かしつつ、完璧にやろうとせずに「きっとこうだよね」とやっている。
・でも、経験してこなかったこともある。例えば、コロナのワクチンを打つかどうか。意思がちょっとでも確認できる瞬間があると思うが、それが自分のときにあるとは限らないから、次の介助者・その次の介助者に申し送りをしながら、何日も・何人もで確認した。


アンケートより

  • いただいたお声を一部ご紹介します。これらを参考に今後も活動してまいります。

・当事者の方やご家族の生の声、同じ仕事をする他社所属の方の生の声をこんなにじっくりお聞きできたのは訪問介護を始めてから初めてであった。心救われる想いになりながら視聴させていただいた。
・重度訪問介護ヘルパーをはじめてもうすぐ2年になりますが、離職率が本当に高いです。(中略)私自身の悩みは、利用者さんの求めるケアが利用者さんの思うようにできず長時間かかっていることや、私にだけ色々なケアを求められ仲間のヘルパーさんと足並みそろえられていないことです。今回の報告会では、今悩んでいることへの答えがわかり頭の中がすっきりして希望がわいてきました。ひとりでかかえこまない、ケアではなくその人自身をみる。動画では空気感が伝わり、信頼関係ができているお宅では実際どのようにコミュニケーションをとり、ケアされているのかが分かってとても参考になりました。
・介助者として長年発信しづらかったことについて言及されていた。
・常に抱えている「孤独」や「不安」が自分だけではないことに安心と癒しを得、このやっかいな感情により自分が壊れない術を身につけて大好きなこの仕事を続けていきたいと思えました。
・当家のヘルパーさん達にも見てもらい、今度のヘルパー会議で議題にさせてもらい、参考に取り入れられるところなどについて話し合いたいと思います。
・現場での情報は現場にある連絡ノートでしか分かりませんが、今回ご紹介頂いた「ナラティブブック秋田」なら、直行直帰の介護ヘルパーでも現場の様子を事前に知ることができたり、利用者さんの望む生活が分かりアプローチしやすくなると思いました。(※参加者より紹介くださったもの)
・命をつなぐ、適切なケアをする、事に余裕がないと、ご本人の気持ちを確認する事が後回しになってしまうこともしばしばです。改めて、ご本人と向き合う事が大事だと痛感しました。

【質問】
情報共有システムの「MCSメディカルステーション」について、もう一度教えて下さい。
【応答】
詳細はMCSで検索して頂くとよく分かりますのでお薦めしますが、一番の特徴は、「当事者、家族を含む支援者グループ」と、それとは別に「支援者のみのグループ」が作成できて、情報共有がそれぞれで可能なことです。
MedicalCareStation|医療介護専用コミュニケーションツール (medical-care.net)

【質問】
文字盤等のコミュニケーションツールの導入はどのように行われるのか教えて下さい。
【応答】
これは本当に人それぞれで違うのですが、
オーソドックスな形は、難病の確定診断が出た病院で、
・ドクターから紹介される
・MSW(医療ソーシャルワーカー)から紹介される
・ナースから紹介される
などで存在を紹介されると思います。

症状が進み、声でのコミュニケーションが難しく感じたときに、
・当事者さんが「声と併用で使いたい」と導入する
・訪問看護師さんから使用を勧められて導入する
・家族やヘルパーさんから「使ってみませんか」と勧められる
ということもあるかと思います。
人それぞれのタイミングで導入することになるかと思います。正解というのは無くて、本当に人それぞれだと思います。

一つだけ大切なのは、
PC等に代表されるICT機器と必ず併用で文字盤や口文字といったアナログのコミュニケーションツールをお使いいただく、ということです。
ハイテク機器は停電や災害時には使用不可になることが予想されますし、機械には「絶対」ということはありません。原因が分からないけれどなぜか使えない!!ということが起きないとは絶対に言えません。
そんなときに使えるのはアナログコミュニケーションです。ですので、普段から慣れておく事をお薦めします。

また、ICT機器に関しては、日常生活支援やコミュニケーション支援といった自治体からの補助金を使用できる場合があります。お体の状況によりますので、その辺の情報の確認もぜひ行いながら調べてみてください。


お問い合わせ

info@sakaiwokoete.jp

他にも様々な活動をしているので、他記事もぜひチェックしてみてください☆
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