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グラミン・ユーグレナのCO-CEOの佐竹右行氏の語る「ソーシャルビジネスで推進するバングラディッシュ農業」

アントレプレナー塾に来ています。東京、銀座の交詢社にて行われた登壇内容を書き起こしました。

佐竹右行氏プロフィール

1979年に野村證券に入社。1997年に野村證券の金山支店長。2004年に株パラカ専務取締役に就任。2007年に東京リート代表取締役社長就任。2009年に雪国まいたけの常務執行役員に就任。2010年にグラミン雪国まいたけ(現 グラミンユーグレナ)の共同最高経営責任者に就任。2014年にユーグレナ入社。2016年にユーグレナの事業開発部長に就任。2018年ユーグレナの執行役員海外事業開発担当に就任。

難民問題は対岸の火事ではない

バングラディッシュで緑豆プロジェクトをやっています。緑豆はもやしの材料なんですね。バングラディッシュでこれを作り、日本に輸出して、貧困問題を解決するプロジェクトです。もやしと言えば、1袋30円で非常に安いんですね。80%は中国産、20%はミャンマーです。実は国産のものはないんですね。

8割の豆が中国産ということはある時に、中国がNOと言ったら、もやしがなくなってしまう。もやしがなくなってもどうでもいいと思う方もいるかもしれません。ですが、もっとも安い野菜がなくなると、他の野菜が高騰する可能性があるわけです。

グラミン銀行がやったこと

さて、グラミン銀行というところがあります。貧困層に融資して97%の回収を実現しています。いろんな本を読んでも納得できなかったんですね。20年野村證券にいたので、すごく不思議だったんです。リーマンショックは、最高の技術、最高の頭脳を使って全て吹っ飛んだ事件です。これで世界中が不況になりました。一方、グラミン銀行を作って2006年にノーベル平和賞を取ったユヌス博士は、40人の人に27ドルの融資をしたんです。1人80円とかですよ。これで企業なんてできるの、って思いますよね。80円の融資を受けた人が3つの家を持っていたりするんです。

これは絶対会ってみたいですよね。実際に話を伺って痺れました。字も読めない、ATMもない、世界です。そこにどうやってお金を貸して、返してもらうのか。じゃがいもを1kg作って売上10円なんです。1トン作って1万円ですよ。もちろん、ここから原価を考えるわけです。そんな人が1万人くらいいるんです。人口見ると30代以下が1億人います。この国は今後劇的に発展するんですよね。

実はユニクロも工場を持っています。なんであんなに品質高いものが安く売れるか、それはこれが理由なんですね。時給50円です。日本では時給1000円でも人が集まらないのに、時給50円で7倍〜10倍で集まってきます。成長率も8%になっており、ネクスト11と呼ばれています。

グラミン銀行は金利2割です。常識で考えたら、返せないですよね。でも、常識で考えないでください。回収率97%なのですから。お米を1kg15円で買い、加工しておにぎりにしたら50円になるわけです。作るのに1週間、道にならべて1週間。これで2週間で3倍以上になっているわけです。

これを続けていくことでわらしべ長者のようにやっていくわけです。5人でチームを作ってもらい、誰かが風邪をひいても対応できるようにしています。ユヌス博士はこう言っています。

「男は信用できない。女性に投資する。」

(会場爆笑)

しかし、周りは大反対でした。いまや1億人に対してマイクロファイナンスをしています。日本では乞食にお金を貸す人なんていないですよね。バングラディッシュではこれが出来ているわけです。

とはいえ、ユニクロで1日働いても1日で400円。じゃがいも1kg10円な市場環境なわけです。なんとかしてあげたいな、と思うわけです。日本に生まれただけで宝くじに当たったようなものじゃないですか。貧しい人が大量にいらっしゃるわけですからね。

バングラディッシュの農家に稼いでもらえるためには?

どうやればバングラディッシュの農家が稼いでもらえるようになるか。考えました。

もやし市場規模は600億円。緑豆輸入量は55000トン。もやしの市場価格は変わってないんですが、実は価格は上がっているんです。

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どうすればWIN-WINになるか考えました。芋の生産ではなく、もやしの生産をみなさんにお願いし、ユヌス博士と一緒にやり、1万3000名の従業員がおり、1万3000名の貧困問題の解決をしています。これによってバングラディッシュは以下のような3つのメリットがあります。

1.農村地区における貧困層への雇用創出
2.現地にて安価な緑豆の販売
3.日本の農業技術およびハイテクシステムの導入

自分たちで作れば相場に関係なく、もやしの生産ができるわけです。一方で日本では安全安心は絶対でした。かけらでも農薬や虫がついていたらいけないわけです。日本でも4000万食分の事業になっています。

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これが実際の農家の様子です。この服、1着300円くらいなのですが、カラフルで皆それぞれが違う服を着ていてとてもおしゃれです。後楽園球場5000個分の広さです。

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上と下、畑はどっちがいいでしょうか。実は下の畑が良いんです。美味しいもやしは、大きい豆が必要です。そのため、上だと大きな豆が育たないんです。下は大きい豆になり、美味しくなるんです。

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もやしが育つとこんな感じになります。機械でやると、緑のものも一緒にごっそりとることになります。でも、それだとまだ育っていないものまで取ってしまうわけです。これを手作業でやることで、収益が最大化しつつ、ものを大切にすることができるわけです。

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では、農家さんはどうなったのか。収穫量は2倍になりました。販売単価もいつもより高く買うようにしました。これで14倍にこの人の年収が増えました。農家の収入が増え、日本のためにもなっているわけです。

途上国における農業の課題

途上国で貧しい人の支援をしようとすると、あらゆる課題があります。銀行口座もないですし、電気もない。決済と集荷をどうするか、という壁があるわけです。選別作業も大変です。穀物はゴミと虫のかたまりで、選別機なんてないわけです。

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そこで選別機は日本の最高級なものを使いました。手続きも非常に大変でした。そして、やっと出来たとしても、「日本での顧客開拓」が難しい。

チリワインとフランスワインで同じ品質で1000円と2000円なんです。もやしも同じです。バングラディッシュの緑豆と言っても、引き取ってくれない。危ない、と言われる。中国の2割引きで売りました。ここまでやるのに10年かかりました。そしてようやく、という感じです。ここまでやるのは変人ですよね。(笑)

日本人3名だけではじめて、今1万人の農家育成をしています。そもそも、もやしは生産までに1年かかります。海を7000km渡って、日本のスーパーに並びます。このもやしが30円で売っている。しかも、僕らのもやしは18円。1億袋売って、1億円儲かるような計算で、非常に大変です。

ユーグレナとWFPロヒンギャ難民支援の取り組み

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ミャンマーからバングラデシュに70万人以上のロヒンギャ族の人々が避難しているといわれています。そんなロヒンギャ難民がひどい目にあっています。何万人も殺されているわけです。その問題を解決するためにまず最初にユーグレナのビスケットを20万枚積んで難民キャンプに運びました。軍隊に協力してもらい、届けました。でも一瞬で終わってしまうんです。

そこで、バングラディッシュの小規模農家の雇用創出と緑豆の栽培指導・購入(1000トン)を行いました。さらに、ロヒンギャ難民に対するEバウチャーを活用した食糧支援を3億円分行いました。

国連のWFPと組んで、2万1000名への緑豆供給をし、2000名の雇用をしました。こういった活動が評価を受けて、日本政府(外務省)からの無償支援5億5000万円の支援をいただきました。日本も「目に見える貢献」をしましょう、ということですね。普通に難民にお金を渡すと、取り合いになったり、麻薬に使われてしまったり、といろんな問題がおきます。そのため、食料支援をEバウチャーで行いました。1人1000円渡すと、5人家族で5000円。バングラディッシュだと米1kg40円くらいです。これで生活が出来ちゃうわけですね。

普通の支援は難民がかわいそうなので、お金を送って終わり。でも、ビジネスマインドがあれば、違います。収入を確保しつつ、支援を未来永劫続くようにできるわけです。10年前3人ではじめたことがここまで大きくなりました。10年前はSDGsなんて言葉はなかったんですが、今思うと一番最先端をやっていたんだな、と思います。

ITインフラ(AGRIBUDDY)の活用

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「あなたの畑はどのくらいの広さですか?」と聞くと、「1ヘクタール」と言われます。でも、実際に測ると0.7ヘクタールだったりする。サバを読んでいたりするんです。生産量もなんか少ないな、と思って聞くと「食べちゃった」とか言われる。

(会場爆笑)

そこでAndroidの端末を1万円で買ってアプリを使えばすぐに測量できるようにしました。進捗状況・情報共有もすぐに出来ます。8000箇所の畑のマネジメントもこれで行います。

バングラディッシュには12時間飛行機でかかります。飛行場から12時間かけて畑まで時間がかかります。日本から畑に行くのに24時間かかります。豚肉もダメ、シャワーも水しかでない場所です。

そんなところで、社員のマネジメントはどうすればいいでしょう。AGRIBUDDYですぐに可視化しています。中小企業の社長さんからはよく「うちの社員にこれもたせたい」と言われます。

最初の反応

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最初の反応は、とても冷たいものでした。誰も信じてくれなかったんです。クーラーもなく、暑いところで12時間くらい話すんです。論より証拠ってことで、畑を作って豆ができる、それをひたすら5年やったんです。

1人お金持ちができると、一気に増えました。

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プロジェクトULKA

今後は恵まれない出産をしたバングラディッシュの女性支援のプロジェクトも立ち上げることにしました。自立支援のためのソーシャルビジネスです。1000円のペンを売って、30%が原価。40%分は女性のために貯金しておきます。ある程度溜まった段階で、独立支援のための資金にしています。

どうもありがとうございました。

サポートされた費用は、また別のカンファレンス参加費などに当てようと思います。