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思春期早発症 2021.9月

それは見慣れぬ、いや見慣れたような電話番号の着信から始まった。

わたしはそのとき、子供の習い事の保護者とはじめてのママ友会というものに参加して、食後のお茶をしていたところだった。
なんとなく、今電話に出る気がしなくてそのまま着信が終わるのを見送った。
すると、その番号は留守電に変わってメッセージが入っていた。
これ、なにかヤバい件かなと一瞬よぎりYahooで番号を検索したら、小学校からの着信だった。あちゃー、またケガしたか熱でたかと思い折り返したら、保健室に繋がった。

『こんにちわ〜。○ちゃんなんですが、お母様、健康カードに成長曲線の印がつけておりますが、何かわかったことありますか?』
へ?なんだそれ。
え、それが‥なにかと関係あるんですか?
頭のなかで全く考えていなかった質問だったので、ココロの声がそのまま出てしまった。

『あのですね〜。○ちゃんのグラフを見ていただいてわかっているかと思うんですが、この1年でかなり成長の伸びが著しいんですね。今のこの時期に発育のスピードが早いと、止まるスピードも早くなってしまい、身長が130センチ代で止まる可能性があるんです。』

コーヒー店の外で携帯をにぎる右手の血の気がみるみる引いていくのを耳元で感じた。

思春期早発症の傾向があらわれています。
○ちゃんの健康診断の成長グラフのコピーを帰りにお渡ししますので、専門内科の受診でご相談されてみてはいかがでしょうか。

そんな内容だったような気がする。
保健の先生が、一生懸命ことばを選びながらさりげなく受診をすすめているのを脳裏で感じながら、これは厄介な症状なんだな、と察知した。

あー。あたままっしろ。

コーヒーの香りがする店内に戻り、ママ友さんたちに平静を装って電話でこんなことがあったと話すのが精一杯だった。
あまりに予想してなかった内容だったので、他者に話さずにはいられなかった。

ー これからどうしよう ー
漠然とした不安で、ママチャリに乗って家路を急いだ。

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