見出し画像

HeroMakersを通して自らの変化

経済産業省「未来の教室事業」HeroMakersを通じて、自分の考え方と行動の変化について、報告書にもまとめたのですが、せっかくなので公開します。

これまでの私(HeroMakers前)

首都圏において、いわゆる進学校を卒業し、教員養成系大学を卒業・教員免許を取得後、学校や企業で勤務したのちに、高知に移住して教員をしている。

企業に勤めていたころ、学校ではできないであろう新しい学びを提供するために新規事業を立ち上げて、企画運営を行っていた。はたらき方も企業側がフレックスタイム制を取っていたため、ある程度は裁量のある働き方をしていた。地方の学校現場で働くことになり、それまでとは異なる不自由を感じながらも「学校はこういうものか」と自分に言い聞かせながら、あまりにも不都合に感じる部分については異を唱えてきた。が、心のどこかで「まぁ、仕方ないか、学校だもの」と黙って仕事をしてきた。

というものの、学校外へ飛び出ていくタイプではあり、教育に関係する・しないに関わらず、組織を越えた知人が増えつづけていた。

特に、こうした学校の枠組みを越えた活動を行うということについては、

『学校外におけるコミュニケーションにより人とのつながりが増えることで、学校の広報活動・課外活動に有効であること』

『情報のリソースを確保することによって学校内での自らの価値の向上すること』

『学校外における「教員」という職業の人物が貴重であり学校外でも活動したいと考えていた自分にとってブルーオーシャンであること』

といった認識があり、これらのことに気が付けてるのは、企業での経験があるからであり、学校の外への出方を知っているから、教員っぽくない異端な教師と評されるのだろうと、勝手に思い込んでいた。どこかで、いわゆる教員ってそういうことをしない人たちとも思い込んでいた。

これらは、完全に思い込みであり、見つけられない・出会えないものであったということを気づかせてくれたのが、HeroMakersであった。

HeroMakers BOOT CAMP

白川寧々(ねね)の存在は「ねねみそ本」で知っていた。

また、瀬戸宣徳(まさ)とは高知で何度か顔を合わせる間柄であった。高知の「あこ」でBootCampを行うということで、参加もしやすいし、「異端x先生の化学反応で起こす、思い込みの壁壊しパーティ」と掲げられているので、たぶん教員と自称している身としては参加のハードルが低かった。

また、事前のオンラインミーティングにおいて、名物先生とかの単なるヒーロー養成講座ではなく、HeroMakerでありヒーローを生み出す側の養成講座だとねねが言い切っていたことは、私の参加したい気持ちを加速させた。

参加した最初の印象は「圧倒的なねねの存在感」でしかない。自由にかつ論理的に学校を否定していく。異端である自覚があった私にとっては、耳はイタイのだが、痛快であった。「こういう話をしてよかった」ことを思い出させてくれた瞬間である。学校の闇の部分を切り込んでいく(切り刻んでいく)姿を見ていて、心の底から笑っていた。あとで、「のざたーん、爆笑しすぎ」とねねから指摘されたのはいい思い出である。

BootCamp自体は、非常に大変な(いい意味で「悪夢のような」)3日間だった。英語を使って、自分と向き合うことに迫られる。自分がどうありたいのかを考えることは、教員をしている際には無い経験だった。どちらかといえば、ハードな企業研修や集中して新規事業を立ち上げる企画会議みたいな印象。それのどれよりも、頭がしんどかった。「アントレプレナーシップって、学校に必要なの?」という疑問が無かったわけではないが、参加したらそんな疑問は吹き飛ばされた。自分のありたい姿を絞り出す作業こそが大切であり、学校にも必要なものであることがクリアになった。

また、自己開示しながら、周囲の参加者と教育に関わる意見交流ができる機会は、教育界で孤独を感じていた私にとってはありがたい場でもあった。教育界のイノベーターは2.5%程度アーリーアダプターを含めても16%程度は存在すると感じてはいる。しかし、学校間で分断されており、教員のみの研修では、その部分は隠されるため、出会うことが少ない。とくに地方においては出会える数が圧倒的に少ない。そのなかで、全ての参加者がBootCampを終えた後も交流できる間柄であること自体が、このHeroMakersBootCampの意義だったように思える。

もう一度、あのBootCampをしたいか?と問われたら、正直「うーん」と悩んでしまう。それぐらい、頭がしんどい。逆にいえば、どれだけ教員って仕事をしてて、頭を使ってなかったんだろうって振り返らせてくれた。

未来の先生展

ねねが「展示物としての先生として来て、pitchしたくない?」ってアナウンスをしてくれたことは、私にとってありがたい機会であった。というのも、地方在住の異端な教員としては、外に出ていく機会がほぼ無い。教員の世界であるのは、素晴らしい(とされる)授業実践例や学校の取り組みをもったモノだけに開かれるチャンスだけ。教育とは直接関係がないと思われるような活動をプレゼンできる機会を得られたことで、私自身の活動を振り返ることができた。更に、HeroMakersの東の参加者と出会えたこともいい機会であった。特に、現役の高校生がプレゼンしている様子は、教員として刺激を受けるきっかけとなった。

画像1

オンラインミーティング

毎週のようにzoomを通じてのミーティングは、惰性で過ごしていた教員生活にメリハリを与えてくれるものとなった。学校で自信のあり方を考え直すキッカケにもなり、「こうありたいありたい」という自分像をアップデートしながら、学校(勤務先)での行動の1つ1つを振り返ることができた。そのために学校での衝突もあったが、HeroMakersのメンバーとやりとりをすることで、「まぁ、仕方ないか、学校だもの」と諦めることをやめるようになった。全ては子どもたちのためにと考え続けられることができた。

Tosa Educator's Guild(TEG)の設立

自分のありたい姿を検討するなかで「高知県のおもろい先生および教育関係者やそれに関わる人たちのゆるい組織」を設立することにした。推進役となる仲間がいることに気づき、co-founderとなってもらい、後押しをしてくれた。こうしたメンバーを振り返って探すことをさせてくれたのも、間違いなくHeroMakersのおかげである。

TEGで行うこととしては、メンバーが子どもや保護者や同業者の困りごと相談を受ける「よろず相談所」や、学校という組織の枠を越えて情報共有をする「学校のお困りごと相談所」のような場をオンラインを中心にした組織体を社会に実装することで、何かが変わっていくのだろうと考えている。教育界のイノベーターが出会えるプラットフォームがあることで、教員同士もしくは教員と社会人との化学反応が起こることを期待してのことだった。

設立後、ミーティングやMost Likely To Succeedの上映会を行うことで、オフラインで活動を行うメンバーが集まりが広がってきた。学校にイベントを持ち込みたい社会人や、高校生とつながりを求める学生を見つけることができるようになった。

これからの私とTEG

学校外でのつながりを大切にすることは引き続き行っていたため、私自身が省庁関係者と出会う機会も手にすることができた。年末に発表されたGIGAスクール構想について発信することをキッカケ(「#ぜんぶGIGAのせいだ」で検索すると、私がヒットするようになってるようで…)になり、SNS上を中心として自身の発信力を高めることができている。それにより、IT関連会社の方からも声をかけてもらったり、来校して意見を交わせる人材となりつつある。

いわゆる教員という小さな枠組みにとらわれることなく、社会とつながった教員としての自らがありたい姿に近づけている。高知市内にあるスタートアップ支援の場において、保護者と教員の交流する会を定期的に行うことを計画を薦めており、3月から開催予定である。また、定期的に実際の教員と気軽に会える場の提供も計画中である。

なお、これらの取り組みが評価され、高知のある学校から、TEGの co-founder と共に採用オファーがあり、2020年4月より所属を移す予定となっている。このコースは既存の教育ではできなかったことをチャレンジしようとするメンバーが集まり、生徒が在りたい自分でいられるHeroMakersを実践できるコースにする予定である。もちろん、海外進学を見据えたものであり、全ての教科において英語で授業ができないだろうかと考えている。

TEGは、1つのコミュニティーとしてアピールできるようになり、2020年5月に高知で開催するコミュニティリーダーズサミット in 高知から時間枠を与えられ登壇する機会を得ている。また、Educampを高知で開催する企画を動かすと共に、法人化の検討も行っている。

最後に

HeroMakersは、私にとってかけがえのない取り組みである。物事の考え方・捉え方のベースとなっているし、参加者とのやりとりはこれまでの教員とのつながりとは異なるものでもある。最終発表後もメンバー同士の交流は続いている。HeroMakersメンバーのうらちゃんが主催するGEG Kochi はコロナ騒動の中、オンラインでのGoogle Education使い方講座を展開中である。そこにもHeroMakersのメンバーが集まり、各地域で活動を起こしそうな雰囲気がある。

地域だけにとどまらず、異端な教員がやりとりを続けていき、学びのあり方を再構築できるプラットフォームがHeroMakersであると確信している。同じような形態は難しいかもしれないが、異端の教員が集まり、意見交流をし続けられる環境を自らでも提供し、この取り組みの意志を引き継ぎ広めていくつもりである。

いただいたサポートは、誰でも教員と会って話せる『会いに行けるセンセイ』の活動に利用させていただきます。