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「金曜ロードショー」リクエスト企画で流してほしい映画 5選


●放映リクエスト企画、開催



日本テレビ系列「金曜ロードショー」(以下、金ロー)の放映リクエスト企画。その第6弾の募集がスタートした。
 これまでも「バック・トゥ・ザ・フューチャー」「E.T.」「ショーシャンクの空に」等といった名作が放映され、好評を博しているこの企画。俺もしっかりと5作品を投票させて頂いた。



 今はサブスクサービスが充実し、気になる過去作を好きな時に観られる時代である。一方、地上波ゴールデンタイムの映画放送枠は少なくなった。「木曜洋画劇場」「日曜洋画劇場」等が存在したのも遥かな過去…。リアルタイムでテレビを観ている人の数自体も、きっとサブスクが主流になってからは激減しているだろう。
 しかし、「たまたまテレビを付けた際に放送していた映画が目に留まり、思わず夢中になってしまう」そんな体験を得る機会を皆無にしてはならない。俺自身も、2009年に金ローで放映された「ダイ・ハード」を偶然目にしたことがきっかけで、映画好きへの道を歩み始めたのだから…。なので、このように映画放送枠を盛り上げようとする投票企画は非常に嬉しい。



 というわけで本稿では、俺が今回投票した“金ローで流して欲しい、そして多くの人の目に留まって欲しい”映画を短評とともに挙げていく。
 なお、個人的に好きでも「いや、これは天地がひっくり返っても流さないだろう…」と思われる作品は除外し、あくまでも現実的に放映されそうな範疇に留めさせて貰った。(以下、敬称略)

●除外の一例とその理由

例1:「クラウド・アトラス」

 「マトリックス」のウォシャウスキー姉妹らが監督を務めた、様々な時代を舞台に繰り広げられるSF映画。個人的には「マトリックス」以上に評価されるべき名作と感じているが、金ローではどうしても放送できそうにない。
 なぜなら、本作の上映時間は172分。約2時間の枠には収まらない。「タイタニック」(189分)のように前後編に分けて放映することは可能かもしれないが、本作は6つの時代・6つのストーリーがオムニバス的に交互に語られる複雑な構成上、前後編に分けると初鑑賞者に支障をきたしかねない。まず金ローでの放映は望み薄だ。


例2:「デジモンアドベンチャー ぼくらのウォーゲーム!」

 金ロー常連である細田守の初期作品にして個人的最高傑作。細田守の人物描写(少年少女の描き方)の面白さと吉田玲子脚本のスマートさがフュージョンした、文句無しの名作アニメだ。デジモン知識が一切無い俺でも楽しめる程に事前知識が要らないし、「サマーウォーズ」「竜とそばかすの姫」に通じる要素もあるため、それらの有名作品を観た方にも受け入れられやすいはず。
 しかし上映時間がわずか40分・TV版がフジテレビ系列で放送されていた…等の理由から、2時間枠の金ローで流れる可能性は残念ながら皆無だろう。


1、「グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち」



 心に傷を負っている粗暴な天才青年と、彼のセラピーを行う心理学の教授との交流を描いた叙情的な作品。俺の生涯ベスト10に入っている作品でもあることから、“真面目なヒューマンドラマ枠”として投票した。ロビン・ウィリアムズがアカデミー助演男優賞、作品自体がアカデミー脚本賞(脚本執筆者は主演のマット・デイモン、そして彼のマブダチ:ベン・アフレック)を受賞していることから、“金ロー放映資格”は十分にあるはず。



 本作では主人公に限らず大人たち(教授たち)の心の成長も描かれており、決して「経験豊富な大人が若者を導く」「大人が若者にほだされていく」といった一方的な側面に陥っていないため、どんな世代の人々にも受け入れられるだろう。
 リアリティがある主人公の天才描写も見所。バーで遭遇した名門大学のインテリ学生を論破(本質的には口喧嘩だが…)する際のやり取り・台詞回しは特に圧巻。脚本を書いたマット・デイモン本人もさぞかし頭がキレる人なのでは…?と感じてしまった。


2、「若おかみは小学生!」




 昨年に書いた記事でも激推しした大傑作アニメ。監督は「千と千尋の神隠し」「風立ちぬ」等で作画監督を務めた、日本アニメ業界 影の大御所:高坂希太郎過去にNHKでの放送歴はあるが、これは金ローに向いた作品であると以前から考えていた。胸がすくような爽快さと重厚な展開の両立、“フード理論”に裏付けされたような食べ物演出、そして主人公の少女が内面に抱える“圧倒的な危うさ”は、老若男女を問わず鑑賞者の心に深く突き刺さるだろう。さらに詳しい作品解説は上の記事をご覧あれ。



 ただでさえ金ローはジブリ作品を頻繁に流しているのだから、「風の谷のナウシカ」以降の宮崎駿・高畑勲 両監督作品をずっと影から支え続けている高坂希太郎の作品を流してくれたっていいはずだ。「ジブリ以外アニメは見ない!」という方は多いと思われるが、“ジブリ作品に携わった大物の作品”と大々的に宣伝すれば(監督本人にとっては不本意かもしれないが)、少しでも興味を持ってくれる方が増えるのではないだろうか。
 ちなみに同一原作のTVアニメ版がTV東京系列で放映されていたようだが、本作とスタッフ・物語上の繋がりが無さそうなので、日テレの金ローで流しても良いだろう。きっと。

3、「ウォーリー」



 人類が地球から姿を消した29世紀を舞台に、意志を持ったロボットの冒険を描いたディストピアSFアニメ。間違いなくピクサー屈指の名作であり、俺自身はディズニー・ピクサーをひっくるめても断然最高傑作だと感じている。
 だが、本作はどうにも扱いが悪い。Wikipedia情報によると、民放での放映は一度もないらしい。キャラクター数=グッズ数が少なく、「トイ・ストーリー」「カーズ」のように続編が存在しない為、流したところで何の販促にもならない…と判断されてしまっているのだろうか。



 本作は笑いあり・涙あり・風刺ありの物語、ロボット達の猛烈な愛らしさ、人類文明の未来に対する希望に満ちた結末など、あらゆる点で隙が無い。なので地上波ゴールデンタイムで放映されることにより、まだ本作を知らぬ多くの人達の目に留まって欲しい。
 憂慮すべきは“エンディングカット問題”。金ローで放映される映画は大概スタッフロールが省略されてしまうが。本作は物語の真の結末がエンドロール内の2Dアニメで描かれる構成となっている。つまりカットされたら“真エンド”に辿り着けないのだ。どうにかならないものか…?


4、「コマンドー」



 「気に入った、殺すのは最後にしてやる」「説明書を読んだのよ」「筋肉モリモリマッチョマンの変態だ」等、数々の名場面・吹替名台詞で知られる傑作お気楽アクション映画。90年代アクション映画好きとしては、やはり一本はシュワ作品を入れておきたかった。
 Wikipediaの放送履歴によると初めてTV放映された1987年以降、2008年までは1年〜1年半の周期で各テレビ局が本作を放送していたらしい。ネットミームになるのもうなずける連発具合、もはや定例の祭だった。しかし昨今、ゴールデンタイムは深刻なコマンドー不足。金ローでも2007年に放送されたのを最後に陽の目を浴びていない。そろそろゴールデンタイムの液晶モニターにジョン・メイトリックス大佐(シュワ)を召喚しても良いはずだ…!



 「シュワがひたすら大暴れするだけじゃん」と思われがちな本作だが、実際には良質な“バディものコメディ映画”としての側面もある。放映されたあかつきには、主人公の娘奪還作戦に巻き込まれるツッコミ役女性:シンディの順応力の高さ・メイトリックスとの掛け合いの楽しさに注目して頂きたい。もし「コマンドー2」が存在するとしたら、シンディの再登板は必要不可欠だろう。


5、「ダイ・ハード」



 “世界一不運な刑事”ジョン・マクレーン(ブルース・ウィリス)が封鎖された高層ビル内でテロに巻き込まれ、持ち前のしぶとさと知恵を駆使しながら巨悪と立ち向かう作品。アクション・サスペンス部分の緊張感は勿論、張り巡らされた数々の伏線回収に唸らされた人は多いはず。あまり大袈裟な言葉は使いたくないが、本作に関しては“限りなく完璧な脚本”とまで言っても差し支えないだろう。製作陣の凡ミスにより、マクレーンのシャツの色が中盤で突然変わる件を除けば…。



 俺は高校生時代 ──2009年11月6日の金ローで本作を偶然観たことにより「ダイ・ハード」ファンに…否、映画そのものの魅力・楽しみ方を知った。
 物語のシチュエーションも、敵味方含め個性溢れるキャラクター達も、全てが魅力的で俺の琴線に触れ、ブラウン管の前を一時も離れることが出来なくなってしまった※。これ程まで映画に陶酔した経験は、それまでたった一度もなかった。
 「ダイ・ハード以上に面白い映画を観たい!」そんな欲が膨らんだ結果、俺は様々な映画に触れるようになった。きっかけをくれた金ローには、感謝してもしきれない。


※本作の虜となった具体的な場面は、序盤でマクレーンが敵の会話を盗み聞きし、発せられた名前を手にサインペンでメモり人数把握を試みるシーン。「この主人公は只者ではない、頭がキレる漢だ…!」と説明台詞無しに伝わり、一気に作品に引き込まれた。


●どうか魔法をかけてくれ──結びにかえて


 上記が俺が投票した5作品となる。本当はまだまだ入れたかった作品だらけだ。「ロッキー」「クリード チャンプを継ぐ男」「ブレードランナー」「アルマゲドン」「ディープ・ブルー」「イコライザー」「恋はデジャ・ブ」「ファンタスティック・フォー [超能力ユニット]」「ガメラ2 レギオン襲来」「KUBO 二本の弦の秘密」等々…。
 ゆうに50作品以上は候補があるが、金ロー関係者が選考に掛ける作品は一割にも満たないだろう(作品によっては明らかに「午後のロードショー」向きだ)。なので心を鬼にし、放映が現実的な作品に留めさせて貰った。


 偶然名作を目にしたことでその作品を、ひいては映画全般を好きになる──。金ローはそのきっかけになりうる、現存する数少ない放送枠だ。
「ダイ・ハード」に限らず、人の嗜好を変えるだけの魔力が存在する映画は沢山あるはず。日テレの関係者の方々には、そんな魔力を持つ作品を金ローで解き放ち、偶然テレビの電源を付けた人々を魔法にかけてほしい。


 ※本稿のサムネイル画像は金ロー公式サイトより、各作品参考画像はAmazon各商品ページより引用しました。

 ちなみに、リクエストの受付は12月15日(木)の夜11時59分まで。本稿をご覧のあなたは、どんな作品に投票しますか/投票しましたか?

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