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もう、この空を見ることはできない


 西新宿を散歩するのが好きだ。
 東京都庁や京王プラザホテルなど、高層ビル群のイメージが強い西新宿。しかし区域によっては暗渠(あんきょ)や花街の跡地など、開発が進む前の街の様子を色濃く残している。そんな不思議なバランスで成立している町の雰囲気を、俺は凄く気に入っている。




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 暗渠の一例。昭和七年に架けられた柳橋は寸断され、かつての川は遊歩道となっている。余談だが、バンド「はっぴぃえんど」の1stアルバムはこの付近で撮影されているらしい。







 熊野神社横の池が埋め立てられてしまったように。
 淀橋浄水場がなくなり、高層ビル群ができたように。
 けやき橋商店会が立ち退き、高層マンションと化したように。
 新たな景色が生まれる一方で、かつての景色は消え去ってしまう。
 本稿の題材となった写真もその一例だ。



 この写真の撮影日は9年前、2012年8月12日。
 大通りに面した場所で、天に向かって伸びゆく工事現場を印象的に感じて撮影したものだ。
 ビルが完成した今日となっては、この角度から青空を望むことはできない。



 夏の青空の写真は無数に撮影しており、気に入っているものも沢山ある。
 しかし、この一枚以上に印象深い写真は存在しない。
 この空もまた、消え去っていった大好きな街の一部だから。


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