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のざわの映画感想文

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映画感想・推薦・考察などを扱った記事です。娯楽映画が中心です。準メインコンテンツ。
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#note映画部

「スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム」と“救済” (2022年映画記録 2)

「スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム」と“救済” (2022年映画記録 2)

※ネタバレ含みます!
※本文中の人名は敬称略で表記しています。

・歓声に包まれて

 映画館で歓声が起きた。
 “スタッフロール後の拍手”を経験したことはあるが、“上映中の歓声”に遭遇したのは生まれて初めてだった。
 別世界のピーター・パーカー:スパイダーマン──即ちアンドリュー・ガーフィールド、そしてトビー・マグワイアが池袋のスクリーンに姿を表した途端、観客の心は一つになった。

 今にして思

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「アイの歌声を聴かせて」は、新規軸の傑作SFミュージカル映画だった

「アイの歌声を聴かせて」は、新規軸の傑作SFミュージカル映画だった

 「アイの歌声を聴かせて」は、俺が今年鑑賞した映画(10/29時点、旧作含め約100本)の中で三本の指に入る大傑作だった。微力ながら口コミ宣伝の一助となるよう、ここに感想を書き残しておきたい。

●「アイの歌声を聴かせて」とは

 本作は「イヴの時間 劇場版」(2010)・「サカサマのパテマ」(2013)を手掛けた吉浦康裕監督の八年振りの長編作品となった、SF青春ミュージカル映画である。主人公:シ

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2021年に観て印象深かった映画を振り返る⑤ 三月編

2021年に観て印象深かった映画を振り返る⑤ 三月編

 今年観て印象に残った映画を総括するシリーズの五本目となる今回は、三月に鑑賞し心に焼き付いた四作品について振り返っていきたい。

●「バッド・ジーニアス 危険な天才たち」(2017年)

 小学生の頃からずっと成績はオールA、さらに中学時代は首席と天才的な頭脳を持つ女子高生リン。裕福とは言えない父子家庭で育った彼女は、その明晰な頭脳を見込まれ、晴れて進学校に特待奨学生として転入を果たす。新しい学校

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物語は完結し、呪縛は解かれた─ 「シン・エヴァンゲリオン劇場版:ll」の誠実さ

物語は完結し、呪縛は解かれた─ 「シン・エヴァンゲリオン劇場版:ll」の誠実さ

「シン・エヴァンゲリオン劇場版:ll」(以下「シンエヴァ」)は、とても誠実な映画だった。俺が「シンエヴァ」劇場鑑賞時に抱いたこの私見を、この度のAmazonプライム配信開始を期に振り返っておきたい。

●大作長編シリーズの呪縛

 近年、終わりが見えない大作長編シリーズが多い。
 これは決して否定的な意味ではない。その手のシリーズの多くは俺も大好きだ。例えば「アベンジャーズ」等で知られるヒーロー映

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復刊求む! 映画「ランボー」原作小説

復刊求む! 映画「ランボー」原作小説

 数日前こちらの記事で、「あらいぐまラスカル」の原作小説(自伝)『遥かなるわがラスカル』の絶版・復刊希望について述べた。
 絶大なる人気と知名度を誇る物語・キャラクターの原作が絶版だなんて、何とも意外かつ不思議な話だな…と感じたものだ。

 有名作品の原作が絶版となるのは、よくあるケースなのかもしれない。本稿で取り上げる映画「ランボー」の原作も、そんな本の一つである。

俺が最も敬愛する俳優兼作家

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今こそ再評価されるべき傑作ディズニー映画 「トレジャー・プラネット」

今こそ再評価されるべき傑作ディズニー映画 「トレジャー・プラネット」

 本稿では、ディズニー2Dアニメの隠れた傑作「トレジャー・プラネット」(2002年公開)の感想...という建前の布教をします。ネタバレは含まないのでご安心ください。

1、はじめに

 昨日の記事にも書いたように、最近「ディズニー+」を再契約した。「マンダロリアン」二期完結以後は一時的に解約していたが、MCUドラマ二作品の完結や「ラーヤと竜の王国」「あの夏のルカ」等の大作が無料配信され始めたことが

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〜臆病な自尊心と尊大な羞恥心〜 「バケモノの子」にみるミスチル「Starting Over」の考察 (後編)

〜臆病な自尊心と尊大な羞恥心〜 「バケモノの子」にみるミスチル「Starting Over」の考察 (後編)

 <前編のあらすじ(記事はこちら)>
 「バケモノの子」の主題歌「Starting Over」について、本編の内容を反映させた主題歌だ…と根拠もなくずっと思い込んでいた俺は、タイアップ決定時のニュース記事により、歌詞と映画の内容の一致が偶然だったことを知る。
 そして俺は思った。偶然にしてはあまりに出来過ぎている。本当は「バケモノの子」の内容を反映させて歌詞を書いたのではないか?

 という訳で、

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〜臆病な自尊心と尊大な羞恥心〜 「バケモノの子」にみるミスチル「Starting Over」の考察 (前編)

〜臆病な自尊心と尊大な羞恥心〜 「バケモノの子」にみるミスチル「Starting Over」の考察 (前編)

 細田守監督の「バケモノの子」を久々に観た。
 細田監督の長編映画は全て観ているが、本作は三番目に好きだ。(一番は「ぼくらのウォーゲーム!」、二番は「時をかける少女」。)映像表現・演出面は非常に素晴らしく流石細田監督!と感心させられるが、過剰な御都合主義や説明台詞が多い割に物語自体は説明不足…といった欠点があるのも否めない。私事だがリアルタイム鑑賞後、当時交際していた彼女の絶賛に対して歯切れの悪い

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