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20年物の俺の反町を聴いてくれ。

先日、やらかしました。

わたしのスマホにはその名も「がんばる」と名付けた3曲だけのプレイリストが入ってて(他はロマンスとGet Wild)、曲聴くというよりは、ちょっと頭痛が痛いからイヴ飲むな?という感じに処方するって感覚で聴く。
そして、その日は頭痛が痛いにツッコミを入れられないくらい疲れていた。そんな帰り道だった。


西武線 しず鳴り響く ギターリフ
声高叫ぶ 我が反町


思わず一句詠むくらいびっくりした……。

ハッッッ!!!と目を開けたら、隣のおばちゃんも前の席の学生も、先のドアのところにいたサラリーマンも、エコバッグのお姉さんも、みんなこっち見てた。
突然世にも奇妙な物語の世界に迷い込んだらこんな感覚なんだろうな、きっと。世界が怖い。


言いたいことも言えないこんな世の中じゃ〜


誰か、言って!
家の駅につくまで半目で寝たフリでやり過ごした、秋の夜だった。


しかし、反町はいい。

心底恥ずかしかったけれど、開き直って20年物の反町を電車に居合わせたみんなにプレゼントしたと思うことにした。

来たれ、平穏。
沈まれ、心。
やあ、反町。

やっと落ち着いてきた。ありがとう。

そう、ポイズンはがんばるときのわたしの勝負曲なんだから。恥ずかしく、ない!!(でも迷惑だったとは思う。ごめんなさい)


ポイズンは言わずとしれた伝説のドラマGTOの主題歌で、作詞は当時人気絶頂、街ゆけば振り向くままにキャーキャーキャー(また一句詠んでしまった)の反町本人がしている。

GTOは元暴走族の鬼塚英吉が教師になり、破天荒に生徒や同僚や地域や親たちの問題を文字通りぶっ壊す!していくドラマ。
人類史上一番チャーミングな松嶋菜々子のヒロインと反町はむちゃくちゃハマり役で、子供心にこんな大人になりたいと願ってしまうような、キラキラした世界があった。
どちらかといえば引っ込み思案で、両親も先生だったわたしは「こんなわけない」と「こんなふうになりたい」の間で揺れて、揺れて、最後にはこう思ったのだ。


反町になれたら、なんでもできる。


そう、カッコよさは最強の免罪符に見えた。
あいつなら許される、あの人なら大丈夫。なぜなら、カッコいいから。小さい世界でも、それは存在する。

歌詞通りに言いたいことも言えないわたしは全然カッコよくない。言いたいことは言葉にならないし、泣いちゃって言えないし、言おうとしたときにはもう話題は過去の波に飲まれてる。

あんなふうに、ズバッと言えたらね!

そんな思いを抱きつつ、思春期の黎明をこの曲で乗り切った。
でも、いつの間にか聴かなくなっていた。

やあ反町、また出会ったね。

大学で音楽サークルに入って、ライブの前座で芸達者な先輩がポイズンしてた。
たしか、井上陽水→桑田佳祐→チャゲアスのモノマネでポイズンを弾き語るってネタだった気がする。

めちゃくちゃ笑って久しぶりに反町が聴きたくなり、TSUTAYAの3枚1,000円の3枚目で借りた。

ちなみに、このときこの瞬間までずっと、

言いたい事も言えないこんな世の中じゃ〜POISON〜

だと思ってたけれど、

POISON〜言いたい事も言えないこんな世の中は〜

が正解だった。知らなかった。


そして、なんの気無しに歌詞カードをめくって驚く。

なにこれ、めちゃくちゃいい曲じゃん……。

たぶんドラマのイメージや反町効果で、この曲をある種のスター無敵ソングだと認識してた。勝つ曲、戦う側の曲、主人公の歌だと。でも、ポイズンはやっちゃえニッサンYAZAWA系の万能無敵ソングじゃなかったのだ。


サビを引用する。

言いたいことも言えないこんな世の中じゃ
POISON
俺は俺を騙すことなく生きていく
WOW WOW
まっすぐ向き合う現実に
誇りを持つために
戦うことも必要なのさ

反町は、曲の中でまだ戦ってない。
戦う前なのだ。
そして、戦え!やれ!壁を壊せ!とは言わない。
必要なのさと自分に言いながら、「こうありたい」とまっすぐ願う。


反町になれば、なんでもできるのって思ってた。
でも、反町はなんでもできるわけじゃない。
まっすぐ自分に向き合って、なんにでも踏み出して、だから反町なのだ。

ちょっと反町って書きすぎてわけわからなくなったから話を戻す。


反町隆史さんは、この歌詞を学生のときに思ってたことや当時の大人に感じることを思いながら書いたそうだ。

なんでもできると思ってた反町は、ちゃんと自分に向き合って、まっすぐに顔上げて一歩歩きたくて、この歌詞を書いた。

だから、この曲はこんなに刺さるんだ……。

それからポイズンは、わたしの中でここぞというときに自分に熱をくれる曲になった。

反町、また歌ってくれるかい?

「今、うまくいかないじゃん。いろいろ……」

突然だけど世界の果てまでイッテQが好きだ。なかでも名物コーディネーターの加瀬さんが破天荒でエネルギッシュで大好物で、俊敏に動く彼の裸一貫大柄一直線姿勢に出てくるたびにゲラゲラ笑ってしまう。

そんな彼が、最近出てくるたびに泣く。

宮川さんと探検隊と滝を登りきったとき、笑いながら泣きながら、加瀬さんは漏らす。

「でも、仕事もらって、こんないい景色も見せてもらって、ありがとうって。ね。」

どうしようもない現実は、ある。
あまりにも大きくて呆然としてしまう壁みたいなものは、急に目の前に現れる。

そんなときに「戦え」じゃなくて、
ほんとの自分に向き合ったとき、ほんとのホントの本当に大切な気持ちがあれば、
戦うことも必要なのさって、言ってくれる。
背中を押すんじゃなくて、横でちょっと笑いながら肩叩いてくれる。


もうどうしようもなくなっても、ありがとうって言える加瀬さんすごいし、またゲラゲラ笑わせてほしい。

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あれ、なんで加瀬さんの話書きたんだっけ……。

そう、自分じゃどうしようもないことにぶつかったとき、囲まれたとき、嫌になったとき。

ちゃんと自分に向き合っていたい。
汚い言葉に操られたくない。


毒づくのは自分自身だから。



そう、西武線で出会った人たちに送ります。

ポイズン。(忘れてください)



※長年こころの中でニカッとしてくれる反町がもう親友みたいに感じちゃうので「反町」敬称略で書いてますが脳内で反町隆史さんと変換してください。ポイズン。

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