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神戸からのデジタルヘルスレポート #34 (EnsoData/Mymee/PhotoniCare/SensioPro/Intelligent Observation)

『神戸からのデジタルヘルスレポート』は、神戸拠点のプロジェクト支援企業・Cobe Associeが提供する、海外のデジタルヘルススタートアップを紹介するマガジンシリーズです。

今回は第34回です!
元気にデジタルヘルススタートアップを紹介していきます:-)

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1. EnsoData:睡眠データ自動解析ソフトウェア

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企業名:ensodata
URL:https://www.ensodata.com/
設立年・所在地:2015年・ウィスコンシン/マディソン
直近ラウンド:Seed(2018年3月)
調達金額:$2.1m(HealthX Ventures、Colle Capital Partnersなど)

EnsoDataは、睡眠時無呼吸症候群などの睡眠に問題を抱える人の睡眠データを機械学習アルゴリズムを通じて解析し、臨床医が診断・治療を進めることを支援するソフトウェアです。あくまで支援対象や医療者で、患者自身に直接介入していくものではない、というところがポイントです。

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なんといっても睡眠研究でハードルとなるのが、睡眠に関連するデータ収集です。睡眠中の呼吸や脳波を計測するには専用の機器が必要で、普段の患者のデータを継続してフォローしていくことはなかなか難しいです。EnsoDataはそんな悩みをささっと解決してくれるとともに、以下のようなメリットをもたらしてくれます。

- 睡眠試験の検査時間を劇的に短縮
- コンプライアンスの改善
- 研究室やクリニックの睡眠研究の量の増加
- 収集されたデータからの示唆抽出を自動化
- 外来時の患者との対面・会話時間が増加

睡眠データの解析時間は75%減少、270以上の施設で導入されており月間の利用回数は1.4万回以上だと。立派な数字たち。

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臨床医にとっても、膨大なデータが収集できかつそれらが勝手に整理されるため、無駄な時間・コストを削減できることは素晴らしいこと。更に患者にとっても何度も検査を行ったりしなくてよくなるため、治療や研究参加のハードルが下がり、結果としてアドヒアランスも高まります。誰も損しない、素晴らしい。技術や効果に関するホワイトペーパーも出していて、アピールの仕方もいいなと思ったです。

2. Mymee:自己免疫疾患デジタルケアプログラム

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企業名:Mymee
URL:https://www.mymee.com/
設立年・所在地:2017年・ニューヨーク
直近ラウンド:N/A
調達金額:N/A

自己免疫疾患はとても複雑な問題です。同じトリガーを持つ人はいません。そんな自己免疫疾患に苦しむ患者さんは、米国だけで2,400万人以上いると言われています。自己免疫疾患の症状を抑えるための薬剤は一般に高額で種類も多く、その高額な医療費は生活を圧迫することになります。

Mymeeは、自己免疫疾患の患者を対象に、食事を含めたライフスタイル・環境要因をデータ解析することで、その人にとってシンプルでかつ最適な生活を導くことを支援するサービスです。

サービス上で問診に答えると、専門の担当者との電話による打ち合わせを踏まえてMymee利用者としての適応があると判断された場合には、様々な情報提供やアドバイスを行っていきます。結果として、患者の疲労感を大きく低下させるとともに、痛みを低下させ、身体的な効力感を増加させることに成功しています。もちろん、副作用はゼロ。

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個々の健康管理をを支援するサービスはほかにも様々ですが、同社のサービスはプログラムをスタートするまでの仕組みも素敵です。問診票も単なる症状の確認ではなく、「あなたがそれをどう思うか?」という部分にフォーカスしています。Mymeeチームの価値観が見える、素晴らしい仕掛けだなと。

Mymeeを利用した患者さんたちのパーソナルストーリーも同社Webにのっています。ぜひ読んでほしい。

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3. PhotoniCare:非侵襲の中耳診断デバイス

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企業名:PhotoniCare
URL:https://photoni.care/
設立年・所在地:2013年・イリノイ/シャンペーン
直近ラウンド:Grant/Seed(2019年8月)
調達金額:$5.1m~(National Institute of Deafness & Communications Disorders (NIDCD)など)

耳の診察を行うとき、これまでは鼓膜まで、つまり外耳しか診断ができませんでした。感染症状が発生しやすいのは、実は鼓膜の奥にある中耳という空間です。そのため、医師は限られた情報で診断を行うこととなり、抗生物質の投与など一般的な手法にとどまってしまうことも往々にしてあり、結果として症状の長期化や不要な手術につながってしまうこともある。子供の中耳で同じような問題が起きると、その影響はさらに深刻です。

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PhotoniCareは、鼓膜の奥にある中耳を非侵襲的に視覚化することができる(彼らいわく)世界初のデバイスです。

PhotoniCareのスコープは、高度な光ベースの技術を使用することで鼓膜の透視を可能にしました。中耳の状態は、高解像度の画像によって画面に映し出され、医師はそれをもとに診断を行うことができます。このデバイスはイリノイ大学との共同研究による成果として生み出されたもので、いくつもの臨床研究でその実効性が認められてきています。

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同社は耳のスコープ開発で構築してきたこのテクノロジーを、眼や皮膚、口の中など様々な領域に向けて展開していくことを目指しています。それが実現すれば、糖尿病性網膜症、緑内障、口腔がん、虫歯、歯の歯髄など、多くの疾患におけるスクリーニングが将来的に可能になるでしょう。今後の動向に注目...!!

4. SensioPro:大気中アレルゲンのリアルタイム計測デバイス

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企業名:Sensio Air
URL:https://www.wlab.io/
設立年・所在地:2016年・ロンドン
直近ラウンド:Series A(2017年1月)
調達金額:N/A(Cedar Mundi Ventures)

大気中に存在するアレルゲンは目には見えず、アレルギーを抱える人にとって、いま自分がどのような環境下にいるのかどうかを知ることはとても重要です。Sensio Proはそんな課題に答えるべく開発された、大気中のアレルゲンのリアルタイム計測デバイス。計測したデータはすぐにサーバーに送信され、ユーザーはスマホアプリでリアルタイム情報を取得すること可能です。

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検出するアレルゲンの幅は広く、花粉やダニ、カビなどの空中浮遊粒子をミクロン単位で検出してくれます。屋内・屋外を問わず、人間の対象物だけではなくペットのフケまで解析対象として加えています。

また個別のセンシング結果だけではなく、世界320都市の大気監視モニター結果が表示されます。旅行や出張前に、その地域の花粉やダニなどのアレルゲンの情報、スモッグ予測などが見れるのもなかんか良いかも。

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症状が出てきたときには、医療専門家からアドバイスを受けることもできます。花粉症、鼻水、頭痛、喘息症状などについて、ぱっとその原因と対処法を教えてもらうのはけっこう便利では。

5. Intelligent Observation:感染症リスク低減のための手指衛生追跡システム

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企業名:Intelligent Observation
URL:https://intelobserve.com/
設立年・所在地:2019年・マイアミ
直近ラウンド:Seed(2019年5月)
調達金額:$150k(Jumpstart Foundry)

アメリカでは衛生的ではない医療施設環境により年間に10万人以上が死亡し、300億ドルがコストとして失われているという推計があります。この問題に対する一つの対策は、医療従事者の手や指を常に衛生的に保つようなインセンティブや制度をつくること。Intelligent Observationはそれを可能にする手指衛生追跡システムです。

まず専用のスマートバッジを医療従事者の服に着用するよう義務付け、同時に専用のセンサーを部屋の入口や手洗い場に設置します。スマートバッジは着用者の位置情報を検知し、着用者が手洗い場に行き手指洗浄を行っているかを判断します。それらの情報は一つのクラウドに集約され日々の記録として蓄積されていき、管理者はどの人が手指洗浄をどの程度行っているかをモニタリングすることができます。このモニタリングを通じて、医療従事者も「手指を洗わなくては」という意識が高まることになります。

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「監視!」というと現場の抵抗も大きそうですが、年間10万人ですからね、、それを救うためと考えればやったほうがいい、ということですかね...治療者の衛生状態の悪さから起こる感染症は命と直接かかわる仕事をしている医療従事者にとって深刻な問題です。これくらい、強制力のあるデバイスも、意識を根本から変えていくという点ではいいのかもしれません。

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こんな感じで、第34回でした。
noteマガジンにもしてみたので、もしよかったらフォローしてください:-)


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