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神戸からのデジタルヘルスレポート #48 (創傷ケア)

『神戸からのデジタルヘルスレポート』は、神戸拠点のプロジェクト支援企業・Cobe Associeが提供する、海外のデジタルヘルススタートアップを紹介するマガジンシリーズです。

今回は第48回・創傷(そうしょう)ケア!簡単に言うと、体にできた様々な傷の治療やケアですね😎
デジタルヘルス感は薄めの各社を紹介してしまうんですが、未来を感じるスタートアップなので、ぜひ!

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1. Tissue Analytics:病院における創傷管理プラットフォーム

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企業名:Tissue Analytics, Inc.
URL:https://www.tissue-analytics.com/
設立年・所在地:2014年・アメリカ/ボルチモア
直近ラウンド:Series A(2018年1月)
調達金額:$7.7m(Intermountain Healthcare, DigiTx Partners など)

Tissue Analyticsは、傷の測定・記録・分析をすべて行うことができるプラットフォームです。一番の特徴としては、アップロードされた画像をベースに創傷の大きさ、深さ、組織組成などを自動で測定してくれること。しかも4%未満の誤差という高精度。↓のイメージ動画だと、3Dモデル化までなされています。

「あなたが医師だろうと看護師だろうと施設管理者だろうと、あなたのパフォーマンスを改善するぜ!」と自信満々。エラーを40%以上減らし、医療者が創傷の測定や評価に費やしていた時間を1日あたり最大2.5時間節約できると。

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創傷に関するデータは自動的に蓄積されていくため、スムーズな経過観察や治療方針決定につながりますね。時間が節約されたことで患者と接する時間も増えるためケアの質の向上にも貢献できそう。

創傷評価、従来は看護師がものさしを用いて測定するという方法も取られていたと。そのポイントとの差分でいうと、大きいですね。現在は米国内25以上の州で使用されており、今後もプロダクトを磨いていくよと。大期待。

2. Parable™:在宅での創傷管理プラットフォーム

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企業名:Parable Health, Inc.
URL:https://parablehealth.com/
設立年・所在地:2013年・ニューヨーク
直近ラウンド:Seed(2015年9月)
調達金額:N/A(Blueprint Health, Rough Draft Ventures など)

もう一つ、創傷の管理を行うプロダクトをご紹介します。

Parable Health, Inc.は、「Parable™」という入院時から退院後までフォローが可能な創傷管理プラットフォームを提供しています。入院時に使用するプラットフォームはTissue Analyticsと似ているため、ここでは退院後に使用する、フォローアップ系ソリューション・Ambulatory Follow-upをご紹介します。

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Parable™のアプリケーションは、退院後の創傷管理を遠隔で行うことを可能にします。

患者は自分の傷をスマートフォンで撮影し、アプリ上でいくつかの傷に関する質問に回答します。治療チームは送られてきた写真と質問に対する回答から創傷の経過を予測し、チャット上で診察を行います。傷に関して不安なことがあれば、チャット上で気軽に質問することもできます。

Parable™の患者満足度は96%。かなりの満足度ですね。入院時から一貫したプラットフォームで管理できるというのも大きな強みかなと思います。

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3. NEOX/Tissuetech:再生医療を用いた創傷治療

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企業名:Tissuetech, Inc.
URL:https://tissuetech.com/
設立年・所在地:2001年・アメリカ/マイアミ
直近ラウンド:Series C(2019年1月)
調達金額:$110m(Essex Woodlands Healthcare Partners, Ballast Point Venturesなど)

Tissuetech, Inc.は、人の臍帯および羊膜組織を利用した創傷治癒のための製品を提供しています。

人の胎盤組織、特に臍帯(胎児と母を結ぶ帯)と羊膜(胎児と羊水を包む膜)は生来の治癒特性を持っています。その特性を活用することで、創傷の炎症を管理しつつ細胞増殖を促進する、組織再生のために理想的な環境を作り出すことができるのでは、という仮説について、様々な研究がなされています。

Tissuetechは出産後の母親などから寄付された胎盤組織を治療用に加工し、生物学的および構造的特性を維持しながら凍結保存する方法を開発しました。その製品の一つがNEOXです。

凍結保存された組織は手術時に解凍され、患者の治療部位に移植されます。この移植は同種移植という形になるので本来は副作用や合併症のリスクがありますが、免疫反応のリスクを最小限に抑える処理がなされているために副作用や合併症の発症が少なく、治療成績も競合他社の製品と比べると優っているとのこと。

現在30万人を超える患者がTissueTech製品で治療を行い、製品の科学的および臨床的成果は300件を超える査読済み論文になっています。しっかりとエビデンス・論文を積み上げていく姿勢。

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医学の進歩はすごいですね。再生医療の可能性を大いに感じました。

4. TISSIUM:創傷治療のための低侵襲治療技術

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企業名:TISSIUM Inc.
URL:https://tissium.com/
設立年・所在地:2013年・フランス/パリ
直近ラウンド:Funding Round(2020年2月)
調達金額:€78.2m(IBD Ventures)

TISSIUMは、創傷を閉じるためのプロダクト、めっちゃ簡単にいうと、体に害のない接着剤のようなものを開発しています。

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手術中に内臓組織や血管から出血があったときに、TISSIUMを直接ふさぎたい部分に塗布することで、数秒で活性化し固まります。組織をふさぐための縫合の代わりになるということです。血液への適合性や体への吸収性が高いポリマー素材で作られており、本来の血管が修復されるにつれて体に吸収されて無くなるみたいです。すごい技術だ。

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この製品は2020年にCEマークを取得しました。また、組織への接着性が高いという利点を利用して、新たに慢性副鼻腔炎に対する治療法として開発が進められています。TISSIUMの中に治療薬を含有させ対象部位に塗布することで、長時間薬を治療部位に付着させようという狙い。こんな応用の仕方があるんですね、発想の力。

5. Medsix:予測分析システムを備えた創傷ドレーン

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企業名:Medsix
URL:https://www.med-six.com/
設立年・所在地:2019年・ボストン
直近ラウンド:N/A
調達金額:N/A

最後は、2019年に設立されたスタートアップを紹介。排液の検知・分析システムを搭載した創傷ドレーンを開発する、Medsixです。

ドレーンとは、外科手術後に術創部の情報を得るために留置される管のこと。ドレーンから出てくる排液の色や量を観察することで、術創部の回復具合や炎症の有無を確認します。感染のリスクも高いため、看護師によるモニタリングが必須となります。しかし、現在のドレーン留置には「排液の評価は人によって少しずつ誤差がありデータが不正確」という問題があります。

Medsixは、排液の量や色を自動で評価し、医療者にドレーン抜去の適切なタイミングや合併症の兆候を早期に報告してくれます。これにより、治療方針決定や入院期間減少、合併症リスク減少など様々なメリットを患者・医療者にもたらします。

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創業者であるNikin Tharan氏は、16歳でノースイースタン大学に入学し、22歳の若さでMedsixを創設しました。昨年にはBostInnoというボストンを拠点とした地域誌が選出する、25歳以下のイノベーター25名に選出され、今後の活躍が期待されています。9歳でインド防衛庁の最年少リサーチアシスタントだったの、、天才か。

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プロダクト自体はまだ開発段階ですが、完成すれば創傷ケアに大いに貢献するのではないかと思います。今後に注目!

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こんな感じで、第48回・創傷ケアでした。
過去分もたっぷり厚くなってきました。マガジンのほうもぜひ見てみてください:-)

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