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神戸からのデジタルヘルスレポート #46 (歯科領域)

『神戸からのデジタルヘルスレポート』は、神戸拠点のプロジェクト支援企業・Cobe Associeが提供する、海外のデジタルヘルススタートアップを紹介するマガジンシリーズです。

今回は第46回・歯科領域を取り上げます:-)

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1. Dental Intelligence:歯科特化EHR

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企業名:Dental Intelligence Inc.
URL:https://www.dentalintel.com/
設立年・所在地:2012年・ユタ/プレザントグローブ
直近ラウンド:SeriesA(2019年9月)
調達金額:$34.5m(K1 Investment Management)

Dental Intelligenceは、電子カルテに接続して診療記録を追跡・分析し、診療を効率的に行うためのインサイトを提供してくれるツール。患者管理・スケジューリングから生産性の算出まで、診療に関わる幅広い範囲をカバーしています。

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この製品でいいなと思ったのが、出勤時間までに昨日の診療に関するレポートを作成してくれること。昨日実施された診療に関するデータが整理・分析されているため、朝のミーティングで明確な議論を行うことができます。

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また、診察に来ていない患者がいれば、その患者とコミュニケーションをとるように自動でお知らせシてくれるので、患者のドロップアウトを防ぐことができます。電話を掛けた相手の患者情報が自動で画面に表示されるため、わざわざ情報を探し出して電話をかけるという手間が省けます。すごい。患者管理がすべて自動化していますね。

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歯科医が診察による利益を増やしていくためには、新しい患者数を増やすことに加え1つ1つの診療の生産性を上げることが重要。そのためには、歯科医が雑務に縛られることなく患者と向き合う時間を増やしていこうという考えのようです。4,000を超える導入数も納得、"World's No.1!!"と謳うのもなるほどの充実度です。

2. Pearl:歯科領域の診断支援AI

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企業名:Pearl, Inc
URL:https://hellopearl.com/
設立年・所在地:2019年・カルフォルニア/ウェストハリウッド
直近ラウンド:Series A(2019年5月)
調達金額:$11m(Irving Investors, Craft Ventures)

Pearlは、AIにより歯の問題を検知し、歯科医師の診断・治療を支援する技術を開発しています。X線検査の画像から歯科医でも見逃してしまう歯の異常を見つけだすぞ、と。

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このサービスの一番の特徴は、数十の典型的な病理を瞬時に特定することができる精度です。既存の治療跡も見逃すことはありません。さらに、銀歯などの歯の修復物を正確に作成するのにも役に立ちます。画像データから正確に歯の形状をスキャンできるため、作った型が合わず何度も作り直すということは起きません。

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創業チームの一員であるOphirとCambronは、ロサンゼルスに拠点をおくスタートアップ・GumGumの出身です。創業の3年前から歯科のX線データを収集し、プログラムの開発に取り組んできた様子。2019年4月の創業なのでまだ会社化してから1年ちょっとですが、すぐに1,100万ドルの資金調達に成功しています。

この会社のWeb、いままで見てきたヘルスケア領域のスタートアップのなかでも圧倒的にファーストビューが素敵。Chief Clinical Officerが”Smile Designer”を名乗っているのも好感もてる...いいな~、こういう会社。

3. HENRY The Dentist:労働者向けオンサイト歯科診療サービス

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企業名:HENRY THE DENTIST, INC.
URL:https://henrythedentist.com/
設立年・所在地:2017年・ニュージャージー/ニュープロビデンス
直近ラウンド:SeriesA(2019年4月)
調達金額:$10m(Uncommon Denominator, Trail Mix Ventures)

アメリカ疾病予防管理センターの発表では、労働者の36%が1年以上歯科医を受診していないとされています。歯医者さん、後回しになりがちですよね、たしかに。。そんな問題を解決しようとオンサイトの歯科診療サービスを提供しているのがHENRY The Dentistです。なんと、歯科治療のためのバスで企業に出向いてくれます。

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治療は、歯科検診、歯のクリーニング、歯のホワイトニングが可能とのこと。さらに専門的な治療が必要な場合は、通院に便利な病院まで紹介してくれます。企業にとっても従業員の生産性を下げることなく健康を保つことができるし、すごくありがたいサービス。

2017年の立ち上げ以来、Merck、vonage、BMWなどの主要企業を含む70社以上の顧客と契約しています。労働者の口腔問題は結構生産性に直結するし、これからも利用する企業増えそう。

4. Dental Monitoring:スマホを使った歯科矯正リモート診察

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企業名:Dental Monitoring Co.
URL:https://dental-monitoring.com/
設立年・所在地:2013年・フランス/パリ
直近ラウンド:Private Equity Round(2019年3月)
調達金額:€50m(Vitruvian Partners, Naxicap Partners)

オンサイトの次はオンラインを。Dental Monitoringは、スマホで撮影した口腔内の写真から3Dデータを作成することによって矯正治療の経過観察をリモートで行うことを可能にします。下のようなイメージ。

主治医は3Dデータから正確な歯の動きや咬合の変化を割り出し、治療の経過に異常がないかを確認します。診察結果や今後の指示は歯科医師からチャット形式で送られてきます。わざわざ経過観察のために受診する必要がなくなります。これは便利。

「最初の口腔内撮影は歯医者さん行かないといけないのかな?」と思っていましたが、いい感じに初期問診部分の課題を解決する製品も開発されていました。ScanBoxという製品で、これがあれば自宅でもきれいに口腔内画像を撮影することができます。行き届いているなー。

特許もしっかり押さえているようで、外部連携にも積極的。ますます伸びていきそうなスタートアップだと感じました。

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5. Oral3D:口腔内の構造を再現できる3Dプリンター

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企業名:Oral3D S.R.L
URL:https://www.oral3d.eu/en/
設立年・所在地:2019年・イタリア/ローマ
直近ラウンド:N/A
調達金額:N/A

Oral3Dは、口腔内の構造を再現することができる3Dプリンターを開発しています。作成されたモデルは、主に患者への治療計画の説明に用いられる他、歯科医が治療のトレーニングをする際の練習台としても使用されます。85%のケースで患者さんとのコミュニケーションが改善したとのこと。

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歯科医院内にOral3Dのプリンターを置くことも可能ですし、プリントショップに外注することも可能。0.15mm単位で射出されたモデルを1つ€150で製作し、3日で出荷すると。1週間後に次の面談をするようなスケジュール感であれば、なんとか間に合いそう。

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値段は、€4,490/初期+€500€/yearとなかなかのお値段ですが、一台あればかなりの効果が見込めるのではないかと思います。トレーニングもできることを思えば、結構良い投資なのではという気がします。イタリアにもこんなスタートアップがあるんですね。

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こんな感じで、第46回・歯科領域のスタートアップ紹介でした。
過去分もたっぷり厚くなってきました、ぜひマガジンのほうもぜひ見てみてください:-)


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