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神戸からのデジタルヘルスレポート #29 (Littleone/ai4medicine/S-There/Babyscripts/Computational Life)

『神戸からのデジタルヘルスレポート』は、神戸拠点のプロジェクト支援企業・Cobe Associeが提供する、海外のデジタルヘルススタートアップを紹介するマガジンシリーズです。

今回は第29回です!
元気にデジタルヘルススタートアップを紹介していきます:-)

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1. Smart Series:親の負担を軽減する育児補助プラットフォーム

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企業名:Littleone Inc.
URL:https://www.littleone.kr/
設立年・所在地:2017年・韓国/光州広域市
直近ラウンド:Seed(2017年6月)
調達金額:N/A

初めて韓国スタートアップを取り上げます!

Littleone Incがフォーカスしているテーマは、育児における親の負担。Smart Seriesというブランド・シリーズで、Smart Bottle(IoT哺乳瓶), Smart-PeePee(おむつ監視デバイス), Smart Temp(赤ちゃんウェアラブル)の3つ商品を展開しています。まずはその紹介動画を見てましょう。Youtubeに飛びます。

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おむつの状況(湿度など)をリアルタイム監視するSmart-PeePeeや、赤ちゃんの体温を継続監視するSmart Tempなどはよくありそうなプロダクトですが、IoT哺乳瓶のSmart Bottleはちょっと興味深いなと思いました。元々はクラウドファンディングサイトのKicksterterで2018年11月に始められたプロジェクトから始まっており、無事に目標金額を達成しています。

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このプロダクト、哺乳瓶の底部についているセンサーを通じて、以下のような機能を提供してくれます。

●自動保温:電源に繋げると常時最適な温度になるようミルクを保温
●火傷防止:ミルクの温度が高過ぎる場合に振動で危険を通知
●授乳姿勢矯正:授乳姿勢が不適切な場合に振動で通知
●データマネジメント:リアルタイムで授乳時間、回数など詳しくデータを記録
●授乳アラーム:授乳記録を作成し次回の授乳時間前にアラート

これはよさげ。。知り合いの赤ちゃん世帯にプレゼントしていきたい。。
共働きで忙しい親でも安全に、そして負担の少ない育児が出来るようサポートする製品を次々と生み出す、そんなスタートアップが韓国にありました。

2. ai4medicine:脳卒中予防・治療AI

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企業名:AI4medicine
URL:https://www.ai4medicine.com/
設立年・所在地:2018年・ドイツ/ベルリン
直近ラウンド:Seed(2018年1月)
調達金額:N/A

脳卒中は、世界全体での死亡・障害の原因として2番目に多いとされています。生活習慣の乱れの蓄積が脳卒中の主な原因の一つと言われており、その防止には生活習慣への介入が不可欠とされています。

ai4medicineは脳卒中防止・生活習慣の改善というテーマに(その名の通り)AIを活用しつつ取り組んでいるスタートアップ。ユーザーがスマホにある健康データ(Apple Healthなど)と自身の行動や活動情報(運動や睡眠など)を入力することで、AIが将来の脳卒中リスクを算出してくれます。

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このスタートアップ、チームが強い。臨床経験豊富な脳神経外科医、機械学習エンジニア、さらに脳卒中分野に強いMD・研究者で構成されています。 AIを使ってなにかできないか、というときに、必ず必要となるのがその領域での深く広いドメイン知識。このチーム構成はめちゃいいなーと思いました。

3. S-There:トイレ設置型の尿分析デバイス

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企業名:S-There
URL:https://s-there.com/
設立年・所在地:2017年・スペイン/ビルバオ
直近ラウンド:Seed(2018年12月)
調達金額:N/A

日本でもサイマックスさんが取り組んでいるトイレを起点にした健康状態分析。スペインにも同様の取り組みをすすめるスタートアップがありました。

S-Thereは、トイレの便器の中に設置し、尿の成分や排尿回数を分析するためのデバイスを開発しています。そこから得られた情報は同社アプリに自動的に送信され、自分の健康状態が継続的に追跡できるようになっています。

私たちは、普段何気なく尿を排泄していますが、尿にはたくさんの情報がつまっています。尿は、腎臓で生成されますが、腎臓では簡単にいうと、尿を生成する過程でいらないもの(排泄していい物質)といるもの(体の中に再吸収したほうがよい物質)の仕分けを行っています。つまり、尿中に本来ないものがある、または本来の量よりも多いということは、体のどこかに異常がある可能性がある、と判断できます。

このデバイスでは、尿の物質から、糖尿病や尿路感染症の可能性がないかどうか、血液やタンパク質、水分の量はどうかなどを分析しています。また、排尿回数や感覚から排尿機能の分析もしてくれます。

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わざわざ病院で検尿をしなくても自宅や施設で気軽に、ということができれば、ユーザーにとってこんなに嬉しいことはありません。
複数人が利用する場所でのユーザーの判定やコンタミによる精度懸念などはありますが、ユーザーの自然な体験の中に溶け込ませていくことでヘルスケアをもっと自然に、という取り組みはとても素敵だと感じました。

4. Babyscripts:産婦人科医のアクション支援プラットフォーム

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企業名:Babyscripts
URL:https://getbabyscripts.com/
設立年・所在地:2013年・ワシントンDC
直近ラウンド:Corporate round(2019年3月)
調達金額:$16.3m(Inova Health System、Koninklijke Philipsなど)

Babyscriptsは、患者と産婦人科医を遠隔モニタリングツールでつなぎ、そのデータをもとにしながら医療者が行う「どの患者に対してなにを行うべきか」の意思決定を支援するプラットフォームです。1分間の紹介動画あるのでまずはそちらをどうぞ。わかりやすい。

このサービスを利用している産婦人科医のところにかかると、その女性には下にあるようなキット一式が渡されます。これらのキットを用いて得られた数値・データは全てプラットフォーム上に集約され、産婦人科医が介入するかどうかを判断するための材料となります。

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医療者はこのデータを通じて施設としてのアポイントメントの最適化や遠隔での妊娠糖尿病の管理、さらには多職種でのアドヒアランス向上にも取り組むことができます。あるべきデータの使い方や。

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患者さんからの声も上々で、「安心感に繋がった」「時間の節約になる」「力が湧いてくる」などのコメントが寄せられています。だてに$16m以上調達していないな、この会社...さすがのユーザーからの評価。心も体も不安定になりやすい妊娠期において、このプラットフォームは患者の妊娠状況だけでなく心理面もケアにも相当役立っているんだと感じます。

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同社は、エンジニア、デザイナー、マーケティング担当者、医師、科学者と様々な職種で構成されていますが、全員Babyscriptsのユーザーとしても関わっています。再考のドッグフーディング。全員がユーザー視点を持ち、妊娠ケアの現状改善への情熱をもって働いているBabyscripts、素敵や。

5. Computational Life:医療機器開発プロセスを圧縮するデジタル人体アバター

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企業名:Computational Life
URL:https://www.computationallifetest2.netsons.org/
設立年・所在地:2018年・イタリア/ボルザノ
直近ラウンド:Seed(2019年11月)
調達金額:$334k(Startupbootcampなど)

今回取り上げる最後の会社はイタリア発のスタートアップ、Coputational Life。この会社の扱っているテーマは、デジタルアバター。その活用先は医療機器開発。最初「はて?」と思いましたが、よくよく調べたり考えたりすると「めっちゃいいやんこれ...」となりました。

医療機器を開発していく過程で、その機器で正しく検査/診断などができるのかどうか、企画や設計、実験、臨床研究から治験まで、たくさんのプロセス・時間をかけて検証することが必要になります。Computational Lifeは人体をデジタル化したデジタルアバターとして提供し、そのアバターを用いて医療機器設計や性能評価を実施することで、この開発プロセス・時間を圧縮することを支援しています。

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同社によると、実際のComputational Lifeを用いて行われた機器開発において、期間/時間として70%、開発コストを50%それぞれ削減し、動物試験そのものについても大幅に減少させることに成功したと。これはすごい...

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このデジタルアバターはとても精巧にできていて、単純な人体構造だけでなく、動脈および静脈系、心臓、微小循環、脳脊髄液といった流動的な構造に至るまで再現されているということ。すごい。さらに、心臓補助装置(大動脈内バルーン、経皮的心室補助装置、ペースメーカー)が装着されている状態のシュミレーションも可能ということ。どこまで想定されているんだ、このアバター...

現在は、循環器系と脳機能のみの対応ですが今後は、肺機能や腎機能などのシュミレーションもできるよう目指していくそうです。どこまでいくんだろう。こうプラットフォームがあれば、医療機器の開発プロセスが圧縮され、より早期に質の高い医療機器が市場に出ていくことになります。誰も損しない、みんなにとって価値あるサービス...素敵。

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こんな感じで、第29回でした。
noteマガジンにもしてみたので、もしよかったらフォローしてください:-)


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