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神戸からのデジタルヘルスレポート #28 (Mediconecta/NarrativeDx/Wellth/FocusMotion/Aiva)

『神戸からのデジタルヘルスレポート』は、神戸拠点のプロジェクト支援企業・Cobe Associeが提供する、海外のデジタルヘルススタートアップを紹介するマガジンシリーズです。

今回は第28回です!
元気にデジタルヘルススタートアップを紹介していきます:-)

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1. MediConecta:中米初の遠隔診療キオスク

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企業名:Virtua Consult Health Inc
URL:http://www.mediconecta.com/
設立年・所在地:2011年・ベネズエラ
直近ラウンド:Angel Round(2016年9月)
調達金額:$4.2m(Start-up Chileなど)

今回最初にご紹介するのは、ベネズエラのスタートアップです!

MediConectaは、チャット・テレビ電話を通じていつでも予約なしに医師に健康相談が出来るアプリが最初のプロダクトでした。しかし同社はプロダクトをさらに発展させ、「遠隔診療キオスク」を提供するまでに成長しています。こんなキオスク!

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同社の紹介動画(全部スペイン語)の中でこのキオスクの使い方が紹介されています。体調不良を感じたらさっとこのキオスクに立ち寄り、埋め込まれた電話会議システムで医師と会話しつつ、付属の体温計で体温を測り共有する。発疹とかを撮影するカメラもあるのかな...

カバーしている疾患も広そうに見えます。Tos(せき)やResfriado y gripe(風邪・インフルエンザ)、Hinchazón(腫れ)なんかも見てくれると。

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このサービスは診断・セカンドオピニオンや処方箋の取得などのために実際に用いられており、担当する医師も同社内の審査を通過した人たちのみでビデオ通話を通じて適切な判断・診断をできるように訓練がなされています。

実際に、97%のユーザーがこのアプリケーションのサービスに満足しているとのこと。↑の動画を見るに、病院で長いこと待たされるという課題はベネズエラでもあるようで。中南米のプライマリケアの姿・かたちを大きく変える企業になるかもしれません。

2. NarrativeDx:病院経営最適化プラットフォーム

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企業名:NarrativeDX
URL:https://www.narrativedx.com/
設立年・所在地:2014年・テキサス/オースティン
直近ラウンド:Corporate Round(2019年2月)
調達金額:$6.6m(HealthX Ventures, Cultivation Capital, Texas Medical Centerなど)

病院やクリニックの中で、患者がどんな体験をしているのか。
医療者はそのプロセスのポイントポイントでは関わっていますが、全体としてどんな体験をし、何を感じているのかは意外とわからないものです。

NarrativeDxは、患者さんへのアンケートで得られた回答・テキストをAIによって処理・解析し、医療者にその内容と改善施策をフィードバックしてくれるプラットフォームです。このようなサービスを通じて、医療者と患者の関係性を表すCAHPSスコアを改善し患者満足度を改善させる、さらに病院評価の向上や職員の離職防止などにつなげ、病院・クリニックの経営そのものを助けることを目指しています。

CAHPSは、Consumer Assessment of Healthcare Providers and Systemsの略称で、医療に関する患者や消費者体験を数値化するためのツールです。かんたんな紹介動画が↓。

実際に同製品を導入した病院では「データサイエンティストを雇ったようなものだ」と称賛の声を上げています。患者の体験コメントの中から、必要な情報をくみ取り、そこから得られた洞察を優先順位をつけてフィードバックしてくれるため、行動計画が立てやすく、すぐに行動に移すことが出来ます。同様の仕組みを導入した企業もあり、従業員の体験を適切に経営者にフィードバックし、生産性を向上、離職率の低下、職場の安全性の向上に一役をかっているようです。

若年人材が希少資源となる先進国を中心に、職場環境の重要性が高まっています。病院・クリニックはもちろん、様々な分野に応用できそうなプラットフォームですね。

3. Wellth:行動経済学ベースの慢性疾患管理アプリ

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企業名:Wellth
URL:https://www.wellthapp.com/
設立年・所在地:2014年・ロサンゼルス
直近ラウンド:Series A(2018年9月)
調達金額:$7.6m(AXA Venture Partners、Boehringer Ingelheim Venture Fundなど

Wellthは、行動経済学を用いて、慢性疾患を抱える人の行動、アドヒアランスを改善する疾患管理アプリケーションです。対象としているのは2型糖尿病やCOPD、心不全などの様々ですが、特に2型糖尿病が事業の中心にあるとのこと。

同社の理念はいたってシンプル、「慢性疾患患者の健康リスクを防止するために行動変容による健康改善を支援する」です。症状の悪化を防ぎ、行動レベルでの改善を促すため、将来に渡っての医療費削減につながると考えており、Wellthを用い他ユーザーのうち89%の人がケアプランを遵守し、再入院を45%削減、平均してHbA1cを1.3削減するという結果が出ています。

2型糖尿病になる要因は様々ありますが、多くの人に健康意識の低さによる生活習慣の乱れの蓄積が見られると言われています。深く身体に根付いてしまった生活習慣を変えることは難しく、服薬治療のアドヒアランスは必ずしも高いとは言えない状況が続いています。糖尿病の治療に「患者指導」が組み込まれているのはそういった理由からでしょう。

患者が治療を続けていくために必要なのは、シンプルであること、わかりやすいこと、できるないようであることが必要です。このアプリは、人間の動機付けと習慣形成の科学から、ユーザーにあったインセンティブなプランを提供し、より良い疾病管理を促進するリマインダーと情報を提供してくれます。すごい。

4. FocusMotion:膝関節術後回復サポートプラットフォーム

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企業名:FocusMotion
URL:https://focusmotion.io/
設立年・所在地:2012年・ロサンゼルス
直近ラウンド:Seed(2019年9月)
調達金額:$270k(Global Support Venture Studio、Scrum Venturesなど

今度は外科手術周りの支援をするスタートアップを。
FocusMotionは、膝関節の術前・術後の支援を行うAIプロダクトを提供しています。術前の問診からプレリハビリ、手術から術後のリハビリまで、そのカバーする範囲は広いです。

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まず術創部の手術方法などが決定し次第、術創部周辺の正確な動きをデータ化するためのセンサー装具、及び術前のリハビリアプリが提供されます。上記の器具で収集した情報は、担当医師のダッシュボードに自動的に記録され、術前リハビリの計画のフォローアップもダッシュボード上で行われます。手術中にも、術前に得られた情報を踏まえた最適な手術方法に関するリコメンドがなさるとのこと。すごいな。

そしてクライマックスは術後のリハビリ。患者に提供されたアプリ上で回復計画が提供され、担当医とケアチームが必要に応じて患者の回復状況に沿って介入できるようにします。術前から提供されている装具が、リハビリ中のトレーニングのテンポや術創部の可動性(柔軟性)、関節可動域を自動的に測定し、担当医のダッシュボードに記録します。また、治療のアウトカムとなる痛みやKOOS(膝関節損傷と変形性関節症の回復状態を示す主観型の質問紙)、鎮痛薬の使用、活動量などの患者主観型のデータも収集し、自動的に記録します。

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さらに、同製品は、これまでに蓄積された患者の回復記録から、データを解析および分析し、患者、回復方法、介入、および結果の間の多次元相関を引き出し、データを新しい患者に適用し、相対的なコホートに見られる最適な回復に基づいてケアを自動的に調整します。AI、機械学習は当たり前の時代、というのを痛感...!!

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同社に投資している企業を見ると、医療を見ているVCだけではなく、スポーツ系のファンドも名を連ねています。確かに、膝の手術が多そうですし、リハビリを通じたパフォーマンスの早期改善・復帰がキーですし、なるほどという感じ。

日本の木業にも馴染みの深い西海岸のVC、Scrum Venturesさんも投資しているチームでした。成功を期待!

5. Aiva:音声アシスタントで医療職負担を軽減

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企業名:Aiva Health
URL:https://aivahealth.com/
設立年・所在地:2016年・ロサンゼルス
直近ラウンド:Venture series unknown(2018年9月)
調達金額:$100k(Amazon Alex Fund, Google)

最後に一社、はやりの音声UI系を。これまで見てきたのは高齢者などを直接支援するサービスが多かったですが、今回紹介するAivaは医療者に対して支援をする音声アシスタントです。

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Aivaは、Amazon Echos、Google Homeなどの音声アシスタントサービスを介して、医師や医療職者の負担を軽減し、患者の満足度を向上させることを目指しています。既に米国の病院で導入が進んでおり、 ロサンゼルスの非営利病院グループとして有名なシダーズ・サイナイ医療センター(Cedars-Sinai Medical Center)の担当者は以下のようなコメントを寄せています。

現在、Aivaを100以上の病室に配置するプログラムの試験運用を行っています。そこでは、患者がAlexaを使用してTVチャンネルの変更などの身の回りのタスクを実行できるようにすることで看護師が医療に専念できるようにしています。
また、患者が必要なものをAlexaに伝えた後、Aivaは適切にその依頼を処理します。例えば誰かが薬を必要とする場合、その要求は登録された看護師に送られます。

つまりAivaは、病室にいる患者さん一人ひとりのパーソナルアシスタントとして、必要な時に必要な人や物を自動的に検出しつなげる役割を担っています。いまは個別の看護師や医師が担っているそのような業務を音声アシスタントで代替することで、医療者の無駄な時間を削減しながらもより質の高いケアにつなげることが出来ます。その効果は、間接的に患者へのよりよいケアにもつながるため、患者や医療職者どちらもとっても心強いものだといえます。

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なにより、UIがかわいい感じになっているのがいいなと思いました。これならぜひ使いたいと思わせるUI、医療の分野では少ないので、素敵やなぁと。

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こんな感じで、第28回でした。
noteマガジンにもしてみたので、もしよかったらフォローしてください:-)

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