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神戸からのデジタルヘルスレポート #60 (検査・スクリーニング)

『神戸からのデジタルヘルスレポート』は、神戸拠点のプロジェクト支援企業・Cobe Associeが提供する、海外のデジタルヘルススタートアップを紹介するマガジンシリーズです。

今回は第60回、医療者の診断支援系のソリューションを取り上げます:-)

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1. DermaSensor:皮膚がん検出デバイス

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企業名:DermaSensor Inc.
URL:https://dermasensor.com/
設立年・所在地:2009年・マイアミ/アメリカ
直近ラウンド:Series A(2020年6月)
調達金額:$14.6m(N/A)

DermaSensorは、デバイスの先端から光を照射しその反射や散乱の程度を解析することで、非侵襲で皮膚がんを検出するデバイスです。わずか30秒で病変の評価を行い、“Higher Risk”“Lower Risk”いずれかで、医師にリスクの度合いをフィードバックしてくれます。

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米国では5人に1人が生涯1度は皮膚がんであるとの診断を受けるとのことで、年間の罹患数は550万人、治療市場は81億ドルにのぼるとのこと。また、その診断にあたるプライマリケア医師の負担もなかなかのもののようで。

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Each year ~5,500,000 skin cancers are diagnosed in America making skin cancer more common than all other cancers combined. Unfortunately, only 15% of Americans report having ever been screened for skin cancer and, even with that low rate, the average wait time for a dermatologist is still 32.3 days.

問題となるその精度。メラノーマ(悪性黒色腫)の検出では100%、非黒色腫の皮膚がんの検出では感度94%を達成しています( Rodriguez‐Diaz, Eladio & Manolakos, Danielle & Christman, Holly & Bonning, Michael & Geisse, John & A'Amar, Ousama & Leffell, David & Bigio, Irving. (2019). Optical Spectroscopy as a Method for Skin Cancer Risk Assessment. Photochemistry and Photobiology)。正確度、特異度はどうなんだろうか。

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形もかなりコンパクトで、机に置いていても違和感のない設計になっています。ワイヤレス充電が可能で、持ち運ぶことも可能です。訪問診療にも対応できそうですね。

現在、製品開発は最終段階に入っており、FDA承認に向けた準備が進められています。2020年夏以降で、米国以外で試験運用が開始される予定。楽しみ。

2. Gregor Diagnostics:前立腺がんのスクリーニングテスト

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企業名:Gregor Diagnostics, Inc.
URL:http://www.gregordiagnostics.com/
設立年・所在地:2016年・マディソン/アメリカ
直近ラウンド:Seed(2019年10月)
調達金額:$1.8m(First Round Capital, Green Park & Golf Ventures)

前立腺がんは、米国人男性において2番目に罹患率が高いがんで、年間約3万人がなくなっています。従来からあるスクリーニング方法である血液PSA検査(血液中に存在する前立腺特異抗原の量を測定する検査)は欠点も多く、より簡便で精度の高いテスト手法の開発が必要とされてきました。

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Gregor Diagnosticsは、精液から前立腺がんのスクリーニングを行うテストを開発してます。前立腺は精液全体の約30%を分泌するため、前立腺癌のバイオマーカーとして精液を解析することで、非侵襲ながら直接的に前立腺の状態を確認することが出来ます。

同量の血液と精液を比較すると、バイオマーカーの量は25万倍も異なっており、当然精度に差が出ますよね、というのが同社の主張。現在は開発中で2~3年以内の市場投入を目指しています。自宅でのスクリーニングを可能にするシステムを開発中とのことで、精度だけではなく、検査がより簡易になるのはすばらしいことですね。

3. bios:汗による血糖値測定ウェアラブル

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企業名:GraphWear Technologies Inc.
URL:http://www.graphwear.co/
設立年・所在地:2015年・サンフランシスコ/アメリカ
直近ラウンド:Series A(2018年4月)
調達金額:$4.7m(Mission Bay Capital, Mission BioCapital)

GraphWearが開発しているbiosは、汗から血糖値を測定する糖尿病管理のためのウェアラブルデバイスで、採血をすることなく、非侵襲で継続的に血糖値を測定することができます。仕組みとしては、汗を通して血液から皮膚の表面に少量拡散した生体分子から血糖等各種データを検出するそうで。

ちょっと古いですが、Plug and Play Winter Summit 2016同社CEOのRajatesh Gudibandeがピッチしている映像がありました。昨年2019年にも、Texas Medical Centerでもピッチをしているみたい。

Patentも着実に出してきてますね。

https://scholar.google.com/citations?user=XXZUpfgAAAAJ&hl=ja

現在GraphWearははこの技術を生かして、NFLやNBAのチームを顧客にするなどアスリート市場にも参入しています。選手の服に独自開発したチップを装着し、汗から選手の身体状況を追跡するシステムを開発しました。2018年には、NFL選手を対象としてテストが実施されています。

侵襲性をいかに下げるか、本当に大きなテーマ。わたしも採血苦手なので、ぜひ技術の進化に期待するばかり。。

4. Boston MicroFluidics:在宅できる血液検査キット

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企業名:Boston MicroFluidics, Inc.
URL:https://www.bostonmicrofluidics.com/
設立年・所在地:2005年・ボストン/アメリカ
直近ラウンド:Series A(2019年8月)
調達金額:$18.2m(LabCorp, Anzu Partners)

Boston MicroFluidicsは、在宅・自宅で利用可能な血液検査キットを提供しています。この製品は、一般検査での活用と、研究目的での活用とそれぞれを企図して設計されており、「誰でも高品質のサンプルを収集できるように」が基本コンセプト。また、採取する血液も通常の5%以下に抑えられているので、侵襲も少なくいい感じです。

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検査キットの種類はいまのところ5つ。糖尿病や心臓病のリスクを判定するキットや大腸がんの検査キット、さらにはCOVID-19感染の検査キットも提供しています。値段は$40~120くらいで、結構リーズナブルな印象。

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現在は、ニューヨーク、ニュージャージー、ロードアイランド、メリーランドを除く米国地域への配送が可能。研究用途でも、というのがこのソーシャルディスタンス期においては意外と価値になりそうな予感。

5. PreTRM Test:早産リスクのスクリーニングテスト

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企業名:Sera Prognostics, Inc.
URL:https://www.seraprognostics.com/
設立年・所在地:2008年・ソルトレイクシティ/アメリカ
直近ラウンド:Series D(2019年11月)
調達金額:$150.3m(Blue Ox Healthcare Partners, Catalyst Health Ventures)

Sera Prognosticsは、早産やその他の妊娠合併症を予測する独自のバイオマーカーを使用した血液検査・PreTRM Testを提供しています。出生前に血液検査を行うことで、早産やその他の合併症のリスクが高い妊婦をスクリーニングし特定することで、早期介入・対応をすることができます。

2020年現在では、出生前の血液検査から早産の予測だけでなく、新生児の入院期間の延長および重度な障害をもつ新生児の転帰を予測することも可能になっています。↓にガイドがありますが、10年以上運営されるサービスらしい、ある種の文字文字感が...

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この検査は、年齢・人種・民族関係なく予測できることが証明されている、とのこと。誰にでも検査が可能というのはすごい。サービスの提供対象を全世界に広げることできちゃうやん。パワー。

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こんな感じで、第60回でした。
過去分もたっぷり厚くなってきました。マガジンのほうもぜひ見てみてください:-)



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