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神戸からのデジタルヘルスレポート #52 (臨床研究)

『神戸からのデジタルヘルスレポート』は、神戸拠点のプロジェクト支援企業・Cobe Associeが提供する、海外のデジタルヘルススタートアップを紹介するマガジンシリーズです。

今回は第52回、『研究』をテーマに取り上げます!元気にデジタルヘルススタートアップを紹介していきます:-)

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1. DNAsimple:研究者と研究参加者をつなぐマッチングプラットフォーム

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企業名:DNA Simple
URL:https://www.dnasimple.org/newhome
設立年・所在地:2015年・フィラデルフィア/アメリカ
直近ラウンド:Seed(2016年3月)
調達金額:N/A

DNAsimpleは、研究者と研究に参加したい人をマッチングするプラットフォームです。研究者はこのプラットフォームに自分の研究の対象となる条件を登録するだけ、あとはサービス側で自動的に抽出してくれます。

研究参加者は登録した情報から自分に合う研究が自動的に抽出されるので、その研究の参加に同意し、送られてきた専用キットで唾液を採取し送るだけです。

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研究者は既存の収集方法よりもはるかに短時間でサンプルを入手できます。参加者も研究参加につき50ドルの報酬が得られるので、参加者のインセンティブも明確ですね。

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創業者であるOlivier Noelは地方都市で遺伝子研究を行っていましたが、地理的特性から多数の患者サンプルにアクセスすることが困難であることに課題感を持っていました。そこで、「研究参加者が研究の要件に適合している限り場所に関係なく研究にマッチングできるデータベースを構築しよう」と考え、それを現実にさせたのがDNA Simple。

2017年には、テレビ番組Shark Tankでプレゼンを行い、投資家Mark Cubanから20万ドルの投資を受けました。そこからなんと登録者が500%も増加したそうです。2つの目的を同時に実現させる手法...現在も登録者数も順調に増えているようです。研究機関全体で採用!のような未来が見える。

2. Interestingsamples:臨床試験のサンプル回収を効率化するプラットフォーム

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企業名:Interestingsamples s.r.o.
URL:https://interestingsamples.com/
設立年・所在地:2019年・ドゥナイスカー/スロバキア
直近ラウンド:N/A
調達金額:N/A

Interestingsamplesは、臨床試験におけるサンプル収集を効率化するプラットフォームです。DNA Simpleと同じように、研究者と研究参加者の諸々の負担を下げるサービスで、オンラインフル活用で研究の説明や参加者管理、サンプル配送などをまるっと行うことができます。

参加者は送られてきた資料やキットを用いて自宅でサンプルを収集し送り返すだけ。研究結果と報酬が後日参加者には提供されます。このあたりもDNA Simpleと同様、いいUXですね。

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はじめて触れました、スロバキアのスタートアップ!

3. Lumedi:臨床研究オールインワンソリューション

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企業名:Lumedi Inc.
URL:https://lumedi.org/
設立年・所在地:2019年・ハミルトン/カナダ
直近ラウンド:Seed(2019年11月)
調達金額:CA$200k(不明)

臨床研究を行うには、そもそもの研究デザイン策定・計画から、その後のデータ収集・データ解析に至るまで、複雑でかつたくさんの過程を経ていく必要があります。Lumediはこの全行程をスムーズにすすめていくことを支援してくれる統合ソリューション。動画がシンプルで良い感じ。

縦断研究のような、長期間被験者を追跡する必要がある場合はLumediが特に力を発揮します。質問紙作成、データ取り込み・管理・分析が容易に行えるようになるので、業務が忙しい臨床医でも縦断研究を実施することができます。共同研究者にもデータや解析結果の共有が簡単になるので、研究をよりスムーズに進めることができます。

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値段は、管理するデータ一人あたり$1/m。500人以上だとさらに半額に。大規模な集団を長期的に追跡する際には負担も一気に増えるので、リーズナブル感ありますね。見積もりもWeb上でさっと取れます。

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さらに、Lumedi Inc.はコロナウイルスの影響を受けて、「COVID-19 Community Watch」というアプリを開発しました。ユーザーにコロナウイルスに関する質問を回答してもらい、一般人口におけるコロナウイルスの動向を追跡していくというもの。オンタリオ州のいくつかの医療チームは、このアプリケーションを使用して地域のCOVID-19情報を収集することを計画しているみたいです。すごいスピード感。

4. TriNetX:電子カルテデータを用いた臨床試験支援

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企業名:TriNetX, Inc.
URL:https://www.trinetx.com/
設立年・所在地:2013年・ケンブリッジ/アメリカ
直近ラウンド:Series D(2019年3月)
調達金額:$42.5m(Mitsui & Co, Merck Global Health Innovation Fund)

三井物産が出資しているスタートアップがこんなところにも。

TriNetXは、様々な国のリアルワールドデータ(電子カルテなどの実社会のデータ)を統合・提供し、臨床試験の実施を支援するプラットフォームです。自社の薬の実効果を測定する目的などで、製薬会社が利用していることが多いようです。

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このプラットフォームの最大の特徴は、様々な病院や組織をつなぐTriNetXネットワークが形成されていること。このネットワークには、25カ国・400万人以上の患者さんのデータが含まれています。そのため大規模なデータセットを利用することができるので、臨床および観察研究をより簡単かつ効率的に行うことができます。

また、多くの有名な製薬企業が利用しているため、このネットワークを通じて臨床医がスポンサーを見つけやすくなったり他業界とのパートナーシップを持つことが容易になります。その他に、TriNetXプラットフォームが膨大な臨床データを分析して、臨床試験計画の結果を予測・視覚化してくれる機能もあり、臨床試験計画を正確に立てることが可能になります。

現在TriNetXは、COVID-19臨床研究をサポートするために、各国の電子カルテデータを統合したプラットフォームと医療機関のグローバルネットワークを準備しています。既に、40940人ものCOVID-19の可能性がある患者のデータセットが作成されています。これにより、コロナウイルスの予防的な介入方法やワクチン・薬の効能を調査することができます。

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こういった大規模データを管理するプラットフォームがあれば、自ら患者を集めることなく研究が実施できるため世界的にも需要が高いプラットフォームです。今の時代背景も相まってさらに需要が高まっている予感。

5. Signum:研究参加へのデジタル同意取得

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企業名:SIGNUM consent
URL:https://signumconsent.com/
設立年・所在地:N/A
直近ラウンド:N/A
調達金額:N/A

Signumは、iPadを使って臨床研究の手順や詳細の説明を患者に提供するプロダクトです。研究に参加するためには、インフォームドコンセント(説明を受け納得したうえでの同意)が必要ですが、その同意過程を全てiPad上で行うことができます。

研究参加をする場合にこのような動画による説明や詳細があるのはすごくいいですよね。患者の理解度も文章に比べると段違いになりそう。また、同意する場合もデジタルフォームに署名すれば終了です。動画を見た上で研究に関する質問や面談を医師と行うので、医師や看護師の負担軽減や同意までの大幅な時間短縮が期待できるでしょう。

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遠隔診療などでもチャンスがありそう。今後に注目。

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こんな感じで、第52回でした。
過去分もたっぷり厚くなってきました。マガジンのほうもぜひ見てみてください:-)

応援ありがとうございます!