「お客様の声ノート」から学ぶ、ジョブ理論
先日、コインランドリーが併設されたカフェという珍しいお店に行ったんですが、店内を観察していて「お客様の声ノート」というのを見つけました。
新しいコンセプトのお店だったので、どんな意見・要望が集まっているのか気になり、開いてみたところ、
「洗濯機と乾燥機の数が見合ってない気がします…」
「カフェでどこに並べばいいのか分かりづらかったです」
「すごく混んでるときにスタッフの方が掃除していて狭かったです」
など、新しい店ゆえにまだオペレーションがうまく回ってないことに対するフィードバックがほとんどだったのですが、中には、
「営業時間を朝の5:00からにしてほしいです」
「表に灰皿と自販機を置いてください」
「携帯の充電ができるようにしてほしいです」
なんていう、ちょっとフィードバックとは呼べないものもちらほら。
そのときは、このモヤモヤをうまく言葉にできなかったのですが、
ふと思い出したのが「ジョブ理論」。
サービスや製品を利用する顧客が達成したいこと(= ジョブ)を定義し、それに対してUXを最適化すべき、という理論です。
ジョブ理論に当てはめ、製品やサービスのジョブに直結する指摘なのかを考えれば、本当にクリティカルなフィードバックだけを吸い上げることができるではないかと思ったのです。
コインランドリー併設カフェの「ジョブ」 は?
ジョブ理論に当てはめて、前述のカフェの顧客の「ジョブ」を、
ストレスなく、短時間で、家庭の洗濯物をまとめて洗えること だとします。
「短時間で」というのが機能的な価値、「ストレスなく」というのが情緒的な価値というイメージです。
まず、ジョブの機能的価値を満たすために、
・来客数に対して十分な数の洗濯機、乾燥機があること
・家庭内の洗濯物をまとめて洗える容量の洗濯機、乾燥機があること
などが必要です。
また、情緒的な部分を満たす条件として、
・待ち時間に気軽に利用できるカフェが併設されていること
・おいしい軽食やスイーツを提供し、快適に過ごせるようにすること
が提供されているのだと推測できます。
一方で、前述した「お客様の声」ノートに書かれていたような、
「営業時間を朝の5:00からにしてほしいです」
「表に灰皿と自販機を置いてください」
「携帯の充電ができるようにしてほしいです」
は、このジョブのために必ずしも必要といえるでしょうか?
いずれも情緒価値を高める可能性がないとはいえませんが、どちらかというと「あったらいいな」レベルの付加価値のように思えます。
お客様からこうした声が出ること自体は仕方ありませんが、どの意見を採用し、実現するかをきちんと取捨選択することが大切です。
だから「どんな機能が欲しいですか?」も聞いちゃダメだと思う
上記の点を踏まえると、逆に自分たちがユーザーインタビューをするときも「どんな機能があれば使いますか?」という聞き方は避けた方がいいように思えます。
どんな機能が必要かは、その製品やサービスのジョブによって決まるもの、
そして、そのジョブは作り手側が設計する必要があるものだからです。
例えば上記のカフェの場合なら、
・洗濯機の待ち時間をどのようにして過ごしましたか?
・家で洗うときと比べて、どんな点が優れていると思いましたか?
など。
ジョブに合わせた設問設計をあらかじめしておくことで、より有益なフィードバックが得られるのではないかと思いました。
読んでくださりありがとうございます!