木綿のハンカチーフの歌詞について考える

相も変わらず暇なのでYouTubeを見ていたところ、しょうこお姉さん(しょこたんの事じゃないぞ)が「木綿のハンカチーフ」をカバーしている動画を発見。
僕は将来「木綿のハンカチーフ」で論文を書くつもりなので(?)ここに考えをまとめてみます。
「木綿のハンカチーフ」は都会に出ていった彼氏が彼女のことを裏切る、悲劇的な歌と捉えられがちですが、果たして本当にそうと言いきれるのでしょうか?
僕は一連のやり取りの中で、彼女が全ての返事を「いいえ」と否定するところから始めるところに着目しました。
確かに結果としては彼女は彼氏に振られてしまう形になってしまいましたが、その過程には「彼氏の変化を尽く拒み続けた彼女の姿」があります。
特に3番では、スーツを着た自分の写真を見てくれと言う彼氏に対し、はっきりと「草に寝ころぶあなたが好きだったの」と言い切ってしまっています。これは事実上、「都会に行った貴方は好きではない」と宣告しているようなものであり、この時点で2人が破局するのは決定的になったと言えるでしょう。この破局は、1番の最後の「都会の絵の具に染まらないで帰って」というセリフも示唆しているものであります。
また、1番から4番を通して彼女は都会に対して異常なまでの拒絶を示しています。「都会の絵の具に染まらないで」から始まり、「星のダイヤも海に眠る真珠もきっとあなたのキスほどきらめくはずないもの」という部分では、最早比較対象は「星」「海の真珠」といった自然の産物であり、彼氏の贈ろうとしている都会の指輪が彼女の心に入り込む余地はありません(3番については上述した通りです。)。また、別れ際にねだるのは「木綿の」ハンカチーフであり、あくまでも都会的なイメージのするものを避ける姿勢が窺えます。
…ここで仮にラルフローレンのハンカチをねだっていればただのワガママ女といったイメージになりますが、素朴な木綿のハンカチーフをねだることが彼女の行動の一貫性を基礎付け、「ひたすらに故郷で彼氏を待ち続ける律儀な彼女」というイメージを完成させたものと考えられます。
そうすると、「都会に順応する彼氏」と、「都会を嫌い、田舎に帰ってきて欲しいと願う彼女」の間には決定的な価値観の違いがあり、遠くない未来に別れることは必然だったと言えます。しかし、彼氏が故郷に帰ることを願い、「からだに気をつけてね」と気遣う彼女の脳裏には、恐らく破局という未来は欠片も無かったはずです。そして、いつまで経っても壊れたテープレコーダーのごとく田舎に帰ってくるように願う彼女との不毛なやり取りにフラストレーションを溜めた彼氏は別れを選択し、想像もしていなかった別れを突きつけられた彼女は涙を流し、木綿のハンカチーフをねだるわけです。
…ちなみにここの「最後のわがまま」というセリフは、一連のやり取りはわがままであったという自覚が彼女の方にあったことを示唆するものです。
このストーリーと似た展開の映画に「プラダを着た悪魔」というものがあります。その中ではアン・ハサウェイ演じるどんくさい主人公が一流ファッション誌の編集部に就職し、短期間で見違えるようにファンションセンス、事務処理能力を上達させます。しかし、彼女の急激な変化を彼氏は快く思わず、一度は破局してしまいます。しかし、アン・ハサウェイは出世していく中で、ファッション誌での自分が本当になりたい自分だったのかと悩み、最終的にその地位を捨て、彼氏と復縁します。
しかし、「木綿のハンカチーフ」における彼氏はこの映画と違い、最初から最後まで自分が変わっていくことを悩む様子はなく、むしろ楽しんでいるとすら言えます。そうすると、彼は故郷(と、彼の帰りを待つ彼女)を顧みる機会が無かったがために彼女との別れを選んだ、とも言えるのではないでしょうか。
「木綿のハンカチーフ」は遠距離恋愛が生んだ悲劇と言われがちではありますが、その根底には二人の間の埋めることの出来ない溝があり、遠距離になったことがきっかけでそれが露呈したに過ぎないと考えます。また、彼女が一方的な悲劇のヒロインと断ずることはできず、彼氏の変化を拒み続けた手紙が破局の最大の原因であったと言えるでしょう。

本当は各パートの仕様楽器とアレンジの特徴を研究・発表したいのですが、音楽の専門知識を充分に蓄えてからそちらの方に取り掛かろうと思います…

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