マルチ商法から考えるグレーの世界

表社会と裏社会。言葉でははっきりと区別されているものの、実際の現実の社会では裏と表というように0か100かでボーダーラインを区切れるものだろうか。表社会に属する会社、公共機関、家族だって蓋を開ければグラデーションのように程度はあれど、グレーだなんてことばかり。完全に白という組織は現実にどれくらい存在するのだろう?

大学生の時、Twitterで知り合った男Eと新宿のカフェで待ち合わせをしてお茶をした。Eは大学生や専門学生と判明すれば片っ端からフォローしているらしく、彼自身も早稲田大学に在籍しており、株式投資やFXに勤しんでいるといった趣旨を自己紹介の欄に記載していた。カフェで凄い人を紹介したいと言った彼は、後日慶應大生の男とFXと株式投資で生活しているという男Oを紹介してきた。典型的なマルチ商法の勧誘手口といえばそれまでだが、Oは最終的に学費として約30万円もする塾に入るよう勧めてきた。手元にお金がないなら学生ローンの店舗に行き融資するよう促されたが、裏技として勤務先の欄に夕方から営業している居酒屋の名前を記入すれば問題ないと教えてくれた。どうやら学生ローンの審査では、通常昼間に勤務先に確認の電話を入れるため、夕方から営業する会社に勤めている場合は問答無用でクリアしてしまう。随分いい加減な審査だなと感じたことを今でも鮮明に覚えているが、そうやって審査は通ってしまった。実際に塾として使われているオフィスに顔を出すと、9割が男子大学生で将来に不安を持つようで心の奥に野心を持つような人達で溢れていた。授業が終わった後は意識高い学生達がメモとボールペンを手にしてOに目掛けて飛んでいき、質問をする光景。Oはまるでカルト宗教の教壇に立つ教祖のようだった。

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