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グレート・ギャツビー (著)スコット・フィツジェラルド 「ギャツビー」と「デューデリジェンス」

M&A銘柄 小説

「ギャツビー」と「デューデリジェンス」

 数年前に投資をしていた企業の有価証券報告書を見て、その成長ぶりに驚いたことがあります。まず貸借対照表の総資産が昔のイメージと桁違いに増加していました。売上げの規模も同じです。事業のセグメントも追加されています。注記を確認すると「のれん」が発生しています。沿革や関係会社の欄で、その企業がいくつかのM&Aを行ったことが記載されていました。

 M&Aは中小企業の経営戦略としても、今後も増え続ける傾向にあるといわれています。自社の弱点を補い、メインの事業とシナジーを生み出せれば大きな躍進につながるでしょう。最近だと永守会長率いる日本電産が良い例です。将来のビジョンが明確で、足りないパーツを埋め合わせるように時間をかけて企業買収を進めていくのです。

「のれん」と呼ばれる企業を買収する際に発生する超過収益力が、将来にわたって想定した通りに回収ができるのかという点にも気をつけなければなりません。もし投資と回収のバランスを誤って”大きな”買い物をしたことになれば、のれんの償却額が収益を圧迫して、やがて経営自体が傾いてしまうケースも見られます。

 短期間の間に、母体を大きくし、あたかも成長しているように思えるかもしれませんが、実態はどうだろうか? と分析をして考える必要があります。

『グレート・ギャツビー』に登場するギャツビーはまさにそういった人物で、いつの間にかポッと出てきた富豪のような暮らしをしている謎の男です。彼はどうやって資産を肥やしたのか? その急成長の理由には問題はあるのか? ないのか? 見極める必要があります。

あらすじ
豪奢な邸宅に住み、絢爛たる栄華に生きる謎の男ギャツビーの胸の中には、一途に愛情を捧げ、そして失った恋人デイズィを取りもどそうとする異常な執念が育まれていた……。第一次大戦後のニューヨーク郊外を舞台に、狂おしいまでにひたむきに情熱に駆られた男の悲劇的な生涯を描いて、滅びゆくものの美しさと、青春の光と影がただよう優秀の世界を華やかに謳いあげる。

引用元:(著)スコット・フィツジェラルド(作品名)グレート・ギャツビー (新潮文庫)


興味深いところ
 著者はロスト・ジェネレーションの代表格であり、その中でもこの『グレート・ギャツビー』は群を抜いて有名な作品です。一般人も参加できる「ドストエフスキー講義」に参加したときに講師の方がこの作品に触れていたので、読みました。冒頭は、父からある忠告を受けた内容で始まります。うろ覚えですが、その忠告(下記します)がドストエフスキーの小説を解読する上でヒントになるというようなことを話していました。

 新潮文庫の裏表紙のあらすじには、毎回踏み込んだ内容が記載されています。ギャツビーのミステリアスなキャラクター性は、物語を動かせる推進力となっています。なぜ突如として現れたギャツビーは富豪になったのか? それまでの経緯がすっぽりと抜け落ちています。

 企業買収を進める上で、 その企業の経営や事業内容のヒアリングを行い、また財政状態や収益状況は健全であるか調査する必要があります。さらに法的な面や税務の面でも問題を抱えていないか、コンプライアンスは遵守されているか? あらゆる面から企業の分析を行います。これはデューデリジェンスと呼ばれていて、その他にも専門家から細かい項目の調査があります。デューデリジェンスを実施することで、リスクや将来の収益がいくら見通すことができるのか、その企業価値が試算されます。

 怪しい企業体制(ギャツビー)であれば、デューデリジェンスの段階でどういったリスクや問題があるのか、顕在化されるはずなのですが……。本当に価値のある企業買収であったかは将来わかることです。

 ぼくがまだ年若く、いまよりもっと傷つきやすい心を持っていた時分に、父がある忠告を与えてくれたけれど、爾来ぼくは、その忠告を、心の中でくりかえし反芻してきた。

「ひとを批判したいような気持が起きた場合にはだな」と、父は言うのである「この世の中の人がみんなおまえと同じように恵まれているわけではないということを、ちょっと思いだしてみるのだ」

引用元:(著)スコット・フィツジェラルド(作品名)グレート・ギャツビー (新潮文庫)


 フィツジェラルド、グレート・ギャツビーといえば、村上春樹を連想する人も多いのではないでしょうか。彼の作品の大きなテーマに”喪失”があります。また、彼の作品には、ギャツビーを連想してしまうほど類似した人物も登場します。

 喪失した人間が立ち直るには何が必要なのか、どのような策や、手段が最適なのか考えさせられます。そもそもその喪失感を埋めることはできるのでしょうか。

 短期間で巨大な資産を築きあげるには、地道な取り組みとは別に効率的な手法を使っているケースもあります。

 令和の時代になり、企業サイクルのスパンはどんどん短くなっています。企業買収は大企業や中小企業だけではなく、個人でも可能です。体を大きく見せるには良いかもしれません。周囲から一目置かれるかもしれません。しかし、実態は? 本質的にその手段がベストかどうかの検証は将来にわたって明らかになってきます。

著者紹介
フィツジェラルド Fitzgerald, Francis Scott(1896-1940)
ミネソタ州セントポール生れ。第1次大戦に志願、陸軍少尉として内地勤務の傍ら、プリンストン大学在学時から始めた創作にいそしみ、1920年『楽園のこちら側』を出版、絶賛を浴びる。以後、次々と発表した『ジャズ・エイジの物語』『すべて悲しき若者たち』『グレート・ギャツビー』等も喝采をもって受け入れられ、美貌の妻ゼルダとの絢爛たる私生活は注目を集め、“失われた世代(ロスト・ジェネレーション)”のヒーローとして君臨した。’29年恐慌前後の社会の変貌につれ、公私ともに破綻をきたし、起死回生の『最後の大君』執筆中に心臓発作で急死。

引用元:(著)スコット・フィツジェラルド(作品名)グレート・ギャツビー (新潮文庫)


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