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先輩的第3回のべるちゃんチャレンジ振り返り 前編

少し時間が空いてしまったが、先月、弊社サービス「Script少女 のべるちゃん」にて、「第3回のべるちゃんチャレンジ」の結果発表があった。

本コンテストは、一ヶ月間の期間を設け、その中で運営が用意したお題を盛り込んだノベルゲームを制作、発表するコンテストだ。(詳細はこちら

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元々、お祭り感覚の自然な流れでユーザーさんに創作の経験値を積んでもらいたく始めた施策であるのだが、やはり当初は「こんなめんどくさそうな企画に応募してくれるかな」とか「お題守れるかな」とか、スタッフ一同心配していたものの、無事に三回目を終えることができた。

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どんなに短編でもよいとはいえ、一ヶ月で一作作るのはけっこうな重労働であることは重々承知していて(だからこそプレイ時間30分程度という目安を示しているわけだが)、だからこそ、ここまでの三回の間に参加頂いた全ての参加者さんに心からの感謝を申し上げる

本記事では、「第3回のべるちゃんチャレンジ」参加作品の中から、「第四回までに読んでおきたい作品」をピックアップしていく。
(正直、50作品超の中から好みの作品を探すのは大変で、「書いたものの読んでない」参加者さんも多いのではないだろうか……)

また、このnoteは作り手側寄りの内容であるため、「書き手として上達していくためにどの部分に注目すべきか」についても私見を付しておく。

取り上げるのは全7作品。長大になってしまったので前後編の分割とする。
なお、記事後半では現在までの「のべるちゃんチャレンジ」大賞受賞作品の傾向から、「のべるちゃんチャレンジの攻略法」について見解をまとめている。気が早いようだが、次回もお楽しみあれ。

それでは、早速始めていこう。

注目作品その1『あの日、あの公園で』
作者:千代蔵さん

・一言感想
ピックアップ作品。どんなところが素晴らしいか、というところは結果発表ページの選評に譲るが、とにかくコミカルとシリアスのバランスがよい。登場人物と読者の距離感がちょうど良く、サクッと読む読み物としては本コンテスト随一の優秀さではないだろうか。

・上達的注目ポイント
「選択肢の活かし方」につきる。
選択肢の活かし方がこの作品を一気にピックアップに押し上げていると言っても過言ではない。エンタメ性を一気に引き上げ、ノベルゲームらしい楽しさを与えてくれる。
選択肢というのは、ともすれば作品に水増し感を出してしまい、プレイの楽しさを著しく妨げてしまう。作っている方は楽しくても、読者にとっては離脱ポイントになってしまう……というのはよくある話だ。
しかし、この作品の分岐はちっとも嫌なところがない。それはどうしてか考えてみよう。

選択肢を織り込んだゲームを作りたいと思っている方は、この作品を自分なりに分析するところから始めてみてはいかがだろうか。

注目作品その2『初めてのプレゼント』
作者:モモさん

・一言感想
個人的にはピックアップ枠に入れたかったのだが、枠不足で入れられなかった作品。
処女作とは思えない、きちんとしたドラマがていねいに進んでいって、安定感がある。とても好感を持てる作品だった。
モモさんはビギナーとのことだが、このまま書き続けたら、きっと素晴らしい書き手になると思わされた。

途中で入る「もう、見ない」などの選択肢はネガティブではあるが、「書き始めってそういう気持ちになるよね」と、素直にエールを送りたくなった。
でも、それだけ実力があるならそんな選択肢は必要ありませんよ、という気持ちもここに書いておきたい。

・上達的注目ポイント
「この『ちゃんとしてる』感はどこから来るのか?」
とことん「まとも」「ていねい」なドラマがこの作品の持ち味である。
じっくり読むとわかるが、かっちりしたプロットに対し、文体はむしろナチュラル気味である。
でも、なぜかとても「ちゃんとした話」という印象を受ける。

一読の上、それを考えてみることはきっと創作の糧になると思われる。

注目作品その3『ジャスモールの奇跡』
作者:薊未ヨクトさん

・一言感想
今回の大賞作品。
とにかくプロットの運びが上手く、後半の盛り上げは流石の一言。
審査委員会が全会一致で大賞としたのはこれが初めてである。

文章も書き慣れていて、長く研鑽を積んでこの境地に達した歴戦の書き手であることが伝わってくる一作。

それから審査員へのアピールとして、過去のお題を作中に登場させている遊び心も完備。ニクい。(ただし、これが特に大賞受賞の決め手となったわけではない。あしからず)

・上達的注目ポイント
プロットもテキストも評価されてしかるべきだが、「作品世界の雰囲気をいかにして作るか」こそがこの作品を大賞に押し上げた最大のポイントであるように思う。
後半のネタばらしは、我々の生きている世界ではちょっと現実的でないというか、実写映画でやったら特殊メイクとかCGが必要な内容である。
しかしこの作品では、そこが平然とスルーされており、読者も「まあそういうこともあるか」くらいのノリでスルーすることができる。

それはなぜなのかというと、そこまでのストーリーの中で、「この作品のリアリティのレベルはこれくらいですよ」という「作品の雰囲気」を丁寧に醸造できているからではないだろうか。
ギャグ漫画の中ではトラックに轢かれても絆創膏一つで済むが、例えば恋愛ドラマではトラックに轢かれればまず人は死に、作品中での大きな出来事となるだろう。
逆に、ギャグ漫画でずっこけたキャラが首の骨を折っていきなり半身不随になっても別に笑えないだろうし、号泣必至と喧伝された恋愛ドラマでトラックに轢かれたヒロインが絆創膏一枚で済んだら「あれ?」となるだろう。

作品のリアリティをどのラインに置いて、そしていかにそれを読み手に伝えるのか。それを考えるのにはまさにうってつけの一作であると言えるだろう。

注目作品その4『嘘の向こう側』
作者:泉野 戒さん

・一言感想
モールを舞台に繰り広げられる群像劇、そして後半のネタばらし……なんと、大賞作品『ジャスモールの奇跡』とネタの多くがかぶってしまっている作品。両作者さんは驚いたのではないだろうか。

佳作にのぼっていることからもわかるとおり、決して質は低くない。おそらく「こちらの方が好き」という方も一定数いるのではないだろうか。

ネタばらしに進むために少し頭をひねる必要があり、そこは『ジャスモールの奇跡』とは大きく異なっている。
作者からのメッセージが聞けるコンテンツもあり、こちらの方がよりゲーム的か。作者の泉野さんの思いは、創作に携わる者であればきっと何か感じるところがあるだろう。

・上達的注目ポイント
大賞との読み比べをぜひやってみて欲しい。

1.どこが違って
2.自分はどちらの方が好きで
3.それはなぜか

ということを書き出してみるだけで、自分の書きたいもの、書けるものがひときわ強く可視化されるように思う。

以上、第3回のべるちゃんチャレンジ振り返りの前半をお届けした。
感想自体はもうまとめてあるので、後半もそう遠くなく公開できることと思う。

それでは、また次の記事で。

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