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創作者に立ちはだかる3つの壁

小説に限らず、創作を行う者には少なくとも3つの壁が立ちはだかります。「自意識の壁」「技術の壁」「純化の壁」です。創作におけるつまずきポイントは、大抵がこの3つのどれかに属すると思われます。

創作を戦場にたとえるなら、この3つの壁の知識は地図です。銃でもヘルメットでもありません。これだけでは到底戦えません。

ですが、どこで何と戦えばいいかわかっていないと、暗闇の戦場に放り込まれるようなものです。たとえ強力な武器を持っていても、厳しい戦いになるでしょう。

だからもしあなたが明確な地図を持っていなかったら、マシュマロ式の地図が大いに役立つはずです。まずは3つの壁の概念という、大まかな地図をあなたの中にインストールしてください。そうしてあなたがあなた自身の武器で存分に戦うための支えとなりたいと考えています。

自意識の壁

これは他人にどう思われるかが気になり、行動に制限がかかってしまうという壁です。創作にかかわらず何かを表現する際に、まず立ちはだかる壁です。多くの人がこの壁を越えられず、成長せずただ憧れだけを抱くこと選択してしまいます。また、「まずは量をこなす」ということができずにいる人も、この壁に敗北している状態だと思います。

自分を客観視することは重要ですが、成長のための合理的な行動すら制限されているようなら、むしろまるで客観視できていない状態です。自分の中にいる架空の他人の声に振り回されているので、極めて主観的な世界に閉じこもっていると言えるでしょう。他人が客観的に見たら「いいからやれよ」の一言で終わる話です。

客観的に見ればくだらない壁なので、これは真面目に語られることが少ない壁かもしれません。でも、これは本当に手強い壁です。一度越えたとしてもなくならず、行動するたびに越える必要があるのです。しかもこの壁を越えられないと試行錯誤すらできないため、どんなに才能があってもこの壁に勝てないなら成長できずに終わります。恐ろしい壁です。

基本的にこの壁は精神論で乗り越えるものです。実際精神の問題でしかないからです。でもこの壁に阻まれている人だって、そんなことはわかっているんですよね。だから「腹をくくれ」なんて月並みな言葉をもらっても乗り越えるのは難しいでしょう。

乗り越えるコツとしては、人間の内面に関する科学的な知識や考え方を身に付けることだと考えています。具体的には行動経済学心理学ゲーム理論等です。要するに、本気の精神論を使うということです。

そうして最初の一歩を踏み出したら、次に必要なのは褒めてもらうことです。承認は勇気の源泉であり、自意識の壁を何度も越えていくためには必須だからです。

技術の壁

これは表現する技術が足りなくてうまく表現できないという壁です。説明もさほどいらないくらいシンプルな壁ですが、自意識の壁を越えられる人でも経験を積まないとこの壁は越えられません。

では何を表現するのかと言うと、それは作者の考える「面白さ」です。そもそもの前提として、駄作というのは「つまらない作品」ではなく、「面白さを伝えられなかった作品」です。あなたの作品が評価されなくても、面白さが否定されたわけじゃないのです。あなたが感じたのなら、面白さは確かに存在します。それを伝える手法こそ、小説における技術なのです。

この壁を短期間で越えられる人はほぼいません。ですが他の壁とは違い、適切な知識を獲得した上で労力を費やせば、確実に越えられる壁ではあります。ただし、適切な知識がないと労力は無駄になります。そのため、自意識の壁を越えて最低限のアウトプット量を確保できているなら、技術の壁を越えられるかは知識を獲得できるかにかかっています。

知識の獲得方法は主に2つあり、まずはインプットです。作品を読んで学んだり、公開されているノウハウを学ぶことです。これはシンプルに知識を吸収するということです。

次にフィードバックです。自分の作品へのフィードバックを得てこそ、知識は成長の糧となります。最低限のアウトプット量が確保できているのに技術の壁に阻まれてしまっている人は、このフィードバックが不足しているパターンかもしれません。特に二次創作をメインにしている場合は技術的問題が指摘されないことが多いので、フィードバックを得る機会が極端に少なくなりがちです。その場合は合評会を主催する等の主体的行動でフィードバックを獲得しにいくしかないでしょう。

作品によって必要な技術は異なるため、技術の道には終わりがありません。ですが基礎技術でつまずくことさえなくなれば、自分で試行錯誤しながらどんどん前に進んでいけます。そうなれば技術の道は続くものの、技術の壁は越えたと言えるでしょう。

純化の壁

これはわかりづらい壁ですが、表現の純化がうまくいかないという壁です。表現の純度が低い、あるいは表現の方向がズレているせいで読者の心を動かせないという状態です。これは非常に高い壁で、高い技術を持った人も大半がこの壁の前で立ち往生します。しかし、この壁を越えられるかが面白い作品を生み出せるかを決める最重要ポイントと言っても過言ではありません。

人の価値観は千差万別なので、面白さの感受性も千差万別です。そのため、自分が感じた面白さを他人が自分ほど面白く受け取ってくれることは稀です。自分が感じた面白さに関しては、自分が世界一高い感受性を持っていると思ったほうがいいでしょう。だから技術の壁を乗り越えて正確に伝えることができても、自分と同じように心を動かすとは限りません。「伝わる」「感じる」には大きな隔たりがあり、上手に書けてもそれだけじゃ「ふーん」で終わってしまうのです。

また、表現の純度を高める方向がズレてしまうと、その面白さを受け取れる人が誰もいなくなってしまいます。そもそも理解してもらえないようなら、純度云々以前の問題です。

この純度と方向の問題は、味覚にたとえるとわかりやすいかもしれません。もし自分が辛味の感受性において世界一だったら、自分がピリ辛程度だと感じたものなんて他人とってまるで辛くないでしょう。「こんなに激辛で大丈夫かな」と不安になるくらい濃くしないと、他人にはピリ辛だと感じでもらえないはずです。あるいは人間の味覚で感知できない味だったら、どんなに濃くても通常の人間には無味です。

表現を純化させていくには、まずは自分の価値観他人の価値観社会の価値観について知る必要があります。そうして誰に届けるのかどんな面白さを表現するのかをきちんと言語化しておくと、やるべきことが見えてきます。

表現の純化がうまくいったかをチェックする方法は簡単です。まず、事前に「こう言わせたい」というキーワードを設定します。次に、相手の心を動かせたと思われる感想をもらえ、なおかつその中にキーワードが入っているかをチェックします。それが達成できれば、純化がうまくいったと言えます。その方向でひたすら純度を高めていくといいでしょう。

そういった具合で結果を見て試行錯誤していくプロセスを自分だけでできるようになり、結果もついてくれば表現の純化でつまずいている状態からは脱したと言えます。つまり、純化の壁を越えた状態です。ただし、目的や状況によってどう純化させていくべきかは常に変わります。そのため、純化の道にも終わりはありません。

あなたは今どこ?

もしあなたが何かにつまずいているとしたら、これらの壁のどれかの前で立ち往生している状態だと思います。このシリーズではそれぞれの壁についてのさらに細かいつまずきポイントについて解説し、最大限お役に立てるよう努めます。

ただ、自ら問題を明確にしていく力も重要であり、しかもそれが純化の壁を越える力に繋がっていきます。そのためマシュマロ式を読み進める前に、まずはどの壁の前のどんなつまずきポイントに直面しているのか、自分で言語化してみることをおすすめします。

つまずきポイントが明確化できても解決方法がわからないなら、ぜひ↓から相談してみてください。みんなのつまずきポイントをどんどん潰していきますよ!

壁の実例

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