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カブ限界旅第三弾②

疲れているだろうに2時間に1度の間隔で中途覚醒を繰り返し、最後はバイクの音で目が覚めた。横になったままボーっとしていると立て続けに数台走っていくのが聞こえる。スマホを見ると6:00前だった。バイカーの朝は早いな‥と思いながら、もそもそ起きて撤収。出発準備が終わるころには、8人いたバイカーはわたし含めて3人だった。まだ8:00前なんだけどな。

𓆈道の駅 えんべつ冨士見
何も考えずに来てしまったけど、道の駅開いてる‥?スタンプ押せないのでは‥?と一瞬ひやっとする。24時間押印可能だった。助かった。

海沿いを離れて内陸に向かって走る。富山ナンバーのバイク3人組に追い抜かれた。新潟ー小樽のフェリーに乗ってきたんだろうか。交通機関を使った3人旅よりもハードルが高そうだけど、それでも来るってことは仲良しなんだろうな。揃って手を挙げて行ってくれたので、一人ずつに返しながら「よい旅になりますように」と祈る。(バイカーはすれ違いざまに手を挙げたり、振ったりして挨拶する文化がある)

𓆈道の駅 なかがわ
おいしそうな野菜に目を奪われるけど、買えないのでそそくさ通り過ぎる。化石が発見されている土地なので、あちこちに恐竜やアンモナイトのモチーフが貼ってある。わたしが一番好きな恐竜はステゴサウルスです。

天塩川と宗谷本線と並走するように走っていく。糠南駅の近くを走りながら、糠南クリパのことを思い出す。糠南クリパとは、1日に数本しか電車の停まらない無人駅で開催される豪雪クリスマスパーティーのことである。この辺境の地に全国各地から人が集まるのは(時期的に雪の影響を受けやすいのに)控えめに言って狂気が過ぎる。毎年2chで報告される写真を眺めるのが楽しみなんだけど、コロナ禍でオンライン開催になった年以降の動向は追えてないな。

𓆈道の駅 てしお
ポケモンマンホールがかわいいなあと思いながらスタンプを押す。何か食べようかと道の駅内を見て回るも面倒になって辞める。いい加減にちゃんとしてほしい。

稚内への最短ルートは国道40号だけど、海沿いに出る。風が強いうえに爆速トラックがたくさんいて怖い。途中、オトンルイ風力発電所のタービンがたくさん並んでいる場所を通る。さすがにカメラ出すか~と駐車場に停まって写真を撮っていると、バイクおじがきて「余計なお世話かもしれないけど、あそこの道を下っていくと電線とか余計なもの入らない写真撮れるよ。」と教えてくれる。

タービンを通り過ぎるとしばらく右には原野、左には海の道がひたすら続く。これはきっと「なにもない」なんだろうなと、遠くの白波を眺めながらぼんやり思う。旅先でたびたび言われる「なにもないところなのに、なにしに来たの?」を思い返しながら。なにもないなんてことはなくて、なにがあるのか知らないだけなんだろうな と。そんなことを考える。道が続くその先に海や山があれば、こんなにいいことはない。

𓆈抜海駅
ここが日本最北端の無人駅です。誰も来ないだろうと思っていたのに、相模ナンバーのハイエースが来て長い一眼レフと三脚を抱えたお兄さんが下りてくる。仕事を辞める前の有休消化中で、天気が良かったら写真を撮りに出かけて、天気が悪かったら友だちと会ったり農家バイトをして過ごしているらしい。「このあとピンクの特急が来ますよ」と教えてくれる。臨時?の列車らしい。廃線とか廃駅は好きなのに、どうしてこうも車両には興味が湧かないんだろうね‥。

特急列車を見送って、さらに北へ。
あなたの稚内市内はどこから?わたしは、国道40号のすき家です。

𓆈道の駅 わっかない
稚内駅の中の目立たない場所にスタンプ台がある。複合施設になっているので、果たしてどこが道の駅なのかよくわからない。
まあ、今日はそんなことはよくて。問題は気温だよ。稚内駅前に設置された温度計には13:50 18.5℃の文字。いやいや、8月10日ですよ。冗談じゃない。一番気温が高くなるであろう時間にこの気温。え?夜どこまで下がりますか?夏装備しかないんだけどな‥。

ローカルホームセンター、ベストホームに寄っておにやんまくんを調達。2日前に宗谷岬と白い道に行った人がアブがとんでもなかったと言っていたので。効果のほどは分からないけれど、お守り代わりに。カイロも欲しかったけど、さすがに季節はずれすぎて見当たらない。仕方ないので、できるだけ厚着して行こう。

国道238号に入る。海岸線とは比較的相性がいいのに、ここで太陽を見た試しがない。道中散々迷ったけれど、白い道の看板を見送って進む。稚内で一番いい景色は白い道だと思っているので、カブで行けるのをすごく楽しみにしていたのだけど。あそこはオフロードで、起伏が大きく、道が狭いわりに交通量は多い。舗装された平坦な道を走っている今でさえ さんざん風に煽られてれている状況で、その道に挑める自信がなかった。キャンプ道具も積んでいてバランスも悪いし、コケたら立て直せる気がしない。悲しみを背負って最北端へ。

𓆈宗谷岬(最北端)
地の果てというものは もっと さびしいところだと思っていた こんな 明るくて せいせいした所だとは 思ってなかった
不思議だ こんな遠い遠い地の果てなのに じつは あのアパートの自分の部屋のドアとつながっていて ドアをあけて外に出れば どこへでも行けたんだ(ハチミツとクローバーより)
最北端にくると、思い出す。簡単なことだけど、なんとか前に進みさえすればどこにでも行けるんだよね。どこへにもいけないと思っていた、むかしのわたしに教えてあげたい。むかしのわたしができなかったから、いまのわたしはどこへでも行く。

北海道の郊外はガソリンスタンド同士の距離が遠くて、営業時間も短く、土日の休みも多い。こまめな給油が吉なので、宗谷岬からすぐのスタンドに寄る。レシートと一緒に最北端給油証明書をもらえてちょっと嬉しい。

口の震えが止まらない。この日15:00の宗谷岬の気温が16℃・湿度94%・風速8.4mだったようで。調べてみると体感温度は5℃。そこを生身で走るんだからさらに寒いんだろうな。そりゃあ、歯も鳴る。この時間の日差しが好きなのに、雲が厚くて、寒くて。なんだか楽しくなくなってきたな‥と、天気に合わせてどんどん気持ちが落ち込んでいく。いやいや、午前中なにを考えていたんだよ。なにをあるものにして、ないものにするかは自分次第だろ。と、自問自答した結果、道があるだけで嬉しい!とめちゃんこ元気になったので、自分の体力と頭がバカでよかった。

𓆈道の駅 さるふつ
ここのホタテおにぎりが、道の駅めぐりで食べたものの中でいっちゃん好き。この日おにぎりがなくなっていたので、お弁当タイプのホタテの炊き込みご飯?を購入。晩のご飯にしましょうね。

𓆈道の駅 北オホーツクはまとんべつ
スワットンというご当地ゆるキャラがかわいい。パン屋さんが入っているので、明日の朝ごはんにしようかと思うもコーヒーセットがないしなあと辞める。積載の関係でどちらか悩んだだけど、焚き火台じゃなくてコーヒーセットを持つべきだったよ。

食料調達にセコマに行く予定を、道の駅向かいにあるスーパーなかむらに変更。今にも崩れ落ちそうなたたずまいがよい。寒いし温かいものをと思いつつ、お腹が空いているわけでないので何を食べていいか分からずウロウロする。考えるのが面倒になったので、結局カップラーメン。

𓆈クッチャロ湖畔キャンプ場
やっぱり湖畔キャンプが1番好き。三連休初日ということもあって駐車場を見るかぎりかなり混んでたけれど、車中泊の人も多いようでサイトは余裕がある。自家用バスを見るのは初めてで、本当にあるんだな~としげしげ眺めてしまう。バスの窓際に猫がいて、網戸越しに目が合ったので手を振ると中にいた人に笑われた。はずかし。
キャンプ場内は湖・駐車場・通路・サイトの位置関係になっていて、車が停まっているとテントから湖が見られないのが残念。お湯を沸かし始めたタイミングで、運よく目の前の車が買い物に出たので、夕暮れの湖畔を眺めながらカップラーメンとホタテご飯を食べられたので大満足。本日初のごはんだよ。おいしいね。

湯冷めして寒くなるのが嫌だからお風呂は朝にしようかなと考えていたけど、思っていたよりも気温が下がらなかったので裏のホテルの温泉へ。恐ろしいくらい足がむくんでいるので、揉みまくる。年々、温泉が身体に染みるようになっている。加齢だ。こわい。反面、温泉にさえつかっておけば体力が全回復する仕様なのでまだやれると思う。昨日よりも活動量が多いうえに、風と寒さにかなり体力を持っていかれたので今日はすぐに眠れそう。おやすみ。

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