見出し画像

感覚と時間と場所と集団〜Group Therapy Vol. 1〜

自分はなんでこんなにデモ音源が好きなのか?結局のところ音楽じゃなくて人の感性や考えが好きなだけなのかもしれない、そんな風に思ったチャリティコンピの65曲。それはお店の隅に置いてあるスケッチブックの落書きのように雑多で、センスに溢れていてページをめくっているだけでワクワクしてくる。

そのスケッチブックのラフな絵は皆がその場に存在したという記録にもなっていて、それがそのまま場所の魅力を証明する。つまりはやっぱり今のロンドンのインディ・シーンは面白いってそういうこと。

だって、65曲だよ?こんなにあったら途中で飽きるとか曲の出来にバラツキがあって飛ばしたくなるとかありそうなものだけど全部が本当に良くて驚いた。半分くらいは知らないバンドだったんだけどこれはいいなって思えるものばかりで。

やっぱり場所って大事。たとえばあるお店があったとしてそこへどう辿り着いたかが重要なんじゃないかって。電車だったりバスだったり途中で見えた風景が頭に残っていたり、そもそもなんでそのお店に行こうと思ったのかってそういうのが大切で、そういう過程を経ているからこそきっとわかりあえる。誰か新しい人と話す時に大変なのはその人がどういう人かわからないから探り探り話さなきゃいけないからで(それも楽しいものだけど)この人は大丈夫だってわかっていると安心感が違うし話が早い。それはたぶん前提条件が共有されているから。だからそれがどういうことかと確認しなくとも伝わるし言葉が変に歪曲されることもない。

なんでそんなことを思ったかっていったらこのコンピレーションアルバムを聞いていてそういう共通意識みたいなものを感じたから。表面に出てきているものは違っても根底にある何かが一緒で、それがなんとなくわかるから流しぱなしにして、ぼおっと聞いていてもこれ好きだなって思えるのかなって。

その場所は必ずしも現実の場所でなければいけないということもなくて、こうやって集まることでそこが新たな場所になるみたいなそういう感じもしている。結局集まるっていうのはそこに惹かれる理由が何かあるってことだから。「いい」とか「わかる」って感覚はどこから来ているのか、類が友を呼ぶとして、その道すがらにある何かを知りたい(完全に前のnoteのSports Teamコミュニティの話と同じことを言っている。実はこっちの方を先に書いていて下書きにずっと入れていたんだけどそれにしても一緒。第二章に入ったと思われるロンドンのシーンにおいてはやはり共通意識や共感がキーになっているのかもしれない。そんな感じに言い訳する)。

そして凄いなって思うのはロンドンの若手バンドのチャリティコンピの中に当然のようにいるSavage Gary、つまりはDan Careyの存在。そりゃSpeedy Wunder Groundが出すバンドみんないいはずだよってなんだかそんな気分になった。このコンピじゃないけどGoat Girl Lottieとのこの曲も良かったもんな。

それにしてもGroup Therapy Vol. 1、このコンピ本当にいい。

Porridge Radio, PIXX, Happyness, Mushy P(Goat Girl), Holy Motors, Pet Grotesque(Goat Girl,Tina), Pet Shimmers, Max Bloom(Yuck), LICE, Oscar Browne(ex. Dead Pretties), Sorry, Hotel Lux, Deep Tan, Ugly, The Cool Greenhouse, Blue Bendy, Legss, Krush Puppies, Treeboy & Arc, Shame, Glows, PVA, Lazarus Kane, Lynks Afrikka, Good With Parents(Black Country, New Road)

こんな感じに並べてみたら、これは私のインスタグラムのフォローリストですってほとんどそんな感じになってしまった。そりゃ同じ画像が並ぶし気になるってもの。やっぱりその場所にどうやって辿り着くのかっていうのが重要なのかも。65組もいるからっていうのを差し引いてもこれはドンピシャ。

そして聞いている内にHappynessはやっぱりめちゃくちゃ曲がいいなって気にさせられた。本人のアコースティックのライブバージョンもだけどYuckのMax BloomがカバーするSeeing Eye Dogが最高にしみてより一層その魅力がわかったみたいな。なにか本当に、そこにはある種の愛があるようなそんな感じがした(じゃなきゃ出たばかりのアルバムの曲をカバーしない)。

あとはこのコンピで初めて知ったバンドだとSocial Contractがとても良かった。Happynessの次に入っていて、ちょっとカントリー風で、土の匂いをさせつつ悲しげに響くアコースティックなデモ曲でまたしてもしみた。そういう感じの曲で言えばMellahも良かったし、Pet Grotesqueも非常に良かった。油断した心にクリーンヒットするのはやっぱりラフな作りだからなんだろうな。素の部分を見せている時のふとした言葉がスッと胸に入ってくるみたいな。

というかこのコンピは全体的に優しさが漂っている。攻撃性よりも断然優しさ、聞くというより流していてなにかちょっと満たされた気分になる。人の悪意に触れた世界の救い的なそんな感じの(よく考えたらタイトルもGroup Therapyだもんな)。

https://grouptherapycollective.bandcamp.com/album/group-therapy-vol-1


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?