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マッサージ!臨床でどう活用していく?~マッサージの効果を出すために考えるべきこと~

おはようございます!
本日も臨床BATONにお越しいただきありがとうございます!
第91日目を担当するのは理学療法士のシミーです。
よろしくお願いします!

本日はマッサージについてお伝えしていきます。

皆さんはマッサージについてどのように考えていますか?また臨床でマッサージを活用していますか?

私は新人の頃、マッサージを活用できていませんでした。
それにマッサージが良いか悪いかというように考えていて(手段にとらわれていた)本質的なことを捉えることが出来ていませんでした。

最近は、マッサージは手段であり、マッサージを行うことで患者様にどのような反応が起こり、それによって問題点を解決することができるのかを明確にすればいいと考えています。

臨床現場に立ったばかりの頃はこういったことが繋がらず、とりあえずベッドに寝てもらいマッサージをするということが多々ありました。

先輩からは、マッサージばかりしても良くならないよと言われましたので、マッサージが良くないことだと思い込んでしまっていました。

しかし実際にはそんなことはなく、マッサージという手段を活用できていなかった(評価した上でマッサージという手段を選択できていなかった)ということに気づきました。

理学療法の定義にはマッサージという言葉が明記されています。
この法律で「理学療法」とは、身体に障害のある者に対し、主としてその基本的動作能力の回復を図るため、治療体操その他の運動を行なわせ、及び電気刺激、マッサージ、温熱その他の物理的手段を加えることをいう。

引用:理学療法及び作業療法士法 第2条

歴史的にみてみると、マッサージはフランス発祥の治療法です。
似たような按摩(あんま)は中国発祥ですので、厳密に区別されておりますが、今回の内容は臨床でマッサージの効果を出すことですので、その辺の部分は割愛させていただきます。

今回はマッサージを活用していく中で、臨床で効果を出すということにポイントを絞ってお伝えしたいと思います。



マッサージとは

マッサージ(massage)は術者の手や身体の一部を用いて、対象とする患者や障害者の身体の皮膚や筋などの軟部組織に、直接、擦り、揉み、叩くなどで施術する徒手療法である。
引用:図解 理学療法技術ガイド 第4版 理学療法臨床の場で必ず役立つ実践のすべて 文光堂 石川斎 武富由雄 市橋則明 p482

引用:図解 理学療法技術ガイド 第4版 理学療法臨床の場で必ず役立つ実践のすべて 文光堂 石川斎 武富由雄 市橋則明 p482

以上のことから、マッサージは徒手療法の中の手技であり、対象とする部位は皮膚や筋などの軟部組織です。
方法としては、「擦る」「揉む」「叩く」を使い、身体に「直接」実施していきます。

リハビリテーションでは手段の一つなので、大切なのはそれをどう活用していくかです。
これは他のアプローチをするときにも言えることですので、効果を出すために必要なことを整理していきましょう。

まずはマッサージの効果を知りましょう。


マッサージの効果

軟部組織へアプローチすることにより大きく4つの効果を得ることができます。

マッサージ効果①
マッサージ効果②

マッサージにより血管は拡張し、環流量の増加を認めます。皮膚では癒着している部分を軟化し柔軟性を出すことができます。筋緊張は低下し、疼痛の軽減や心理的なリラックス効果も認められます。直接触れるので、感覚受容器への刺激により脳への感覚入力をするということにもつながります。

一見すると当たり前のことかと思いますが整理してみるとマッサージが及ぼす影響が見えてきてわかりやすくなりますね。
身体への効果はわかりましたが、これをどのように活用すれば、臨床で効果を出せるのでしょうか?


臨床で効果を出すために考えるべきこと

マッサージに限らず、私たちセラピストのアプローチが効果を出すかどうかは非常に重要なことです。
では、どうすれば上記で出したような効果を出すことができるのでしょうか。
マッサージの効果が必要な状態かどうかを判断することです。
マッサージの効果により改善する状態でないのにマッサージは選択しませんよね。当たり前のことですが、臨床では非常に重要なことです。(なんとなくマッサージを選択していることはないでしょうか?)

どんな状態がマッサージを選択していくような状態でしょうか?

それは、不動状態から動き出す前の状態です。

なぜなのか?身体に及ぼす効果から考えるとマッサージにより身体には「血流増加」や「癒着の軟化」、「筋緊張の緩和」、「疼痛の寛解」、「心理的効果」などは身体が固まって動いていない状態を呼び覚ましていくような状態と捉えることができます。

逆で考えてみてください。「血流の低下」「癒着の進行」「高筋緊張状態」「疼痛がある」「心理的に緊張している」などこのような状態はとても動き出すような状態ではないですよね。

もちろん、臨床ではこれらの状態が常に不動状態の患者様にみられるわけではありません。
どのような状態であるのかを評価した上で、どこを改善することにより動いていくための状態にすることができるのかを明確にしていく必要があります。

私の臨床経験を例に出して考えていきましょう。

膝術後情報

人工膝関節置換術後の患者様で術創部の皮膚と皮下組織に癒着が生じて皮膚の滑走性が低下したことにより、術側膝関節の可動域制限がある患者様を担当しました。

このような状態の患者様には関節可動域改善のために術創部周囲の皮膚と皮下組織の癒着を軟化するためにマッサージを選択しました。
(もちろんマッサージだけでは可動域制限は改善しないので他の部分にもアプローチはしていました。)
手術により術創部は術後より疼痛が認められ、不動状態となります。創部は治癒過程で瘢痕化が進行するため皮膚と皮下組織の癒着は進行していきます。

今回の患者様では術後の不動状態から動き出すため(膝関節の運動を動作の中で使えるようにする)の準備にマッサージを活用していくのです。
この癒着を残したまま関節運動を行っても、皮膚が突っ張ったりして思うように膝関節屈曲が出来ないことが多いです。
(私も新人の頃に経験しました)

皮膚のアプローチしていくポイントは以下の図の部分です。

皮膚と皮下組織②


マッサージは動き出すための準備として活用していくとお伝えしました。
しかし、注意していただきたい点があります。
それは、マッサージにより筋出力が低下してしまう可能性があるということです。これは様々な論文でも出されていることですのでご存知の方も多いのではないでしょうか。

筋肉組織に対する作用の部分で、筋肉内の血流改善によりスムーズな収縮が可能になる一方で、対象とした筋の神経系の興奮性を抑制し、筋出力を低下させてしまう可能性があるのです。
筋出力の低下はパフォーマンスに影響を及ぼす可能性があります。

なので、マッサージを活用する際には筋出力低下によるパフォーマンスの低下を引き起こす可能性があることを考慮しておかなければなりません。

例えば、歩行練習や階段昇降練習をする前にマッサージを入念にしてしまうと逆に動作練習の効果を出せなくなってしまうのです。

不動状態から動き出すための準備をどのように捉えるのかは非常に重要になってきます。
「人工膝関節置換術後で膝関節運動を行う」「寝たきりの状態から車いすへの移乗を行う」「部屋で横になっていた状態から階段昇降動作練習を行う」など同じ不動状態から動き出すということでも患者様で意味やレベルが変わってきます。

ですので、最初にお伝えしたように、十分な評価をした上で、マッサージという手段を選択しないと、私のように何でもかんでもマッサージを選択してしまい、患者様が良くならないという経験をすることになってしまします。

では、どのような評価をすればいいのでしょうか??


皮膚と筋肉の評価

実際に私が臨床で実施している評価するときのポイントをまとめました。
あくまでも、マッサージで効果を出すための状態かどうかを評価するポイントです。

まずは皮膚の評価です。

皮膚の評価
皮膚評価②
皮膚評価①

次に筋肉の評価です。

筋肉の評価
筋肉評価
筋肉層分け


マッサージの禁忌

最後に、マッサージの禁忌についてお伝えします。

マッサージの禁忌

基本的に炎症が起きているときはマッサージを実施するべきではありません。マッサージは血流増加を起こすので、結果として炎症を助長してしまうからです。
参考文献などによっては、筋の微細な損傷による炎症などでは禁忌となっていません。
私は臨床で、明らかな炎症症状が出ている状態や、疼痛が強い状態などではマッサージを選択しません。


まとめ

・マッサージは徒手療法のなかの一手段であり、適切な評価をした上で選択することが重要であり、効果を発揮するために不可欠なことです
・マッサージの効果は、『皮膚』、『筋』、『循環系』、『神経系』に分けて考えることができます
・大まかに「血流増加」や「癒着の軟化」、「筋緊張の緩和」、「疼痛の寛解」、「心理的効果」が挙げられるます
・臨床で効果を出すには、不動状態から動き出すための準備のためにマッサージを選択します
・皮膚や筋の評価は視診、触診、他動運動、そのときの抵抗感、左右差などをみていきます
・マッサージの禁忌は「感染性疾患」「皮膚に創傷や発疹がある」「悪性腫瘍」「血栓性静脈炎」「血腫を伴う筋が腫脹した外傷」であり、炎症症状や疼痛がある状態では選択するべきではありません

決してマッサージは悪いものではありません!
良くなかったのは私のように適切な選択が出来なかったことです!
明日の臨床から、患者様の評価を見直して、マッサージを適切に選択していきましょう。

参考文献
・図解 理学療法技術ガイド 第4版 理学療法臨床の場で必ず役立つ実践
 のすべて 文光堂 石川斎 武富由雄 市橋則明 p482-488
・徒手的理学療法-Manual Physical Therapy 三輪書店 藤縄理 p74-76
・原著 深部横断マッサージが拮抗筋の筋機能に与える影響 新井龍一 
 来間弘展 根本海渡 理学療法科学33(6):921-927,2018
・スポーツマッサージ 運動・フィットネス・リハビリテーションのケア 
 西村書店 著S.フリッツ 監訳 大谷素明

本日も最後までお読みいただきありがとうございました!
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明日は、脳外臨床研究会 滋賀支部代表の小林隆大さんです。
今回は筋出力についての内容だそうです。運動麻痺がある患者様へ評価・アプローチをしていく際に筋出力という言葉をよく使いませんか?私も臨床で多用しています!そんな中で運動麻痺の分離はいいけど力が弱い方は筋力低下なのか?という疑問を抱く方は多いのではないでしょうか。そんな臨床での疑問を解決してくれる内容となりますので是非明日も臨床BATONにお越しください!

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