エロ本読んだ!

先日(23年の11月)中野ブロードウェイの本屋にてこんな物を見つけた。


ヴイナスと言うタイトルで、1947年頃に耽美社(※)と言う出版社から出てたらしいカストリ雑誌(低品質なエロ本)だ。これはその第二巻の上巻的な立ち位置の物だ。雑誌裏に紙が足りなくて分けざるを得なかったと書いてある。
カストリ雑誌と言う言葉の語源とされるモノの一つに、仙花紙と言う低品質な紙で作られてた、と言うのがある。戦後は物資が何もかも足らず、本一つ作るのにも大変な事は容易に想像できるので、致し方無いところもあるか。

(※)追記。創刊号は耽美社だけど、2巻は耽美館に、2巻2号目以降はマロニエ社になっている? しかし巻末の発行社はヴイナス社となっている。何も分からん。
中を改めて読んでたらマロニエ社の名前で謝罪してる文があった。多分、これらは色々な事情で使い分けていただけだろう。

値段も半分になってる

上記の語源の他にも、大体このような粗悪な雑誌は3巻で廃刊になるし、それって3合呑んだら悪酔いして潰れる粗悪な酒(カストリ酒)にかけた名称でもあると言う話があるが、まぁこれも諸説。如何せん史料がネットには少ないし、今私が行動できる範囲でも見つからない。

話は逸れるが、こう言う戦後戦前の官能雑誌は有名な物(家畜人ヤプーが載っていた奇譚クラブ)なら有志がネットにアップロードしているし、世の中には風俗資料館と言うこの手の本を中心に集めている会員制図書館もあるので、興味があるなら調べてみるといいかもしれない。私も行きたいが、余裕がない。

中身の話に戻ろう。
と言うか、さっさと書かないと本から溢れ出る鬱陶しい程に芳醇な古書の匂いに狂い吐きそうになる。

いくつかの小説や女体、偉人の性に纏わる話など……何と言うか、パッと官能雑誌って言われて思いつく物が大体載っている。
挿絵などは結構豊富だが、浮世絵タッチのラフな物や、西洋美術絵画をそのまま載せてたりと質は良くない。

折角だから、巻頭小説である『音のない恋』を詳しく読もう。

「私」と言う六十の男性が、田舎に縁を切り置いて来た割とカスな許嫁である「お銀」との話を古い知り合いである「あなた(読み手)」に語ると言う内容である。それだけ。
もうちょっと詳しく言うと──

お銀はめちゃくちゃカスで我儘なのでイラついてたし、母親も許嫁として夜伽の一つをすべきの筈(当時の価値観基準、尚且つ私の視点の話であり私個人の現在の思想ではない)なのに夜遊びを黙認し圧もかけない。いっそ酒の頼って襲おうと思ったら性的な意味でなく殺害的な意味で襲い(未遂)田舎に居られなくなったのでここで縁切り、なんだかんだあって印刷会社で働き町工場の主人となり成功してたのだけど、ある日乳がんで母がやばいと言う手紙が来る。行ってみたらお銀も再婚していたが相手がもっとカスでやばく苦労してた。助けてくれ、と金を毟ろうとする。折角だから遊ぼうとしてやり、母が死ぬまでの11日間の間性行為をして悦を満たす。葬式も終え去る際にお銀には今まで買って来た女の誰よりも安い金を払い、満足して去る。

そんな話です。
特に面白いと言う訳ではないし、肝心の事情のシーンもめっちゃくちゃに薄味で全て読者への想像力に任せ、なのに女を支配すると言うマスキュリズムな性的欲求を悪戯に充そうとする。まぁカストリと言われる所以も分かる。

これは少し話がズレるのだけど、紙の節約の為か三段組のレイアウトになっており読みにくかった。

中学生の頃、西尾維新の化物語を読もうとしたのだけど文字が詰まってる上に二段組で読みにくく諦めて森見登美彦とかの文庫作品をそのまま読み続けてたのを思い出した。そんな苦手意識。
他にもページにして1〜3枚ぐらいの小咄が幾つか載っているが、どれも事情のシーンはほぼ無い。他の昭和エロ話に疎い(と言うか家畜人ヤプーぐらいしか真面目に読んだ事ない)ので何も言えないが、こう言うのが流行りか、定石だったのか。

さっき気分が悪くなりそう、みたいな事を書いたが本当に悪くなってきたので散歩がてら近所の図書館に資料がないかと行ってきたら、画像の本があった。

中をパラっと読むと、普通に接物だのストリップだのの話や引用が多く、私が掘り出したこの号、或いはヴイナス自体がエロにそんなに振っていないだけ説はある。



まぁ、そんな感じで一通り読んではみたけど特筆する程の物は無い。本自体は色々文化や当時の性事情を探るのには面白いけど、中身は凡々の凡でこれ以上書いても細やかな字数稼ぎにならないと思った。

以前、家畜人ヤプーの館と言う本を買って、ある程度読んだんだけど、自分がそもそも昭和サブカル・アングラにあまり惹かれないと言う気づきがあって、今回もその好みが足を引っ張っている可能性はある。

つまらない訳ではないけど、そそられないと言う感じだ。この一連の流れを汲む「危ない一号」などの雑誌が牽引したモンドカルチャーは割と好きなのだけど。と言うか、それらをより知るためにこう言う昭和サブカルを漁っている面はある。

なので、今後も定期的の漁ってはやっぱ面白くないなを繰り返すと思う。そんな実感を改めて得た日でした。

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