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記事95:日本語ラップ100選⑥

「どのぐらいのPCスキルある人ならいいですか?」
「女子高生ぐらいですね」

業務を手伝う人を出してほしいという取引先の担当者との、嘘のような本当のやり取り。レベル感が伝わらないけど面白いから良し。

「女子高生って、たぶんスマホ打つのはめっちゃ速いけどPCはそんなでもないですよね」
「はい、そのぐらいでいいですよ」

51. OMSB『Think Good』
この人も人種の壁と闘い続けている。トラックメイクのクオリティに目がいきがちだけど声も唯一無二で、細かく韻を踏んでいくスタイルがビートのケツにばっちりハマったときのCOOLさは抜群だ。COOLさって。B.I.G. JOEと野崎りこんを同じ曲にぶち込んでしまう人脈の広さは意外でもあった。

52. THE OTOGIBANASHI'S『TOY BOX』
タイトル通り、楽しいものが色々飛び出てくる。自由に動き回っているようで、BIMがちゃんと指揮をとっている。リリース時の年齢からしても完成度高すぎてオジさんびっくりしたよ。2ndからはMCの一人であるPalBedStockが息を潜めてしまったけど、彼の得体の知れなさ(素顔も知れない)はグループの雰囲気づくりに不可欠だと思うので戻ってこないかなぁ。3人でポストPSG狙えるところにいる。

53. OZROSAURUS『ROLLIN' 045』
ハマの大怪獣、爆誕。横浜の地には西海岸の匂いがよく似合う。みんな大好きなヒップホップアンセムが満載で、1stフルアルバムだけど、客演にM.O.S.A.D.、MAGUMA MC'S、TWIGY参加と皆が期待していたことが伝わってくる。M-3『WHOOO』みたいな歌心をちらっと見せるスタイル、今はやらなくなったけど好みだ。M-5『AREA AREA』はいつ聴いてもおしっこちびるほどカッコいい。

54. PSG『David』
発売時、周囲のヒップホップ友達から「これ好きそう」と700回は言われた。たしかに好きだけどその期待に応えられるほどには好きではないというのが本音…
何故だろうと考えてみたときに、おそらく「韻を踏まなさすぎる」からだとの結論に至った。3MCなら1人はもう少し韻固めの人が欲しかった。好きだけど。

55. PUNPEE『MODERN TIMES』
PSGのアルバムからだいぶ経ったし、PUNPEEのスタイルも充分理解したつもりなので、このアルバムは韻どうこうに関係なく楽しめた。2017年の日本語ラップの話題は全部このアルバムが攫っていった。
発売前に発表された曲名を見て、客演無しかーと思ってたところに実は表記してないだけで客演たっぷりという演出が憎い。

56. Q-ILL『東京AVANT GARDE』
血を吐きたくなるぐらいオシャレだ。これで町田レペゼンというギャップもいい。M-4『RHYME WIRE feat. タカツキ & Hisomi-TNP』そりゃその客演の人選しかないでしょうな!王道のヒップホップからしたら、もしかしたらはみ出し者かもしれない。それでも「こうやって進んできた」と胸を張って言える。どうしようもなくヒップホップだ。2005年時点でSD JUNKSTAをフックアップしていて、若き日のNORIKIYO、TKC、BRON-Kのラップが聴けるところも好き。

57. QN『New Country』
少しおかしくなってしまう前の、たしかOMSBと揉め始める直前の頃のQNのアルバム。若さのわりには余裕がすごい。あと神奈川のヒップホップって幅の広さがすごい。と思っていたのを覚えている。客演には自身のクルーSIMI LABの面々以外にRAU DEFや田我流を揃えていて、間違いなくスター候補の一人だった。ハタから見てる以上に色々あったと思うんだけど、確かな力があるから周囲のサポートも絶えない。まだまだこれから。

58. RAU DEF『ESCALATE』
ディディディフィーズィー!って言いたい。このアルバムで本格的にデビューだったわけだけど、「これまたすげぇのが出てきたな」と。PUNPEEが惚れ込むのもわかる。全体で40分弱という、するっと聴けるサイズなのも相まって、常にポケットに入れておきたいようなアルバム。PUNPEE『MODERN TIMES』の制作期間に、呼ばれてもないのにスタジオに訪問して客演のバースを入れたという、RAU DEFのキャラがよく表れたエピソードが好きだ。

59. RHYMESTER『グレイゾーン』
本当の日本語ラップファンなら『リスペクト』を選ばなきゃいけないんだろう?たしかにあれは名盤中の名盤だ。でもこの「ワルにもポップにもなりきれない自分たち」を自虐たっぷりで封じ込めたアルバムの方が断然RHYMESTERらしいと思うのだ。当時のインタビューで「客演が無い代わりに、DJ JINにラップさせたりカタコトの外国人風にラップしたりした」というようなことを言っていた。この人たち、努力型のアホだなと思った。

60. RHYMESTER『Bitter, Sweet & Beautiful』
本当の日本語ラップファンなら『リスペクト』を選ばなきゃいけないんだろう?たしかにあれは名盤中の名盤だ。でもこの「だいぶキャリアを重ねてきたけど、音楽って何か、人生って何か全然分からない」感じのアルバムの方が断然RHYMESTERらしいと思うのだ。トータルプロデュースにPUNPEEを迎え、全編通じてシリアスな雰囲気でまとまっている。人生って大変だよね。でもいいよ、今日は寝よう。そして明日になったらまたマイクを握ろう。という力の抜けた終わり方が勇気をくれる。

気付いたら100枚紹介、折り返していた。思ったより書くの楽しい。ヒップホップ楽しい。

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