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キナリ読書フェス 受賞作品の発表

2020年11月22日〜23日の期間、「キナリ読書フェス」を開催しました!

応募いただいた読書感想文の総数は268件!読書を楽しんでくださった皆さん、ありがとうございました。

なかでも特におもしろく、本への愛にあふれていた読書感想文を讃えます!

※受賞者の皆さんへ※
12月31日までに、noteの機能(ヘッダー最下部に表示)「クリエイターへのお問い合わせ」機能を使い、賞金や賞品の送付先を確認するご連絡を事務局から行います。noteに登録しているメールアドレスが最新のものか、ご確認ください。12月31日までに連絡が届かない場合は、事務局までご連絡ください。


「銀河鉄道の夜」受賞作品(3作)

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/最優秀賞 グミが好き さん

審査員・宮沢賢治記念館 牛崎敏哉コメント
賢治さんの無限の想像力にたどり着いた読書感想文で、心にしみた。ご承知のように「銀河鉄道の夜」は未完の作品。10年間も書いては直しを繰り返し、結局自分の死によって中断する。1枚の原稿用紙上に3回の書き直しがあり、4つの物語が進行し、原稿の読み取りや並びの検討で全集出版の度に見直され、作品が変わっていく。まるで生きているようなのだ。賢治さんが長生きしていればどこまでも書き直しが続けられたわけで、もがいたことを感想にしていただき、感謝である。

審査員・岸田奈美コメント
「カムパネルラのような終え方をしたかった」の一行からグッと引き込まれました。カムパネルラとご自身の過去の対比には痛みを伴いつつも、もがき、自分自身を励まし、想像力を手に入れて希望へ向かっていく様子が、銀河鉄道が美しい夜空へ走っていく作中の景色と重なりました。共感を呼び起こす丁寧な描写だからこそ、希望を持つきっかけになった本を読みたい、という人が多いと思います。


/優秀賞 音 / Oto さん

審査員・岸田奈美コメント
「銀河鉄道の夜、いいのはわかるけど、具体的になにがいいのか説明できねえわかんねえ」とつらみが強い人に、「こんな見方もあるんやで」と楽しみ方を教えてくれる内容でした。アニメ版や、ご自身の作品も例にあげていて、おもしろいし、わかりやすい。こういう読書感想文、原稿用紙じゃできないから、ネットならではの良さですよね。


/好書好日賞 Green beansさん

ライフ&カルチャーを貪欲に楽しみたい人におくる、人生を豊かにする本の情報サイト「好書好日」の協力のもと、設立した賞です。

審査員・野波健祐コメント
『銀河鉄道の夜』って「わからない」ですよね。そこから入る感想文が多かったのですが、わかるところを深掘りしていく文章と、わからないなりに「謎解き」よろしく解釈をつむぎ出す文章に分かれました。そのなかで後者の文章から。「わからない」自分の体験談から、「わからなさ」を掘り下げながら、「わかる」寸前までの断章が連なっていきます。少々長いのですが、それだけに、本と対話する愉悦感がこちらにも伝わってきます。タイトル通り「読書の旅」を堪能している文章だと思います。

惜しくも好書好日賞を逃しましたが、次点だった佳作も紹介します。

星の幸(ほしのさいわい)| #キナリ読書フェス (『銀河鉄道の夜』感想文) / カラエ智春さん

銀河鉄道の夜と、ももクロと、宇宙 / わいざん(横山文洋)



「さくら」受賞作品(4作)

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/最優秀賞 Y U K O さん

審査員・岸田奈美コメント
最初は機嫌よく相手を思いやろうとしても、ちょっとずつ疲れていって、優しくなれず、そんな自分に嫌気がさす。これ、ほんと誰もが経験してる日常の悩みなんだと思います。そういう悩みと、さくらからもらったメッセージを結びつけ、足取りが軽やかになるまでの感想と体験談を混ぜて書いてくださったのは、これから読もうかなと思う人たちにとっての救いにもなると思いました。


/優秀賞 北村有 Kitamura_yu さん

審査員岸田奈美コメント
これは読んでいて、ニヤニヤしてしまう、愛にあふれた文章。素敵な文章のなかで自然に本が紹介されていると、それだけで読んでしまいたくなるのですが、このニヤニヤをもっと楽しみたくて、さくらを手に取ってくれる人がいるんじゃないかな。犬の声って、愛を通して、聞こえるんですよね。


/優秀賞 とらみな(寅三奈) さん

審査員・岸田奈美コメント
「さくら」と「ボーリング調査」、全然結びつきそうにない二つがていねいな読後感の描写で結びついていて、世界観が出ています。メロディーのところの小ネタも、作品をもっと楽しめるちょっとしたおまけになっていて、こういうのを読んだあとに調べて、後に続く人たちのために残しているのって、読書体験のおすそわけって感じで素敵。


/好書好日賞 あ さん

ライフ&カルチャーを貪欲に楽しみたい人におくる、人生を豊かにする本の情報サイト「好書好日」の協力のもと、設立した賞です。

審査員・野波健祐コメント
名セリフ・名シーンだらけの『さくら』。この作品の魅力を伝える際、ともすれば、あれもこれも書きたくなってしまいます。読書感想文に限った話しではないのですが、全体を総花的に書くよりも、1~2点に絞って書いた方が文章は力を持ちます。受賞作は、小説のなかでも屈指の名セリフを引用し、「噓」と「家族」について、自らの体験を交えながら思いをめぐらせています。別途感想文を書かれているようですが、これだけで十分に作品の魅力と読み手の思いが伝わってきます。

惜しくも好書好日賞を逃しましたが、次点だった佳作も紹介します。

『さくら』は「贈与」の失敗と再生の物語 / のーどみたかひろさん 

つむじ風のような女の子と、某鬼狩りの男の子に想いを馳せてしまった話ーー『さくら』を読んで / 只熊(ただくま)さん


「くまの子ウーフ」受賞作品(3作)

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/最優秀賞 石原智子 さん

審査員・松永緑コメント
感想文であると同時に、もう一つの「くまの子ウーフ」の物語でした。智子さんが主人公で、夫さん、娘さん、息子さんが個性豊かな登場人物。ご家族で「ウーフはおしっこでできてるか??」を読み合う中で、智子さんが考えて発見して変化していく姿に、わくわくさせられ、深く共感! 爽快で幸福な読後感です。


/優秀賞 ななまん さん

審査員・松永緑コメント
これぞ大人が児童書を読む醍醐味! 大人の読解力と観察力、経験値を持って読むと、作品世界のこんなに奥深く、すみずみまで辿り着くことができるのですね。自分の中のウーフが元気だなんて、それから、ウーフのお父さんと呑みに行ってみたいなんて素敵なこと、大人のななまんさんじゃないと考えつかないさ!(ウーフ風に)


優秀賞/ばたこ さん

審査員・松永緑コメント
期せずして『くまの子ウーフ』を必要としている絶妙なタイミングで出会ってしまった、ばたこさん。率直に綴られた文章から、物語のエッセンスを身体中で受けとめている姿が痛いほど伝わってきました。折々にぜひ再読なさってください。ウーフはきっと、ばたこさんに様々な表情や景色を見せてくれるはずです。


「世界は贈与でできている 資本主義社会の『すきま』を埋める倫理学」受賞作品(6作)

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※当初、著者の近内悠太さんが審査する予定はありませんでしたが「こんなに楽しいことはない」と、座談会イベントにも審査にも全力で飛び入り参加してくださり、なんと著者特別賞も3枠爆増しました。贈与を地でいく人。

/最優秀賞 Natsumi さん

審査員・岸田奈美コメント
「逃げることを覚え、孤独を引き受ける」「返礼の疲弊をし、受取りの拒否をする」繊細な感情や体験に基づいた、自分の変化を辛くとも丁寧に書き、贈与を知って自分自身を励ましていく文章は、まさにインターネットの海で誰かに届くことを祈る贈与の体現です。前半が重く苦しかったのに、最後は、ワクワクするから読んでみなよって、素直に明るくみんなに語りかけているのも、いいなあと思いました。


/優秀賞 ゆりおさん

審査員・岸田奈美コメント
応募作のなかでも群を抜いて妙ちきりんで、読書感想文とは思えないテーマだったから、思わず「これどうなるんだ」とハラハラしながら読んでました。ブリのピチピチした思い出とともに、本から学んだ贈与についてをあてはめていき、最後にぱっと理解するという、落語のような楽しさ。


/優秀賞 ビッグサン(おおやまゆういち)さん

審査員・岸田奈美コメント
近内さんが特に、優秀賞はこれだ!と選んでくださった作品。本では、サンタクロース、認知症の母、孫の顔がみたい両親など、とりわけ親の贈与についてわかりやすく例を挙げられていましたが、それをまさに実践している、読書感想文ならぬ読書実践文だなあと思いました。最後の写真の謎の無愛想さも好きです。


/著者特別賞  西智弘(Tomohiro Nishi)さん・shun吉さん・ソフィー Mikako Yoneda さん


「家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった」受賞作品(3作)

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/最優秀賞 浜田 綾 さん

審査員・岸田奈美コメント
わたしが本の感想で一番幸せだなと思ったのは、褒めてもらえることより、分析してもらえることより、わたしが一人ぼっちでひねり出した気づきを、だれかの人生をいい感じにする材料に使ってもらった時です。お父さんとの思い出を感想文という言葉にして、浜田さんの中で大切に醸成させていく過程で、本のどの言葉が役立っているか、知らない人にも伝わるように愛をもっておすそわけするように書いてくださって、本当にありがとうございます。
あと、これがあったから受賞というわけではないんですけど、本になる前のわたしの活動もわかりやすく紹介してくださって、ああずっと応援してくださってるんだなと、すっごく嬉しかったです。


/優秀賞 寺田御子さん

審査員・岸田奈美コメント
文字数と密度の、熱量が本当にすごくて、圧倒されました。ただわたしの本の紹介で終わるのではなく、わたしが捉えた家族のありかたを、ご自分のご家族との関係性にもはてはめてくれ考えてくださっているのですが、特にお弁当の話は、うるうるきました。どうやったらこんなにいろんなエピソードを、本を引用しながらキレイに書けるんだろうなと思ってたら、最後のメモ、泣きそうになりました。


/優秀賞 ゆーみるしー さん

審査員・岸田奈美コメント
「読む本を間違えた」から入る読書感想文、たぶんいまだかつて無いと思うんですよね。だけどすぐにいい意味だってわかって、おもしろい書きぶりに夢中になりました。そして、なぜかちょくちょくリアルタイムで出てくる女子高生の行動も、全然関係ないのに、軽妙なリズムを作っていて、どんどん読みたくなります。なんと不思議な……。チャールズ・M・シュルツ、新しい知識も得られました。


「キナリフェス」総評メッセージ

主催者 岸田奈美
いわゆるオーソドックスな、小学校や中学校の読書感想文ではなく、「書いてる人を好きになっちゃうような独創性があるか」「読んでいておもしろいか」「すすすーっと読みやすいか」など、新しい観点で受賞作を選びました。たぶんこれからはそういう文章が、インターネットを楽しくさわがせて、いい本も広めてくれると思うからです。みんなで本を読み、みんなで書くことができ、本当に楽しかったです。参加してくださった方、協力してくださった方、ありがとうございました!


好書好日 編集長 野波健祐
開幕早々、岸田さんにのせられて(?)、こんなことを話しました。「書評やレビューは本が主役、読書感想文は本を読んだあなたが主役。書評はある程度、善し悪しに点数をつけられるけど、読書感想文にはそもそも点数はつけられない」。いざ選考になったとき、後悔しきりでした(笑)。どうやって選ぶんだ、自分。で、結論をいえば、私が読んでいて面白い文章を選びました(「面白い」がまた難しいのですが)。正直私の好みでしかないので、選ばれなかった方も気にしないでください。試験などとは異なり、義務で書いた文章ではないので、ある程度フォーマルで、それでいてフリーダムな文章が並んでいて、読んでいて楽しかったです。読書感想文を寄せていただいたみなさん、岸田さん、お疲れさまでした。またやりたいですね。


ポプラ社 編集 松永緑
岸田奈美さんに誘われて、ウーフと一緒にお祭りに出かけ、素敵な人たちに拍手をおくり歓声をあげ会場を駆け回ってきた気分です!「童話を読んでいて、ふっと呼吸が楽になり、周りの世界をゆったりと新しい目で眺めている自分に気づくことがあります」と、かつて神沢利子さんは語りました。キナリ読書フェスに『くまの子ウーフ』の感想文を寄せた皆様から、同じ思いを感じています。子どもの本を本気で読んだ大人の感想文は、その人の素顔と本音、今とこれまでの時間が織り込まれ、味わい深い作品ばかりでした。岸田さん、皆様、ありがとうございました!


「世界は贈与でできている」著者 近内悠太
優れたテキストを読むと僕らは癒される。
その本が「あなたは何も間違っていないよ」と教えてくれる。だから「自分宛の本」を見つけることは素敵なことなのです。
ですが、それは根源的な「救い」ではありません。
あなたが、あなた自身を救わなければならない。
あなた自身と戦わなければならない。
だから、僕らは文章を書くんだと思います。
忘れていたものを思い出し、見落としていたものに気付くために。
<私>と出会い直し、そして、生きるために。
みなさんが書いてくださった読書感想文を読みながら、僕らが文章を書く理由がまた少し分かったような気がしました。


宮沢賢治記念館 牛崎敏哉
「見えない感染の恐怖」が蔓延する日常で、キナリ読書フェスの課題図書に岸田奈美さんが「銀河鉄道の夜」を選んでくれたのは幸いでした。米津玄師さんがコロナ禍の今だからこそ、あえて「カムパネルラ」という楽曲を発表したことと重なりました。皆で同じ本を読んで皆で一緒に感想を書くなどということは賢治さんも最も好きなイベントだからです。
ちょうどお笑いコントユニット-ラーメンズの舞台映像を見直していて、公演「TEXT」(2007)のコント「銀河鉄道の夜のような夜」を見た後に、奈美さんから読書フェス感想文が届いていたことに気がつきました。ラーメンズのコントは確かに作品に向き合いつつも、しっかり笑いになっています。あんな死と絶望の悲しい物語がお笑いなのです。届いた感想文の中に想像力にたどり着いた内容があり、心にしみました。



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週末にグループホームから帰ってくる弟や、ばあちゃんと美味しいものを食べます。中華料理が好きです。