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自分の「好き」を言葉にして、ポジティブなエネルギーを届ける。書道家・武田双雲さん #noteクリエイターファイル

noteで活躍するクリエイターを紹介する #noteクリエイターファイル 。今回は、書道家であり、近年は現代アーティストとしても活躍する武田双雲さんの登場です。

日本を代表する書道家、武田双雲さん。20年続いた書道教室には300人の門下生が通い、NHK大河ドラマ「天地人」や世界遺産「平泉」などの題字を手がけ、世界各国で書道パフォーマンスを披露。現代アーティストとしても大規模な個展を開催したばかり。国や分野、肩書きを超えて活躍しています。

30万部を超える『ポジティブの教科書』をはじめ著作は50冊以上。ブログやTwitter、InstagramほかSNSでも、創作の根底にある思想や哲学などを積極的に発信をしています。

noteでは、10分の音声で「幸せでたまらないままの成功法則」を伝授する有料マガジンを配信中です。

目の前で泣いて喜んでくれる人がいる感動から書道家へ

言わずと知れた“書道家・武田双雲”のはじまりは、新卒で入社したNTT。

「なんでもクリエイティブに楽しんじゃうタイプ」だという双雲さんは新人時代、電話を受けてメモを残す仕事を“面白く”するため、デスクで硯をすって、筆を取ります。同じ部署の上司や同僚からは冷ややかな目で見られていたというその斬新な行為は、社内で話題に。

「営業部のお姉さんたちが10人くらい、自分の名前を書いてほしいとやって来て、プチ筆文字ブームが起きたんです。超嬉しくて。僕、多動性症候群という特性を持って生まれて、空気が読めない子どもだったので、その時まで親以外に褒めらたことがほとんどなかったんですよ。怒られてばっかり。

そんな僕が筆で名前を書いたら、ある女性が泣いて喜んでくれたんです。“なんで泣くんですか?”って聞いたら、“それまで自分の名前が嫌いだったけど、好きになりそう”だと。あまりの衝撃に、全身鳥肌が立って、その場で辞表を書きました」

辞表はすぐには受け取ってもらえず、なんども上司に掛け合い、本社の人事部まで出向きます。その間、「辞めるからには会社に貢献したい」という気持ちが高まり、営業成績はなんと10倍に。6回の引き止め面接を受けながら、約半年をかけて独立。それでも、「会社をやめて書道家として独立しよう」と意を決したわけでもなければ、迷いも不安もなかったと言います。

「僕にはそもそもサラリーマン、書道家、といったカテゴリーの区別がなくて。NTTに勤めていた時も所属意識はなかったし、今でも自分のことを書道家だと思ったことはないんです。

目の前で女性が喜んで泣いてくれた日、興奮して、HTMLを書いて自分の書道家としてのホームページを作りました。Yahoo!で名刺の市場規模を検索したら想像以上に大きかったので。みんなが持っている名刺はどれも同じ書体だから、筆文字にしたら個性が立つし、ビジネスになると思ったんです。

でもそれ以上に、僕が名前を筆文字にすることで、喜んでくれる人、笑顔や涙が見えちゃったので、もう止められない。夢中でした」

アートの時代、書道もITも豊かな感性を育むためのツール

東京理科大学理工学部を卒業後、NTTに就職したのち、書道家へ転身。精神と身体を使って全身全霊、筆で書を描きながら、最先端のITツールを使いこなす。書道とIT、アナログとデジタル。双雲さんの活動は、一見相反するようなものが融合しています。

「産業革命が起きて、写真が出てきたときに「絵画は終わった」と言われたけれど、ゴッホやルノアールの絵は今でも価値が高い。同じようにIT革命が加速したとしても、書道文化が終わりを迎えるわけではないんですよね。便利になればなるほど、人は無駄を求めるというか、めんどくさくても愛着のあるものを選ぶと思うので。それらは敵対するものでも価値を奪い合うものでもない。

それに僕にとっては、書道もITも同じ単なるツール。書道だって、インターネットだって、愛情を増幅することも、怒りを増幅することも、誰かを貶めることにも使えます。誰がどんな気持ちで使うかが大事」

書道で作品をつくるときも、SNSで発信するときも、双雲さんの根底にあるのは“アーティステックな感性”だと言います。

「書を描くからアーティストなのではなくて。言葉にするとスピリチュアルだけど、アーティストって、人類以外のあらゆるレイヤーの万象や波動のチャンネルとつながる状態をつくれる人だと思うんです。

物質的に満たされてIT化が進んでいくと、孤独感や虚しさが募って、人々は心の拠り所を求めます。だからこれからは、アートの時代になる。人の心を豊かにするものが価値を持ち、起業家もサラリーマンもあらゆる人にアーティスティックな感性が必要になる。実際に、僕のアトリエには、一流の経営者たちが多く訪れています。経営学や心理学だけでなく、日本文化を学び、豊かな感性を育む必要性を感じているから」

熱量高い言葉を、生のまま音声noteで配信

20年以上ブログを続け、あらゆるSNSを使って言葉を伝える双雲さんがnoteを始めたのは2019年1月。月額1000円の有料マガジンで10分の音声を配信しています。

「僕は科学オタクで、伝えたがりや。ミクロとマクロの視点で世界に対する異常な感動をどうにかして伝えたいというお節介が止められない。

アートもそうだけど僕は、自分の中に湧き上がってきたものを即興で、生々しいまま届けたい。その場で決まる曖昧性が好きなんです。だから、クオリティよりもエネルギーを大事にして、勢いで、スマホで10分間しゃべり続けてnoteにアップしています。

僕にとって、アートもnoteもやっていることは同じ感覚。自分の中でめちゃくちゃ熱いものを熱いうちに届ける。IT革命もnoteも、自分のためにあるんじゃないかと思うくらい、感謝しかないです」

音声noteで配信する内容は「幸せと成功」を両立するためのビジョンの描き方やマインドセットの方法など。

「僕は、家族や友人との関係が良好で感謝にあふれる豊かな暮らしをしながら、社会に貢献していくメソッドを研究しています。社会的に有名でお金も稼ぐ成功者は、家族との関係性など幸福度が低いケースが多い。だからこそ、その両方を満たして生きるコツを世界中の人に伝えたいんです」

伝える場所としてnoteを選んだのは、課金システムに可能性を感じているから。

「課金システムはアーティストにとって新しい収入源になります。お金は感動を伝え合えるツール。作品や言葉に触れて、その場で気軽にクリエイターに感謝の気持ちを目に見えるかたちで伝えられる。アーティストやクリエイターにとっては大きなチャンスです。その可能性を試したかったので、noteで有料マガジンを始めました」

言葉の力を信じて、ポジティブな「情」を報せる

コンテンツを配信するときに大事にしているのは、唯一無二のオリジナリティと誰かの役に立つこと。

「厳しい言い方をすると、これから決済システムが発展しても、コンテンツが面白くなければお金にはならない。自分の”変態性”を突き詰めて、圧倒的なオンリーワンのホワイトオーシャンを見つけられると強いですよ。

それから、人の役に立たないものは淘汰されていく事実もある。アーティストは自分を表現すればいいと思われがちだけど、そうじゃない。これまで数多くのクリエイターに会ってきましたが、トップに立つ人ほど、目の前の人がどうすれば喜ぶかをめちゃくちゃ考えています」

ブログの発信がもとになった『ポジティブの教科書』が30万部を超えたのも、オリジナリティがあって人の役に立つことができたからだと、推測します。

「ポジティブと言っても、ネガティブな感情を否定して精神論で「前向きにがんばろうよ」というのは違う。僕はネガティブな感情が生まれても、自分を責めたり否定したりはしない。僕の中には、「そうだよねえ」って“人間だもの”的な思考で俯瞰して受け止めてくれるやつがいるんです」

言葉もパフォーマンスもあり方もポジティブな双雲さんですが、発信を怖いと思うこともあるそう。

「世間体やインターネットは怖いですよ。怖がりなので、顔の見えない人から批判されたり攻撃されたりするのは避けたい。だから、誰かの行動や思想を否定しないで肯定しかしない、ポジティブな発信をしています」

双雲さんは創作でも発信でも、言葉の力を信じています。

「人間の好き嫌いって超曖昧。同じ好奇心とエネルギーから生まれる感情なので、変換可能なんです。嫌いなものも、毎日好きだと思って慈しんだら好きになる。実際に僕のワークショップで、日常の嫌いな家事に対する前向きな言葉を書いて部屋に飾ったら、好きになったという結果も出ています。"言霊"ですね。

だからnoteには自分の好きなことを書くのが一番いいですよ。情報って「情を報せる」と書く通り、人間の感情のキャッチボールなんですよね。煽りや怒りなどネガティブな感情に人は集まりがちだからこそ、好きや楽しい、ポジティブな感情を伝えています」

そんな双雲さんは、noteから「スキ♡」という報せが届くのが嬉しいから、あえてスマホの通知をONにしているそう。

自分が熱くなれる「好き」を言葉にして「スキ」を集める。それがポジティブなエネルギーにあふれる双雲さんのシンプルなnoteの使い方。

■クリエイターファイル
武田双雲

書道家、現代アーティスト。1975年、熊本県生まれ。東京理科大学理工学部卒業。3歳より書家である母・武田双葉に師事し、書の道を歩む。大学卒業後、NTT入社。約3年間の勤務を経て書道家として独立。音楽家、彫刻家などさまざまなアーティストとのコラボレーション、 斬新な個展など、独自の創作活動で注目を集める。
note:@takedasouun
Twitter:@souuntakeda

text by 徳 瑠里香


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