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#noteクリエイターファイル 料理家・樋口直哉(TravelingFoodLab.)さん

noteで活躍するクリエイターを紹介する「#noteクリエイターファイル」。

今回は、6月からcakesでの連載「『おいしい』をつくる料理の新常識」がスタートした料理家・樋口直哉(TravelingFoodLab.) さんを紹介します。

作家として小説を発表し続ける一方、フランス料理の出張料理人としても活躍する樋口さん。noteでは、料理家として、身近すぎて考えもしなかったシンプルなレシピ(スイカの切り方のコツ)から、素人には絶対に真似できないプロの技(究極のマッシュポテトのレシピ)、なかなか情報が手に入らないニッチな分野(恒温調理入門)まで、さまざまな角度で旬なレシピを伝え、私たちを楽しませてくれています。

noteをはじめたきっかけと選んだ理由

樋口さんがnoteをはじめたのは2017年11月。もともと料理に関する連載をしていた服部栄養専門学校が運営するWEBサイトが閉鎖することになり、継続的にアウトプットできる場所を探していたところ、noteに出会ったそう。

noteを選んだ理由は、ゴシック体で、写真をリサイズしてくれること。普段明朝体で小説を書いている樋口さんにとって、脳が切り替わる「ゴシック体」というフォントはポイントが高い。料理コンテンツには欠かせない写真がアップロードしやすいことも含め、使いやすさがnoteの魅力のひとつだと樋口さんは言います。

「そして何より、noteには自分と同じ興味を持っている人がいる、という前提がある。自分の記事が誰かに発見される喜びは大きいですね。コメントをくれる方や投げ銭をしてくれる方がいることも、記事を書き続ける励みになります」

noteをはじめて以来、樋口さんは平日はほぼ毎日、魅力的な料理コンテンツをアップし続けています。

魅力的なコンテンツのつくり方

では、樋口さんはどんな流れで、どんなことを意識してnoteを更新しているのでしょう。

「記事は日曜日に一気に書いてますが、写真は空いている時間に都度、撮ってます。写真の撮り方は仕事柄、普段、プロのカメラマンに料理の写真を撮ってもらうことが多いので、その際に撮り方のコツを聞いたりしながら、徐々に覚えていきました。最近はストロボを導入したんですが、その効果は大きいですね」

テーマを選ぶポイントはまず、旬な食材を使うこと。たとえば、夏のはじまりには枝豆の茹で方ガスパチョ、といったように。そら豆の茹で方などレシピ本にはなかなか載らない基本的なレシピも積極的に公開するようにしている。

「シンプルすぎて商品化はできないけれど、実はみんなが知りたい情報という点を意識して、テーマを選んでいます」

そのほかnoteを更新するうえで意識をしているのは、クオリティにこだわらないことと、役立つ情報を載せること。

樋口さんは、テキストをnoteに直接書き込み、基本的には読み返さない。作家という職業上、文章にこだわり出せばきりがない。料理でたとえるならnoteは、握ってすぐ出す“お寿司”。

noteでは文章や写真のクオリティよりも、そのバランスを意識する。文章は、余計な主張やインフォメーションは入れず、単刀直入に書く。届けたいのは「俺のやり方」ではなく、「みんなに役立つレシピ」だから。

「料理界はいまだに“シェフが、カラスが白いと言ったら白い”という世界です。料理をしていると『これって本当なのか?』と思う慣習もしばしばありました。『自分が疑問に思っていることは誰かも疑問に思っているんじゃないか』という前提のもと、仮設を立てて、調べるか、検証する。それが僕のnoteの記事の作り方です」

究極のマッシュポテトのレシピ」より

一番大事なことは、自分のために書くこと

樋口さんにとってnoteは、アウトプットを通じて、インプットをする場所。アウトプットを意識すると、文献を読んだり取材をしたり、インプットの量が増える。書くことで頭のなかも整理される。読者がいることを前提としながらも、「noteは自分のために書いている」と樋口さんは言います。自分の飽きないやり方で、自分のために書くこと。それがnoteを書き続けるコツだ、と。

「読者に役立つコンテンツをベースにしながらも、三ツ星レストランでの調理法(アスパラガスの垂直ローストの作り方)など『どうかしてる』と思われるような、再現が難しく役に立たないものや、所有する人が少ない恒温調理器を使ったレシピなどを時に混ぜることで、僕自身が飽きないんですよ。週5ペースで更新をしていたら、なかには読まれるものも読まれないものもあります。そういう読者の反応は気にしすぎず、自分のために書く。それが一番大事だと思っています」

自分のために書く。その姿勢は、樋口さんが取材を通して出会った、ある職人の仕事ぶりから学んだそう。

「セイロや裏ごし器をつくる曲げ師という職人を取材した時の事なんですが、倉庫に行くと職人さんがつくった製品が真っ直ぐ積んであるんですよ。職人さんが言うには『これが少しでも傾いたら俺は職人をやめる」と。それを聞いたとき、かっこいいなーと思ったんですよ。自分のなかで基準をつくって、それをどこまで守れるか。自分もこういう風に仕事がしたいな、と。社会や他人のルールに当てはめていくと、仕事が面白くなくなり、作業になってしまうじゃないですか。面白い仕事をするんじゃなくて、面白く仕事をする。僕にとって、noteはそれができる場所なんです」

■ クリエイタープロフィール
樋口直哉/作家、料理家 1981年生まれ 服部栄養専門学校卒業  2005年『さよなら アメリカ』で第48回群像新人文学賞を受賞しデビュー。他の著書に小説『スープの国のお姫様』(小学館)、ノンフィクション『おいしいものには理由がある』(角川書店)などがある。
Cakes連載:https://cakes.mu/series/4115
noteアカウント:https://note.mu/travelingfoodlab


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