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心地よいタイムラインはあえてつくらない。クリエイターのバリューを最大化させるnoteディレクターの、感性の育み方

noteで創作をはじめたことをきっかけに、メディアに作品が掲載されたり、書籍化が実現したり、あたらしいキャリアを切り拓いたりと、活躍の場を広げるクリエイターの方々がいます。その背景にいるのがnoteディレクターです。

noteディレクターはクリエイターが活躍するためのサポートをするひと。クリエイターが創作を続けられるように伴走します。

今回の#noteのみんなでは、2019年11月にはじまった「文藝春秋digital」も担当している、noteディレクターの志村さんにお話をききました。

「芥川賞作品がnoteから輩出される未来を見たいんです」

そう語る志村さんが見据えるクリエイターの可能性と、noteディレクターのあり方にせまります。

志村 優衣(しむら ゆい)
note:@shim_shim/Twitter:@yui_shim2
noteディレクター。新卒で通信会社に入社し、法人営業とSEを経験。その後、書店員、編集者を経て、2019年4月にピースオブケイクに入社。個人・法人のnoteクリエイターのサポート、各種イベントの企画・運営、出版社や編集プロダクションなど各種パートナー企業との協業などを担当する。

芥川賞作品がnoteから輩出される未来を見たい

ーー志村さんはnoteディレクターとして、『文藝春秋digital』の立ち上げに携わっていますよね。

『文藝春秋』がnoteで発信をはじめると聞いたとき、私が担当したいと思った理由があります。私、芥川賞作品がnoteから輩出される未来を見たいんです

今だと大きな文学賞では、まず『文學界』や『新潮』などの文芸誌で作品が発表されて、その中から受賞作品が選ばれますよね。でも、そのならびにnoteがあってもいいじゃないですか。賞の選考委員の方がnoteから作品を発掘する未来を見たい。

そんな可能性があれば、noteのクリエイターにとって創作を続けるモチベーションになるし、とてもすばらしいクリエイターの出口のひとつになると思います。芥川賞受賞作を掲載している『文藝春秋』がnoteという街に加わることで、未来が近づきそうな気がする。

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芥川賞はひとつの例ですが、noteディレクターとしてクリエイターの活躍につながるさまざまな出口をつくりたいので、『文藝春秋digital』をnoteという街につくるお手伝いができたのはとても印象深い仕事でした。

『文藝春秋digital』では本誌の記事配信だけでなく、noteのクリエイターとのコラボ企画もつくっています。クリエイターによる記事の感想やコラムや小説をハッシュタグ「#みんなの文藝春秋」で募集してひとつのマガジンをつくったり、本誌での掲載が特典となる投稿コンテストを開催したり。文藝春秋にとってもnoteのクリエイターにとっても、創作の幅を広げる機会になっているはずです。

『文藝春秋』1月号では巻頭随筆という歴史あるコーナーに、noteで活躍する岸田奈美さんが寄稿しました。これも、クリエイターの出口のひとつですね。

noteでは個人も法人もみんな等しくクリエイター

ーー『文藝春秋digital』ができたことで、あたらしいクリエイターの出口が生まれた。重要なnoteディレクターの役割ですね。

はい。さまざまな出口をつくってクリエイターの活躍の場を広げ、クリエイターが創作を続けられるようにするのがnoteディレクターの仕事です。

そして、たいせつなのは、noteにとって『文藝春秋digital』もクリエイターのひとりだということ。個人であれ法人であれ、noteの街で創作するひとたちはみんなクリエイター。だから、私には『文藝春秋digital』をクリエイターとしてサポートするという役割もあります。

たとえば、紙媒体で愛されてきた記事がそのままウェブでも読まれるとは限りません。そのため、『文藝春秋digital』にはウェブ上で記事に興味をもってもらい、読んでもらうための工夫が必要です。

写真を多めにしたり、タイトルや見出しを具体的でわかりやすいものにしたり、各記事の要約を冒頭に載せたり。紙とデジタルの違いを踏まえてアドバイスをしています。

noteディレクターはクリエイターのバリューを最大化させる

ーーあらためて、noteディレクターの仕事について教えてください。

noteディレクターのミッションはクリエイターのバリューを最大化することです。クリエイター一人ひとり、バリューを最大化する方法は違います。noteで書いた記事の書籍化や映像化、ほかにもnote以外の場を提案することがあってもいい。オンラインサロンをやってみては?とか。さまざまな出口をディレクターが知っておいて、個々のクリエイターに向き合います。

CEOの加藤さんがいつも言っているのは、クリエイターがこうなりたいという希望をもっていたとしても、本当にそれが彼らのバリューを最大化するかどうかはnoteディレクターも考えないといけないということ。彼らが思いつかなかった活躍のかたちを私たちが提案できるかもしれない。そのために思考を深める必要がある。世の中が求めることや社会の課題と、クリエイターの価値、双方の共通項を見つけて架け橋をつくるのがnoteディレクターの仕事だよと言われています。

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ーーどのようなスキルがディレクターに必要ですか?

まずは、クリエイターの出口のかたちを知識としてもっておくことです。いろんな媒体、イベントなど、オンラインもオフラインも垣根なく、あらゆるメディアやコンテンツのあり方を知っておくこと。

そして、企画力。私たちはcakesという自社メディアをもっていますが、クリエイターの出口にはそれ以外の可能性が多くあります。出口のかたちを紹介して導くのが仕事なので、出版社やテレビ局にたいするただの仲介役にもなりかねません。それでは介在価値がない。ただの仲介役にならないためには企画力をみがいて、どんな企画ならクリエイターのバリューを最大化できるかを考えて、適したメディアや編集者、プロデューサーと結びつけることがたいせつです。

ーー出口のかたちを知ることと企画力。志村さんはどのようにスキルをみがいていますか?

加藤さんの受け売りですが、企画力をみがくために自分の中に疑問と仮説をためてみようと言われています。今の世の中ではあたりまえなことに、なぜこうなっているんだろうと疑問をもってみるんです。これって不便じゃない?という不満でもいい。疑問と仮説がたまっていると、クリエイターの魅力と社会の課題が結びついて、企画が自ずと生まれるようになります。

私は日常の中で気になったことや不満をメモしておいて、時間があるときに「なぜこうなっているんだろう」と調べたり仮説を立ててみるようにしています。たとえば、最近のメモには「なぜメッセージアプリには既読マークがつくのか」とか、「焼肉屋のメニュー名がわからない」とか書いてありますね(笑)

ぼーっと生きていると感情の動きを無意識に流してしまいがちなのですが、そこにアンテナを張って自分の中の「あれ?」とか「イラッ」に、敏感に反応するようにきたえています。

あえて苦手なものに手を伸ばすことで世界は広がる

ーーほかに意識していることはありますか?

出口のかたちを知るためにも企画力を身につけるためにも、自分の興味の範囲をこえて好奇心をもつようにしています。たとえば、私は純文学が好きなのですが、好きなジャンルに限らずベストセラーになった書籍は読んでみます。書籍以外にも、NetflixやYouTubeの人気コンテンツを観たり。もともとコンテンツ全般が好きなので、どんなジャンルでもわくわくします。

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興味の範囲外のコンテンツにも触れることで、気づきもあります。今年とてもヒットして各方面で絶賛されていた「天気の子」も、個人的にははじめおもしろいと感じませんでした。「なんでおもしろく感じなかったんだろう」と考えてみたら、私が少しうがった目で観ていたことがわかったんです。作品にあふれるエモさをあざとく感じてしまっていた。じっくりと作品に向き合ったり、さまざまなひとの感想を目にした結果、「ああ、こういったおもしろさがあるんだ!」と、あたらしい発見の数々がありました。

ーー興味の範囲をこえて好奇心をもつのって、意識しないと難しそうですね。

私は「Twitterのタイムラインが心地よくなっていないか?」と、自分自身に問いかけることがあります。

ーータイムラインは好きなものが流れる心地よい場所では?

意識しなければそうなりますよね。好きなもの、興味のあることばかりをフォローして、タイムラインを好きなもので満たすのはとても心地のよいこと。私もついつい心地よいタイムラインをつくってしまいがちです。でも、意識して興味の範囲外のものも流れるようにすることで、世界を広げてあたらしい出会いを生むようにしています。

自分の知っている範囲の心地よいものに囲まれていると、多分しあわせって80%くらいが限界だと思うんです。でも、興味のないことや苦手なことにあえて手を伸ばしてタイムラインの世界を広げてみると、予想もしなかった発見に出会えることがある。「え、こんなおもしろいものが世の中にあったの!」と、しあわせが120%まで増えるかもしれません。

ーー志村さんも世界を広げてなにかに出会いましたか?

料理です!

以前は、セブンイレブン大好き!1日3食コンビニ!というような生活をしていました。お酒がすきなので外食も多くて。

けれど、ディレクターになって、Twitterやnoteで料理家さんたちをフォローしてから変わりました。noteで活躍している有賀薫さん(@kaorun)や樋口直哉さん(@travelingfoodlab)、山口祐加さん(@yucca88)などですね。みなさんのツイートや記事を読んでいると、だんだん自分でもつくってみたくなってきたんです。

今では頻繁に料理をしています。冷蔵庫の中身を思い浮かべながら献立を考えるのが楽しいですよ。面倒だと思っていたものにあえて触れてみて、世界が広がった経験です。ディレクターとしてだけでなく、どんなひとにとってもたいせつな生き方かもしれませんね。

すべての仕事はクリエイターの創作活動のため

ーーそういった世界の広がり一つひとつが、noteディレクターとして成長するための重要な体験になるんですね。志村さんはこれからどんなディレクターになりたいですか?

やはりミッションはクリエイターのバリューを最大化すること。クリエイターの出口のかたちを知り、企画力のあるディレクターになろうとしています。

もうひとつ、たいせつなのはクリエイターから信頼されること。私たちnoteディレクターからの提案を受け入れてくださるのも信頼あってこそ。クリエイターひとりひとりと素直に向き合って、媚びることなく対応し、スキルと人柄両面で信頼されるひとになりたいです。

今、私はnoteディレクターの採用面接をすることがあるのですが、一緒に働きたいなと思うひとって、自分のなりたいディレクター像を一緒に目指せるようなひとなんです。クリエイターから信頼されるような素直なひと。コンテンツが大好きで、自分の好きなジャンルにはオタクのようにのめり込んでいて、さらに興味のないジャンルにも好奇心をもてるひと。

そして、どんな仕事も選り好みせずに、クリエイターの活躍を後押しするために必要だと思うことをどんどん実行できるといいです。たとえば、私は入社直後から法人のクリエイターが創作を続けるための「note pro 編集パートナー」という仕組みをつくったり、日本経済新聞社と共同運営しているコミュニティ「Nサロン」を担当したりしています。予想もしていなかった幅広さで仕事をしてきていますが、すべてはクリエイターの創作活動のためなんです。

素直で、コンテンツを広く愛していて、さまざまな仕事に臆せずチャレンジできるひと。そんな方に出会えると心強いなと思います。

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『文藝春秋digital』の立ち上げのnote側のパートナーとして、文藝春秋にとってもクリエイターにとっても創作の可能性を広げる取り組みをおこなった志村さん。それでも今のスキルに甘んじることなく、クリエイターのバリューを最大化するためにさまざまなクリエイティブにアンテナを張り、みずからの世界を広げています。彼女の感性の育み方は、どんな仕事においても重要なことに思えました。

ピースオブケイクでは、noteディレクターを募集しています。少しでもご興味をお持ちいただけたら、こちらもぜひご覧ください。

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Text by 関矢 瑞季、Photo by 佐賀野 宇宙

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