19年を経ても鮮明に残る記憶。



2001年9月11日の翌日から張り出された行方不明の人たちを探す家族や友人達が張り出した「Missing」の張り紙。「待ってるからね」とそれぞれの思いが書かれた張り紙がグランド・ゼロすぐそばの「セント・ポール教会」やミッドタウンの「グランド・セントラル駅」に張り出された。

そこには、「生」と「死」のはっきりと明確な境界線があって、私はそれらの張り紙の前に立ち言葉がなかった。あと5分遅ければ、自分もこの張り紙の一枚になっていただろう。これをどんな思いでご家族が書かれたんだろうと思うと、直視できず、かといってすぐ去ることもできず、暫く佇むしかなかった。

とてもつらかった。仲の良かった同僚たちが巻き込まれたのではないかと自分の生死が危うい状況になりながらも気を揉んだ。私を心配し、逃げながら道端で狂わんばかりに大泣きしてくれた大切な友人たち。翌日から数年間はとても大変な道のりだった。

思いはさまざま。でもサバイバーはそれを言うことは許されまい。優先されるべきはご遺族で悲しく辛い思いをしているのだから。

あれから19年が経ち世の中も人の気持ちもふるまいも大きく変わってしまった。でも変わらない思いもある。変えてはいけない思いがある。


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