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サービスを向上することでコーヒー文化の一員を担うということ

いきなりですが、私はバーが好きです。バー漫画や書籍も好きで、サービス哲学や、町とのかかわりがほぼ必ず書かれているところが特に好きだったりします。

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実はコーヒーの本を読んでいると、このあたりのことはあまり書かれていません。よく東京の有名店バッハの田口さんがご自身のサービス哲学を書かれていますが、逆に言えばそのぐらい。

あとは、ディベロッパーがカフェを立ち上げて「カフェは町のサードプレイス」と語っている本はあっても、コーヒー屋がこのように語っている本は本当に少ない気がします。

先日、私が尊敬するバーテンダーさんと飲んでいるとき、こんな話が出てきました。


ワインとピザのマリアージュが町のワイン文化を作る

そのソムリエさんがカジュアルイタリアンで3000円のピザランチを食べていた時、ピザがものすごく美味しかったので、どうしてもワインが飲みたい気分になったのだけれど、ピザに合いそうなグラスワインがなかったそう。結局ワインを頼まずその食事を終えたとのことでした。

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「ピザに合うグラスワインを出してほしかった!」と言うソムリエさんに対して、私が「ピザ屋にだって原価だったりランチに出すワインの相場ってもんがあるだろうからね」と話したら、「そういうことじゃないんだ」と。

「お客様が美味しいピザとワインのマリアージュを楽しんだら『ピザとワインって組み合わせると美味しいんだ。他の店でもピザとワインを合わせてみよう』となる。結果、それが町のワイン文化を作ることにつながるし、結果としてそのお店の売上アップにつながるかもしれないじゃないか」

その言葉を聞いて、私はハッとしました。

「いい言葉だね」なんて話していたら、「実はこの考え方はバーの師匠が常々言っていたことだからオリジナルの考え方じゃないけどね笑」とは内緒の話。


コーヒーの進め方一つで街の文化を作る

店舗経営者なんてやっていると、とかくものの考え方がスモールへスモールへと向かいがちです。単店舗でどのように売上を作るかという視点ばかりに目が向いてしまって、町との関係性をつい忘れそうになります。

「カフェがお客様のサードプレイスである」と語る本はときどきありますし、そういった町の休憩所的な意味合いでの"文化の発信地"としてカフェの役割を語るバリスタも何人かは知っています。

私もカフェが町とかかわるうえで"場所としての役割"はそのように認識していました。

でも、マリアージュひとつ、ペアリングひとつで街のコーヒー文化を作れるという考え方は思っても見ませんでしたし、"カフェのサービスが町を作る"という考え方は私にとっては目から鱗でした。

弊社の直営カフェnote coffee houseでは、積極的にコーヒーと〇〇のペアリングを促しています。

ベリー風味豊かなコーヒーを頼まれたお客様には、ベリーをふんだんに使ったスコーンを。たまにちょっと面白い仕掛けとして、ブラックコーヒーがお好きなお客様にあえて砂糖を促してみるetc……。

でも、それはお客様お一人お一人の満足感を高めるための仕掛けであって、べつに町のコーヒー文化を作るためとはまったくとらえていませんでした。

でも、それも名古屋のコーヒー文化の一員を担う仕事になっていたのかなと。

そう考えると、急に私たちの仕事が誇らしく思えるような気持ちになりました。ひょっとすると、そこまでの影響力はないのかもしれません。でも、そう捉えている私たちのモチベーションは上がります

バーテンダー界隈の方が自分の仕事に誇りを持って取り組めるのは、こうした仕事一つ一つへの意識付けに関わる教育が語り継がれているからなのかなと思った夜なのでした。

名古屋市千種区でコーヒーセミナー運営、コーヒー豆・器具の卸売り、直営カフェを運営するnote合同会社の公式コラムです。