マガジンのカバー画像

考える

8
運営しているクリエイター

記事一覧

「せーの」で息を止める

「せーの」で息を止める

感染を抑えるために、社会全体で「せーの」で息を止める試み。

上手くやればきっと何らかの効果はあるだろう。でも、人間と同じで社会全体もずっと息を止めてたら死んでしまうから、「せーの」をいつにするかはとても難しい判断だ。早すぎても遅すぎてもだめなのだ。

「せーの」をどのくらい強制するかも難しい。比較的息を長く止めていられる人もいればそうでない人もいる。お客さんが来なくてまじでやばいというお

もっとみる
マイノリティと選挙

マイノリティと選挙

選挙とは多数決である。民主主義では多数決の原理に従って様々な決断が下される。一方で、少数派の意見も尊重すべきであるとも言われる。多数決の原理と少数意見の尊重、一見矛盾するように思えるこの民主主義の2つの原則は両立しうるのだろうか。「マイノリティ(少数派)」とはどんな存在でそれを「尊重する」とはどうすることなのだろう。

常に説明を求められる「マイノリティ」そもそも「マイノリティ(少数派)」とは何な

もっとみる
わかるには大きすぎる(TOO BIG TO KNOW)

わかるには大きすぎる(TOO BIG TO KNOW)

Eテレの子ども向け科学教育番組「ミミクリーズ」で番組づくりをご一緒している生物学者の福岡伸一さんによれば、世の中には、まず地図を広げてから動くマップラバー(地図好き)と、自分の前後左右を見て動くマップヘイター(地図嫌い)がいるという。地図で全体を俯瞰するマップラバーは堅実で無駄がないが、動き出すのに時間がかかり、地図がないと身動きが取れない。一方、地図がなくても勘と嗅覚で動き出すマップヘイターはい

もっとみる
非日常を日常にする。日常を非日常にする。

非日常を日常にする。日常を非日常にする。

今年の夏は家族を連れて1ヶ月間ロンドンで過ごしていた。小学生の娘と息子にとっては人生初めての海外旅行でもある。AirBnBでサウスロンドンの一軒家を借り、大英博物館やタワーブリッジといった観光名所巡りだけでなく、子どもたちと近くの大きな公園に通ったり、ロンドンでしかできない自由研究を一緒に考えてみたり、足を伸ばして郊外の小さな街へ小旅行をしたり、またTakram Londonへ毎日出勤する週もあっ

もっとみる
寛容と不寛容

寛容と不寛容

寛容は不寛容に対して不寛容になるべきか。

自分と異なる多様な価値感を認め、ひとりひとりの違いを包み込む「ダイバーシティ」や「インクルーシブ」という言葉をよく目にするようになった。これからの社会でますます重要になる考え方である。金子みすゞの言葉を借りれば「みんな違って、みんないい」。しかし他者に対して「寛容」であることは実は言うほど簡単なことではない。まず、寛容は無関心とは違う。寛容であるためには

もっとみる
自立と依存

自立と依存

自立とは依存先を増やすことである。

脳性マヒの障害を持ちながら医師としても活躍され、現在は東京大学先端科学技術研究センター准教授として「当事者研究」などの分野でも注目されている熊谷晋一郎さんの言葉である。

一般的に「自立(independent)」とは「依存(dependent)」の反対語であり、自立することは、誰にも依存することなくスタンドアローンになることだと思われがちだが、決してそうでは

もっとみる
冷静に右往左往する

冷静に右往左往する

「正しく怖がる」って誤解生む言葉だなと思う。

元ネタはおそらく寺田寅彦の随筆「小爆発二件」で、震災直後にすでに出版されていた数少ない放射能リスクに関する本『人は放射能になぜ弱いか』の冒頭で引用されていてよく知られるようになったのだと思われる。

正当にこわがることはなかなかむつかしい
この一節が出てくるのは、浅間山の噴火を偶然ふもとで目撃した寺田寅彦が、駅で山から降りてきた学生と駅員の会話を聞い

もっとみる
目覚めるために眠る

目覚めるために眠る

人は眠らなければ生きていけない。

先日お会いした医師の稲葉俊郎さんの著書『いのちを呼び覚ますもの』は、「なぜ人は眠らないといけないの?」という子どもの頃から抱いていた疑問が出発点になっているという。

寝る時、人は意識を失っている。周りがどういう状態なのか何も覚えていない。生物学的には極めて無防備で危険な状態だともいえる。(中略)なぜこうしたリスクの高い状態が、毎日周期的に訪れる必要があるのだろ

もっとみる