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自分の分身の言葉を留める場所。

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最近の記事

鈍く、褪せた秋

去年ぐらいから、鮮やかな紅葉に対して、飽き、物足りなさを感じるようになった。ネットや広告に流れる彩度の飽和した写真たちに食傷気味ということもあるが、極彩色のモミジやイチョウばかり追いかけていると、秋を見ているのかスタンプラリーをしているのかわからなくなってしまう。さりとて、市井の紅葉にも美しさがあるはずだと思いながら、なかなかそれをすっきり自分の中で味わい、楽しむこともできずにいた。 そんな秋の終わりに見た當麻寺の東塔は、ひとつの啓示のような出会いだた。 寺の裏のこんもり

    • ずれた時計

      朝起きたら時計が止まっていた。壁にかかったアナログ時計。外はすっかり明るいのに、5:36という時間を指していた。正確にはラジオ電波の受信と調整だけがうまくいかなくなったらしく、替えの電池が手に入るまでしばらくは、そのずれのまま進んでいた。 それはすごく奇妙な感覚だった。 いつも壁の決まった場所にある、丸の中の二本の棒をみれば、起きる時間、出かける時間、寝る時間、何をすべきか教えてくれていた。それなのに、今になって示されている指標は正しくないのだと自分の脳に修正を求めるのは、何

      • 梅雨時の出来事、あれこれ

        郵便局で、隣の窓口に並んだのは小学生の男の子だった。 はっきりとした口調で「普通郵便でお願いします」、彼は言った。差し出したのは、なにやらかさのある縦長の茶封筒で、宛て先は隣町の女の子。 郵便局員のおばさんは、粛々とサイズを測定して、定型外の判断を下したのちに重さをはかり、「120円になります」そう言った。 小銭入れをガチャガチャ言わせ、硬貨三枚を手渡した少年は、「ありがとうございます」とも「お願いします」ともつかない言葉を残して、そして封筒をあとに残して去っていった。 梅雨

        • 器の世界

          良いと思うものには、思いがけず出会う。 昨日のスピーカーに出会った同じ日、別の店でこの皿を見つけた。さほど明るくない店の壁に備え付けられた棚に、シリーズものの器としてマグカップや小皿とともに、ひっそりと並べられていた。 ふだん、あまりものは増やす方ではない。移動することが多いからということもあるけれど、あまりものに囲まれているとそれぞれへの愛着が薄くなっていってしまうような気がしている。けれどもその結果、あるいはその裏返しで、これだけは手元に置いておきたいというものへの感

        鈍く、褪せた秋

          スピーカーを買った。

          スピーカーを買った。Tivoli Audioというスウェーデンのメーカー。 買ったのはこの家ごもり期間中だったけれど、ずいぶんと前から買うことを考えていた。八ヶ岳でふと立ち寄ったお店の奥の方から、まるでライブバンドがそこにいるかのようなリアルで深い音が聞こえてきて、そこにあったのがTivoli Audioだった。 北欧らしいシックでシンプルなデザインも良い。最近のポータブルスピーカーにあるような、LEDとかガラスデザインとか奇抜なところはなく、無骨なスピーカー然としている。

          スピーカーを買った。