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144.一旦、没になった作品は二度と自由に使えないの?


18・投稿した作品の著作権は誰のもの?
 
Q17 写真コンテストの応募条件の中に必ず記載されていることがあります。それは、「応募作品の著作権は主催者に帰属する」という一文です。これではボツになった作品は二度と自由に使用できず、お蔵入りとなってしまいます。撮影者の努力、著作権まで封じこまれているようで、どうしても納得できません。
もちろん入選者に選ばれたのであれば何も問題はないのですが…

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おっしゃる通りです。写真やイラストなどのコンテストのほとんどは「応募作品の著作権は主催者に帰属する」と記載されていますが、不思議な表現です。
 
正しくは「応募作品の入選作品は主催者に帰属する」という表現が良いと思います。なぜなら、すべての応募作品が主催者に帰属したからといって、主催者はその応募作品を勝手に自由に利用はできないからです。
 
たとえば、応募作品をパンフレット等またはホームページ等に掲載するためには、著作権が主催者に帰属していなければ、後で確認、承諾を取るのが大変だからという理由もあるかもしれませんが、それでもその応募作品を著作者の許可なくホームページ等に掲載することは、著作権侵害はもちろん「著作者人格権侵害」になる恐れもあります。
これは写真やイラストのコンクールだけでなく、音楽や作詞、作曲、詩、俳句、短歌、エッセイや小説等の分野でも同じような珍現象が起きています。
 
コンクール等を開催する主催者側が、他のコンクールの応募要項をそのまま「右に習え」ということで、規約として表示しているに過ぎない気がします。
しかし、これは応募者の著作権を軽んじる考え方で、逆に応募者は「主催者に帰属する」というコンクールには出品しないことが自分の作品を大切にすることに繋がります。
 
最近では、このような考え方のコンクール主催団体には著作者自らが応募しなくなっているのが現実です。
そのためか、応募要項を注意してみると、「入選作品等に関しての著作権は主催者に帰属します。ただし著作者人格権は著作者に帰属しています。」という正しい要項になりつつあります。
 
この「主催者側の帰属」の意味は、主催者が入選作品を自由に扱いたい、または商品化して販売したい、様々な分野で活用したいという思いがあり、入選作品の賞品、賞金ないようによっては、「著作権譲渡」の意味合いも含まれています。
 
ただし、賞品、賞金を入選者に差し上げたからといっても「著作権の譲渡契約」等がなければ著作権は移動していないことになります。
「主催者に帰属する」という条文があったとしても、それは「帰属」であり、「譲渡」ではありません。結果、「帰属」していたとしても著作者の許可なく、確認なく、利用することはできませんので、主催者、応募者にとって互いにメリットがあるものではありません。
 
 

19・プライバシー権と肖像権の関係
 
Q18「肖像権」というのは、法律上の言葉ではないといわれていますが、関連する法律にはどのようなものがあるのでしょうか? また、肖像権と著作権の関係、肖像権と個人情報保護法との関係、プライバシー権と肖像権の関係、パブリシティ権と肖像権の関係を教えてください。
 

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一言では伝え切らない質問です。
そこで、次の①から⑤に分けて考えてみることにします。
 
①「肖像権」に関連する法律
②「肖像権と著作権の関係」
③「肖像権と個人情報の関係」
①  プライバシー権と肖像権の関係」
②  パブリシティ権と肖像権の関係」
 
①「肖像権に関連する法律」

「肖像権」は、法律用語の中にない言葉と言われていますが、明文の法律による根拠はありませんが、判例で認められている権利のひとつです。
一言でいえば、
「人が、その肖像・容貌・姿態を肖像者本人の意に反して、みだりに撮影されたり、描かれたり、彫刻されたり、また、その撮影された写真、スケッチ胸像などをみだりに公表されない権利」です。
 
肖像はその人独自のもので、肖像によって他人との区別ができるものです。
また、肖像はその人の人格を表しているもので、無断でその肖像を撮影したり、肖像写真を勝手に公表することは、個人が有する人格的権利を侵害することになります。
 
この「人格的利益」のことを肖像権といいます。
 
もし、あなたが自分の意と反した政治団体や宗教団体、思想団体等であなたの肖像写真が勝手に使用されていたとしたらどうでしょうか?
あなたが了承し、認めている団体であるならば何も問題はないと思いますが、まったく意図していなければ人格を傷つけられる場合もあります。
 
また、その肖像写真によって誤解が生じてしまったり、他人から変な目で見られる場合もあります。さらに、人に知られたくないモノ、見せたくないモノなどの秘密が世間に勝手に知らされてしまったり、家族や友人、子どもたちが傷つけられる場合もあります。
 
☆判例☆
この肖像権に関して欧米と比べると、日本ははるかに遅れていますが、最高裁判決、 昭和四十四年十二月二十四日では、「私生活上の自由が、警察権等の国家権力の行使に対しても保護される」となりました。これは、「撮影された写真は無断で公表されない」「撮影された写真をみだりに公表されない自由」という意味も含まれます。
 
札幌高裁判決、昭和五十二年二月二三日では、「みだりに撮影されない自由」が、それまでは国家対私人の場合でしたが、私人対私人にも適用されました。
東京地裁、平成十二年十月二十七日判決では、「何人も、みだりに自己の容貌や姿態をその意に反して撮影され、撮影された肖像写真や映像を公表されない人格的な権利、すなわち肖像権を有しているものと解するのが相当である。」
 
最高裁判決、平成十七年十一月十日判決では、「人は、みだりに自己の容貌等を撮影されないということについて法律上保護されるべき人格的利益を有する」
 
②「肖像権と著作権の関係」
 
「著作権と肖像権の関係」は深いものです。
ほとんどの人は写真や映像を利用するときの確認事項が甘いようです。
そのため、著作者と肖像者とのトラブルが後を絶ちません。
 
その大きな理由が、写真や映像の場合「撮影した著作者」と「撮影された肖像者」の両者の間で確認、使用許諾が取れていないことにあります。
撮影した人からだけの了承であったり、そのプリントを持っている肖像者からの了承のみといったように、片方だけの許可がほとんどのため、写真や映像を扱う広報物、SNS、フェイスブックやホームページ、プログ等に関しては、このように両者の許可のないまま、また違法だと気づかずに使用してしまっています。
 
また著作権は、「思想または感情を創作したもの…」で、すべての写真には著作権があります。最近ではケータイで撮影したものだからとか、スナップ写真だから大丈夫だ、という考え方もあるようですが、ケータイで撮ろうが、スナップであろうが、すべての写真には著作権があります。
 
著作権と肖像権の似ている部分は、どちらにも「人格的利益の保護」を目的としており、著作権には著作権を譲渡したとしても「著作者人格権」が残り、これは譲渡することはできません。このように、どちらも無断で使用する場合は「人格侵害」になります。
 
「著作者人格権」の中には、公表を著作者自らが決定できる「公表権」。
氏名を出すか出さないか、ペンネームで出すか出さないかを選べる「氏名表示権」。勝手に許可なく修正したり、トリミングしたり、もとの著作物を勝手に変えてしまってはならないという「同一性保持権」があります。
これらは、「肖像権」にも当てはまります。
同じように公表時期、氏名、修正等においても必ず許可が必要となる「人格的利益」があり、ここが著作権と肖像権の共通部分といえます。
 
③「肖像権と個人情報保護法の関係」
 
最近、「これは個人情報のためお教えすることはできません」という言葉がどこでも聞かれる時代になりました。ネット上などでも「個人情報に触れる発言、表現はやめてください」というようになりました。
 
この法律は平成十七年(二〇〇五年)四月一日に施行された法律ですが、いまだ浸透していないものです。また、私たちが身近に感じる「個人情報」とは、住所であったり、氏名、個人の情報内容ぐらいに感じていて、意識は薄いかもしれません。
 
しかし、「個人情報」は悪用することも、その情報を実際に売買されることもあります。最近では、この「個人情報保護法」という法律が出たにもかかわらず、企業の情報が何十万件と売られ流されています。
 
また、この法律には、「国民の権利に関わる法律であること」と「企業が大きな経済的損失を被る可能性」があることです。
企業が個人情報を盗まれたり、売られてしまえば信用を失います。
信用をただ失うだけではなく、「個人情報漏洩」により、プライバシー侵害として莫大な慰謝料を支払っています。慰謝料の相場は、一人当たり一万円と小額に感じるかもしれませんが、現実には何億、何十億と膨れ上がる可能性もあります。これは実際に裁判になっています。
 
個人情報保護法第三条には、
「個人情報は、個人の人格尊重の下に慎重に取り扱われるべきものであることにかんがみ、その適正な取扱いが図られなければならない」。
同法第一条には、「個人情報を取り扱う事業者の遵守すべき義務を定めることにより、個人情報有用性を配慮しつつ、個人の権利利益を保護することを目的とする。
同法第二条第一項の定義では、「個人情報とは、生存する個人に関する情報であって、当該情報に含まれる氏名、生年月日、その他の記述等により、特定の個人を識別することのできるもの」です

では、「個人情報」にはどんなものがあるのでしょう?
氏名・住所・電話番号・メールアドレス・名刺・役職・映像・写真・肖像・音声・身体情報・カルテや健康診断結果などです。
このように、「…特定の個人を識別することのできるもの」として、「肖像権」はもちろん「著作権」「プライバシー権」に関わっていることがわかるかと思います。
 
④「プライバシー権と肖像権の関係」
 
東京地裁、昭和三十九年九月二十八日判決で、三島由紀夫のモデル小説「宴のあと」事件が日本で初めてのプライバシー権を認めました。
今から約四十年前の出来事です。
今では誰もが「プライバシー」という言葉を使っていますが、この「プライバシー権」とは、どんな権利なのでしょう?
 
「プライバシー権」とは、「私生活をみだりに公開されないという法的保障ないし権利」とされています。例えば、「前科」「犯罪経歴」などを公表するのもプライバシー侵害になります。「他人に知られたくない個人情報は、それがたとえ真実に合致するものであっても、そのもののプライバシーとしての法律上の保護を受け、これをみだりに公開することは許されない…」
 
このように、「プライバシー権」「肖像権」「個人情報保護法」「著作権法」など、それぞれ個人の人格を保護する法律という共通点がわかると思います。
もちろん、事前の確認、承諾が得られれば、公表は認められています。
 
⑤「パブリシティ権と肖像権の関係」
 
知名度のある有名人、俳優、歌手、テレビタレント、芸能人やプロスポーツ選手たちはテレビやマスコミを通して、その氏名、肖像が広く知れ渡っています。
彼らは商品やコマーシャル、テレビ出演はもちろんのこと、各種イベントや宣伝に登場しています。このように、知名度のある有名人は出演料も高額であるように、利用する側には宣伝効果、イメージ効果は計り知れないメリットがあります。
 
一般的には無名の人の氏名、肖像が人格的利益として認められていますが、有名人には、「人格的利益」以外に「財産的な権利を持つ肖像権」があります。このような権利を「パブリシティ権」と呼び、氏名・肖像が有する財産的価値を利用し、それをコントロールする権利のことをいいます。

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 トラブルに巻き込まれた時のために、次の連絡先を自分の「お気に入り」に保存しておくとよいでしょう。
 
 
■警察庁:インターネット安全・安心相談
http://www.npa.go.jp/cybersafety/
http://www.npa.go.jp/cyber/
■各都道府県別相談(サイバー犯罪)
https://www.npa.go.jp/cyber/soudan.htm
■文部科学省
「24時間いじめ相談ダイヤル」 0570-0-78310
http://www.mext.go.jp/ijime/detail/dial.htm

総務省電気通信消費者相談センター
http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/joho_tsusin/top/madoguchi/tushin_madoguchi.html
法務省 人権侵害の窓口
http://www.moj.go.jp/JINKEN/index_chousa.html
 ■インターネットの人権相談
http://www.gov-online.go.jp/useful/article/200808/3.html
 
相談できる内容:インターネット人権相談受付、みんなの人権110番など人権相談窓口があります。インターネットによる人権侵害のほか、様々な人権問題についても相談を受け付けています。
■インターネット人権相談受付窓口
パソコンからの相談はこちら / 携帯電話からの相談はこちら
全国共通人権相談ダイヤル(みんなの人権110番)
電話:0570-003-110(ゼロゼロみんなのひゃくとおばん)
最寄りの法務局につながります。
子どもの人権110番(フリーダイヤル)
電話:0120-007-110(ぜろぜろななのひゃくとおばん)
「いじめ」や虐待など子どもの人権問題に関する専用相談電話です。
女性の人権ホットライン
電話:0570-070-810(ゼロナナゼロのハートライン)
女性の人権問題に関する専用相談電話です。
内閣府 
児童虐待、いじめ、ひきこもり、不登校についての相談窓口
http://www8.cao.go.jp/youth/soudan/map.html
国民生活センター
http://www.kokusen.go.jp/map/
相談できる内容:消費生活全般に関する苦情や問い合わせ。高額請求、ネット詐欺など
JADMA通販110番
http://www.jadma.org/DM110/index.html
  相談できる内容:通信販売のトラブル全般
違法・有害情報相談センター
http://www.ihaho.jp/
相談できる内容:インターネット上の違法有害情報相談窓口
迷惑メール相談センター
http://www.dekyo.or.jp/soudan/
相談できる内容:迷惑メール全般
セーフライン/一般社団法人セーファーインターネット協会
http://www.safe-line.jp/
■通報フォーム
https://www.safe-line.jp/report/
  できる事:違法・有害情報を通報→場合によっては削除
■インターネット・ホットラインセンター http://www.internethotline.jp/
相談できる内容:インターネット上の違法・有害情報の通報受付窓口
 ■一般財団法人インターネット協会 http://www.iajapan.org/hotline/dantai/1-039.html
  相談できる内容:インターネットのルール&マナーに反すると思われること
 ■著作権情報センター/著作権相談室 http://www.cric.or.jp/counsel/index.html#soudan
相談できる内容:著作権全般
web100
http://www.web110.com/
googleからの情報の削除の通報フォーム
https://support.google.com/websearch/troubleshooter/3111061?hl=ja
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