シングルマン

トム・フォード監督「シングルマン」

前から観たかった映画を観ました。
ファッションデザイナーのトム・フォードが監督した最初の映画「シングルマン」です。

トム・フォードはファッション界ではすでにビッグネームになってます。
自身のブランドを起ち上げる前はグッチやイブ・サン・ローランのクリエイティブ・ディレクターを務めていたり。
デパートのコスメ売り場に行けばトム・フォードの口紅はシャネルよりも高かったりして。
とにかくトム・フォードといえばハイセンスの塊のようなもの。

そんなトム・フォードのセンスが遺憾なく発揮されたのが「シングルマン」でした。
本編110分のうち、多くの場面が、どこを切り取ってもファッション広告のポスターになるような絵作りがされてました。
コリン演じるジョージの一日を追っていくのですが、それは「キングスマン」のような動きの激しいものではなく、ただじんわりと、静かに、しかし心の奥底にある激しいものなんですね。
そしてその場面場面がとても美しい。
コリンが香水を持つシーンが冒頭にあるのですが、その後姿だけでVOGUEとかのファッション誌の見開き広告になるような雰囲気があります。

くわえて全編に渡ってエレガントでセクシーでした。
セクシーというのは、何も裸の体が絡まってるようなシーンのことを言うのではなく、役者からにじみ出てくる雰囲気がセクシーなんです。
もしかしたらこの二人はこのままベッドに行くのだろうかって思ったりもしますが、コリンが一人で佇んでいる時でさえセクシーと言えるのです。
何よりもコリンのスーツ姿が気品の塊。
いや、気品という言葉のルビがコリン・ファースにしても良い。
そのくらいスーツ姿がエレガント。
「キングスマン」でのコリンのスーツ姿がヤバいということは話題になってましたが、「シングルマン」のコリンのスーツ姿は輪をかけてヤバい。
こんな大学教授いたらモテるだろうなって思ったら、ほんとにモテるんですね。

コリン演じるジョージは、8ヶ月前に最愛の同性パートナーを事故で失います。そのせいで彼は生きることに絶望して自死を選ぶことにしたのですが、その最後の一日だけでも彼は生徒、偶然知り合った男、ゲイを自認する前に寝たことのある女、この3人と妖しげな雰囲気になります。
それでもやっぱり亡くなったパートナーのことが頭から離れない。
着々と死の準備をして、いざ拳銃を口に咥えるのですが、まあ、その後は映画のお楽しみ、ということで。

映像だけを眺めるとファッションデザイナーの展覧会で流れるショートフィルムのような雰囲気ですが、ストーリーもなかなかじんわりときます。
ニコラス・ホルト演じるケニーと徐々に距離を詰めていくやりとりも見ものです。
ケニーはキーパーソンなのですが、個人的には彼はいわゆる天使だと思いました。
この二人のやり取りなどは、ドキドキしながら見つめてしまいます。

映像美に酔いしれるのも良いし、ストーリーをじっくり味わうのも良い。
110分の上映時間が過ぎた後、感嘆せずにはいられない映画でした。

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