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「関係の逆転:親子でなく子親とは」


子親とは

親が老いによって
手助けが必要になる。

子供の頃、親に生きることを手助けしてもらい
子供は成長して大人になる。

そして育ててくれた人が
歳をとり人の手助けがいるとき
今度は子供である自分が親の手助けをする。


親子→子親
この逆転の現象が起きる。

子供もこれは初体験、
同じように親もこの現象は初体験するわけだ。
お互いゼロからのスタート、
どっちも必死だ。


子親の始まり

私にとって
親子が子親に逆転したスタートは、

小学校高学年の頃
母が重度のアルコール依存症になった時だと
断言できる。(元々アルコールに依存気味な人ではあった)

母は毎日仕事から帰ると、
誰とも話さず
ロング缶のアルコールを毎日最低二本は呑んで寝るように
なってしまった。

(私はアルコールを呑まないので、
これがどれくらい多いのかしっかりわからない)

それまで少しの酒缶と鯖缶くらいしか、
ゴミ箱に入ることはなかったのに、
あっという間に
缶が溢れるように変わった。

そんな母と水族館へ

ある日、久しぶりに
母と妹と水族館に行った。

外に出ている間は母はアルコールを呑まない。
そう思ったから、
水族館に連れてってくれ
なんてわがままを言った。

前みたいに、
元気な母とイルカを見た。

楽しそうな妹とシャチを見た。

変な顔だねって3人で笑い合いながら、
深海魚を見た。

最後に好きなお土産を
私と妹、一人ひとつ
選んでおいでと言われた。

私たちは飛んで喜んだ。

二人でお土産屋さんに駆け込む。

そして母は外のベンチで
待ってるねと言って穏やかに外へ向かった。

妹と二人でお土産を選んだ。

食べ物は食べたら消えるし勿体ない。

このビーズがジャラジャラ付いたシャーペンは可愛いけど、
学校じゃ使っちゃいけない。

私は、人形なんて柄じゃなかったけど
人形を選んだ。
お母さんに「子供やなぁ笑」って笑って欲しかった。
欲望の期待だ。

妹と私はそれぞれ
お土産を選んだ、
外にいる母を呼ぼうと、
二人で一旦外に出た。





……外に出たら、
ベロンベロンに酔っ払った母が
ベンチで寝転がってた。

地面には
空き缶が三本転がっていた。








「…………………………」




「………………………」







「……………」



「………………………もう………………もう、もう…!!!!!!!

なんでこんな時くらい我慢ができないのっ…!!」




嫌になった。

さっきまでの楽しい気持ちから、
一転、ドロドロとした粘り気の強いドス黒い感情が
吹き出す。

今日一日、ずっと私たちと笑い合いながら
頭の片隅では、
いつ酒を呑もうか考えてたんだな
って思った。

「いつから思ってたんだろう…」

「入場券を買うときから…?あの時からコンビニを探してたのかな?」

「イルカショーの待ち時間からかな?
…あぁ、もうあんなもののために待つんじゃなかった。」

「お昼ご飯を売店で買ってる時、
そこにビールの看板があったからかな…?」

「シロイルカを見ているときも、
酒のことを考えていたのかな…?
あんなに楽しそうだったのに」

いつから、母の中に酒を呑みたいという
思いが存在していたんだろう。

そんなのいつもだ。
外に出たからって変わるわけないじゃん。

なんで、自分は好転すると思い込んでたんだ。

家族だって信じれば傷つく。
信じるなんて、馬鹿だ。

そんなことしなければもっと平穏に暮らせる。

なのに私は信じることをやめられない。
期待なんて、すると自分が傷付くだけだ。

そんなの愚の骨頂だ。

なのに、わかってるのに
期待するのがやめられない。





考えても仕方ない。
なのに考えてしまう。

「お土産買っておいで」
と言って母は真っ先にアルコールを買いに
行っていたらしい。

近くのコンビニまで結構離れていたのに。
あんなに楽しかったのに
……全部最悪だ。

妹のお土産代を財布から抜き取って、
さっさと妹と二人レジに並んで妹のお土産を買った。

このお土産屋をさっき出た時の
気持ちと今の気持ちは雲泥の差だ。

もうお土産屋なんて寄らずに楽しい思い出のまま
家に帰ればよかったと思った。

本当はもう今日は水族館で3人で遊んだだけで
良かったのに。

もう全部、
最後の最後にいつも通りに
戻っちゃった。

私は人形が欲しかったんじゃなかった、
母に「まだまだ子供やな〜」
って笑って欲しかっただけだったから、
値段だけやけに高いシロイルカのぬいぐるみなんて
もう欲しくなかった。

母と妹の手を引っ張って、家まで帰る。

酔い潰れてる母と、
状況がまだわからない小学校一年生の妹。





まさに関係性が
親子から子親に逆転していたあの時。


親子とは望んでなることが多い。
親子になるために妊娠して、出産する。

だけど、子親に望んで、なる人なんているのか?

そんなことを思い出して今日は書いてみた。

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