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【識者の眼】「フリーアクセスは計画された制度なのか?」草場鉄周

草場鉄周 (日本プライマリ・ケア連合学会理事長、医療法人北海道家庭医療学センター理事長)
Web医事新報登録日: 2021-07-19

日本の医療の特徴を語る際に、国民皆保険と並んで示されるのが〈フリーアクセス〉である。では、フリーアクセス、つまり健康保険証が1枚あればあらゆる医療機関を受診できることは、そもそも医療制度として計画されたものなのだろうか?

1961年にスタートした国民皆保険は、それ以前に公的保険に無加入であった国民を対象に国民健康保険法に基づいて計画された紛うことなき制度である。これにより、健康リスクを全国民で分かち合うシステムが完成したことの素晴らしさは言うまでもない。しかし、フリーアクセスの法的根拠は医療法や国民健康保険法を確認しても見当たらない。おそらく、国民の受療行動を規制する法律がないことをもって、医療制度の一つとみなしていると考えられる。

つまり、過去何らかの受療行動の制限があって、それを撤廃してフリーアクセス制度が成立したというよりも、国民皆保険が成立し、全国一律の診療報酬制度によって医療機関ごとの患者の自己負担の差も小さい状態が生まれ、結果的に診療所、病院、大学病院のいずれも同じように受診できる環境となったのだろう。

そして、質の高い医療、つまり正確な診断や治療が提供されるかどうかについて、第三者による客観的評価が存在しない状況では、施設規模が大きく、いわゆる臓器別のスペシャリストがそろっている総合病院や大学病院を受診しようとする一般国民の素朴な感覚は否定できない。その結果が、いわゆる総合病院の外来診療の極端な混雑や夜間救急へのコンビニ受診などにつながった。

これを改善する目的で、現在、大学病院などの特定機能病院と200床以上の地域医療支援病院を紹介状なしに受診する際、患者は5000円以上の定額負担金を支払わなければならず、ここ数年でフリーアクセスは制限され始めた。これからフリーアクセスをどう考えるか、より本質的な議論を行うべき時機が到来しているのではないだろうか?

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