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「知り方」が人の行動を左右する| エシカルフードインタビュー 須賀智子さん

こんにちは。「Tカードみんなのエシカルフードラボ」公式note担当の東樹です。

今回は、ラボの活動に有識者として参画されている、Crops -Food × ESD Design- 代表の須賀智子さんへのインタビューをお届けします。長く食領域の発信に携わり、生涯学習としてのESD(Education for Sustainable Development)を推進されている須賀さんに、私たちがどのように「エシカルフード」に向き合うべきか、お話を伺いました。

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須賀智子さん(Crops -Food × ESD Design- 代表)
外資系広告会社マッキャンエリクソンにてマーケティング・メディアプランニング業務に10数年従事した後、食を専門とするメディア・料理通信社へ。同社のWeb事業とSDGs事業の立ち上げと推進を担い、「食で未来をつくる・食の未来を考える」をテーマにした取材活動、食を取り巻く社会課題に向き合うアクションプロジェクトの推進、“食×SDGs”カンファレンスの企画運営等を行う。2021年独立。
また慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科において、大規模で複雑な現代社会の問題解決を図る分野横断・全体統合型学問体系を習得すると同時に、システム思考とデザイン思考の掛け合わせによるイノベーション実装手法を活用し、食を起点にしたESDデザインの研究を続ける。同研究科附属SDM研究所研究員/ NPO法人 まちの食農教育 理事。

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ー 須賀さんは、なぜこのラボに参加されたのでしょうか?

私は昨年まで、食を専門とするメディア「料理通信」のWeb企画・編集に携わっていました。また、この数年は「食を通じてサステナビリティを問う」という切り口で、食を取り巻く社会・環境課題やその解決に向けた動きに関する取材活動を重ねてきました。生活者が食のライフサイクル全般を俯瞰して見られるように、そして、より環境に配慮した食べものに意識を向けられるように情報発信をしてきた、というのがこれまでの経歴です。

メディアとしての役割に加えて、ESD(Education for Sustainable Development)と呼ばれる「これからの社会を創る担い手のための教育」の推進を目的とした研究に長く関わっています。エシカル消費を進める上では消費者教育がとても大事なので、ESDの考え方が重なってきます。

メディアでの経験や研究を活かして有識者の役割を担えれば、という思いから「Tカードみんなのエシカルフードラボ」に参画させていただきました。

ー メディアの立場で長く発信をされてきた中で、「SDGs」や「エシカルフード」に対する生活者の考え方が変化している実感はありますか?

10数年、発信を続ける中で感じてきたことがあります。それは、「サステナビリティ」や「エシカル」というテーマに関心がある人の中では知識が深化していくのですが、大きな動きにつながっていかない、ということです。

食の分野では、作り手である生産者、食材の価値を届ける料理人や流通事業者、価値を享受する食べ手という三者がそれぞれ活動をしています。たとえば、環境に配慮した生産活動や、食品ロス軽減を図る飲食業界での動きが見られますし、食べ手の方が「料理通信」を読み気づきを得て行動が変わっていくことも動きと言えますね。

ですが、三者の間に分断があって、個々の活動がなかなか大きなうねりになっていかないことが問題だと思ってきました。構造上、ステークホルダー間の連携が生まれにくい社会になってしまっているんですよね。

この数年、「SDGs」というグローバルな課題が提示され、それをローカルで、つまり各々の持ち場で解決していこうという気運の高まりと並行して意識変容や行動変容の重要性が叫ばれています。海外と比較しても、日本の動きはまだまだ小さいのではないでしょうか。ですから、ラボが推進しようとしている、よりマスに向けたアクションは大きな意味があると思います。

ー 変化を促すために、何が重要だとお考えですか?

食べ手の行動が、もっと大きなインパクトを持った形で変容していくためには、より主体的に社会参画してもらうことが必要です。主体的な社会参画を促すには、「知り方」が重要だと考えています。起きている状況をただ知るだけでは人は動きません。自分とのつながりが見えるような形で課題を知り、自分の行動が及ぼす範囲を想像できる力を食べ手が養えるように、教育や企業活動など様々な分野で同じ方向を向いた取り組みを行わないといけないと思います。

また、Z世代と呼ばれる若い人たちの多くは、海外の情報や「サステナビリティ」「気候変動」といったテーマの情報に対する感度が高く、発信する力や柔軟に行動に変えていく力も持っています。巻き込み型のアクションを得意とする世代なので、ステークホルダー間の分断を超えて問題解決を図ることができるのではないかと思います。もちろんキャリアを積んだ世代も当事者意識とイニシアチブを持って、彼らと連携を図っていくのが望ましい構図ではないでしょうか。

ー 今後「エシカルフード」が選ばれていくために、生活者のみなさんとどのようなコミュニケーションを取っていくとよいとお考えですか?

これは、ラボにおける今後の課題の一つだと思います。策定した「エシカルフード基準」がたくさんの方のアテンションを引くには、やはり「知り方」が大事になります。常態化している習慣を初期化する装置があるといいのかもしれませんね。当たり前のことに対して「あれ?」と思わせるような、視点を切り替えさせるような問いかけをしていく必要があると思っています。

ESDの文脈でも、今まで持っていた視点をゼロにしてみるというカリキュラムデザインが評価され始めています。フィールドワークで生産現場に行ってみたり、企業の現場を覗いてみたりする、そういった機会を提供することで、新たに気づきを得てもらえるかもしれません。

ー 最後に、ここまで読んでくださったみなさんに、須賀さんからメッセージをお願いします。

ぜひ、日頃何気なく棚から手に取っている商品を、改めて見つめ直す機会を持っていただけたらと思います。

また、知識だけではなく体感理解を伴う形で、少しでも生産の背景に触れてみてください。たとえば、プランターでハーブを育てるのもいいですし、旅先で生産現場を訪れて生産者と交流するのもいいかもしれません。それが難しい時は、企業のホームページを覗いて産地を調べるなど、自分から情報を取りに動くだけでも充分です。それが、エシカルへの第一歩だと思います。

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