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サステナビリティの「原理原則」を知れば、迷いがなくなる| エシカルフードインタビュー ペオ・エクベリさん

こんにちは。「Tカードみんなのエシカルフードラボ」公式note担当の東樹です。

今回は、ラボの活動に有識者として参画されている、株式会社ワンプラネット・カフェのペオ・エクベリさんへのインタビューをお届けします。サステナビリティ・プロデューサーとして、日本、スウェーデン、ザンビアの3拠点で生活され、アジア、欧州、アフリカの世界観を深く知っていらっしゃるペオさんに、私たちがどのように「エシカルフード」に向き合うべきか、お話を伺いました。

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ペオ・エクベリさん(株式会社One Planet Café 取締役、サステナビリティ・プロデューサー)
スウェーデン出身。環境ジャーナリストを経て、現職。One Planetはサステナビリティ認定されている会社で、日本、スウェーデン、アフリカをつなぎ持続可能な発展のための事業を行う。サステナビリティの原理原則についての講演、スウェーデンの視察ツアーを企画。2008年、イギリスBBCのWEBページ Hero で、アル・ゴア元アメリカ副大統領やアルピニスト野口健氏と並び環境リーダーの一人として紹介される。 2011年、ザンビア、日本の恊働で、環境問題と貧困を同時に解決するバナナペーパー事業を立ち上げ推進。5年間、東京の武蔵野大学非常勤講師(環境政策論)。著書に、エコライフのガイドブック「うちエコ入門」(2007年)など。

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ー はじめに、ペオさんが「Tカードみんなのエシカルフードラボ」に参加された理由を教えてください。

私はスウェーデン人なのですが、スウェーデンをはじめとするヨーロッパの国々では、サステナビリティに関連する認証システムが浸透しています。認証システムのいいところは、迷いをなくせるところです。消費者の立場で言うと、商品を選びやすくなります。メーカーや店舗は、商品のよさを伝えやすくなりますよね。

ヨーロッパと比べて、日本では認証を導入する動きが足りていないように感じます。ラボの「エシカルフード基準」は認証システムではありませんが、認証の導入に向けて大きな一歩になると思います。日本にとって大事な取り組みだと感じ、ラボに参加しました。イギリスのエシカルコンシューマーなど国際的な基準に基づきながらも、日本らしさを取り入れた仕組みを作ろうとしているのが素晴らしいですね。

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ー 「エシカルフード」は、まだまだ一般的な言葉とは言えないと思います。ペオさんが考える「エシカルフード」とはどのようなものでしょうか?

まず、人と動物を尊重していること。そして、国際的な約束に従っていること。その2点が「エシカルフード」の条件だと考えています。

国際的な約束について補足すると、1972年に、初めて「地球サミット」(国連として、環境問題などサステナビリティについて議論する国際会議)がありました。そこから50年間、何度も会議が開かれ、国際的な基準、約束が決まったんです。

スウェーデンはSDGs先進国と言われますが、国際会議で決まった約束を真面目に守っていることがその理由の一つです。つまり、何が環境にとって「正しい」ことか、ということをわかっているんです。

ー なるほど、スウェーデンの方々は、自然とサステナブルな考え方ができるんですね。

サステナビリティを推進するために最も大事なのは「環境」です。酸素や水、そして食べものがないと私達は生きていけません。そして、環境が機能するためには、「環境循環」が重要になります。これは、一言で言うと「自然に還すことができる以上に取りすぎないこと」です。

自然界に目を向けると、人間以外はそれができているんですよね。たとえば、鳥は風力を使って移動しますし、象は草や木の枝(バイオマス)を食べて歩きます。花は太陽光を使って育ちますよね。CO2を排出しすぎず、ごみを出さない。これは、「原理原則」と呼ばれています。

そして、スウェーデンでは、こういったことを幼稚園の時から教えているんです。すると、環境と向き合うルール、つまり原理原則が決まっているので迷いがなくなります。料理に例えるとレシピがある状態ですね。いちごケーキを作ろうとして、肉を買いに行くことはないはずです。一度ルールがわかれば楽しくなると思いますよ。

ー 日本がスウェーデンのような「エシカル先進国」になるには、何が必要なのでしょうか。

1つ目は、「原理原則」、つまり何が環境にとって「正しい」かを知ることです。これが一番大事ですね。

2つ目は、第三者が正しさをチェックし、環境ラベルをつけるなど認証することです。先ほども述べたとおり、これによって、消費者は商品を選びやすくなりますし、企業は商品のよさを伝えやすくなります。

3つ目は、それらの取組みをスケールアップすることです。日本には、サステナビリティの推進に本気で取り組んでいる方々がいらっしゃり、そういった店舗もあります。ただ、どうしても規模が小さいんです。

私たちは、スウェーデンのSDGs視察ツアーでいつも、「今回のツアーで見るものの一部、体験できるものの一部は日本にもあります」と説明しています。スウェーデンとの大きな違いは、日本では必死に探さないとそれらが見つからないということです。山の奥まで行けば、地産地消でCO2の排出量が少ない取り組みをしている方がいらっしゃるかもしれません。ですが、大きく世界を変えないかぎり、一生懸命取り組んでも物事が進みません。どうやってスケールアップするか、が次の課題になります。

スウェーデンでは、ほぼどこでもサステナブルな商品が手に入り、サステナブルなサービスを受けられます。日本でサステナブルな商品を扱うお店を1店舗作ろうとしている人がいたら、「それを100店舗、1000店舗にするためにどんなプランがありますか?」ということを聞いてみたいですね。

私は、ジャーナリストとして70カ国以上に訪れたことがありますが、どこの国でも日本に憧れるという話を聞きます。日本は影響力がある国です。なので、スケールアップすれば、日本だけではなく国際的な市場でチャンスがあると思います。

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ー 今後「エシカルフード」が選ばれていくには、消費者のみなさんにどのような伝え方をしていくとよいとお考えですか?

企業が教育者になることがとても大事です。たとえば、スーパーの棚の一番いいところに「エシカルコーナー」を作ってキャンペーンをやる、などです。

スウェーデンでは、フェアトレードの食品を売るにあたって、スーパーの外にフェアトレードラベルがついた大きな看板を置いているところもあります。その看板には、「私を見つけてね」とだけ書いてあるんです。これはなんだろう、と気になりますよね。

フェアトレード認証の食品など値段が高い商品は、スーパーが毎週3〜5種類を集めて、店舗の入口に「今週のエコ」コーナーを作って陳列する、という方法もあります。その1週間だけは、安く販売するんです。値段を気にしつつも少しエシカルに興味を持っている人は、「安いから買ってみよう」と手にとってくれます。そして、買ってその味や質、ストーリーに慣れると、普通の値段に戻ったあとも、時々「今日は買ってみようかな」という気持ちになるんです。これが、スケールアップにつながっています。広げれば広げるほど、結果として手に届きやすい値段になっていきます。

ー 最後に、ここまで読んでくださったみなさんに、ペオさんからメッセージをお願いします。

環境ラベルやフェアトレードラベルがついた食品はまだ少ないですが、それらを探して選ぶことは大事なことです。そして、商品の写真をSNSにアップしたり、商品を販売しているお店や生産している企業にポジティブなメッセージを送ったりしてみてください。褒めることの力を信じてください!

そして食品だけではなく、自分の洋服やペンなども、ぜひエシカルなものを導入してみてください。自分が慣れることで、人に伝えやすくなります。

私の会社では、「毎日少なくとも1点、サステナブルな衣服を身につける」というガイドラインがあります。私は、今日はオーガニックな下着と重金属のないシューズを履いてきました。世の中には「エコ偏見」ってあるじゃないですか。「フェアトレードチョコレートはおいしくない」とか、「オーガニックシャツは質がよくない」といったものです。でも、「オーガニックシャツを何枚持ってますか?」と聞くと、実は持っていなかったりする。なので、自分で試して、自分が学校になることが大事です。

この時計には、リサイクルされた金属が使われています。平和のために発展途上国で回収した武器を買い取るスウェーデンの会社があるのですが、武器を溶かして「ピースメタル」と呼ばれる金属を作っているんです。そういったメッセージのあるものを身につけることは、日本でもすぐにできるはずです。身につけることで、「時計、かっこいいね」と言われた時に、「実はね……」という話ができます。ぜひ、みなさんもエシカルなアイテムを選んでみてください。

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