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チャレンジから生まれる「もやもや」を楽しもう | エシカルフードインタビュー 平井巧さん

こんにちは。「Tカードみんなのエシカルフードラボ」公式note担当の東樹です。

今回は、ラボの活動に有識者として参画されている、株式会社honshokuの平井巧さんへのインタビューをお届けします。フードロスを考えるアクション「サルベージ・パーティ」を多数開催し、食にまつわることを学び合う場「foodskole(フードスコーレ)」を立ち上げた平井さんに、私たちがどのように「エシカルフード」に向き合うべきか、お話を伺いました。

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平井 巧さん(食の学び舎「フードスコーレ」校長/shokuyokuマガジン編集長/株式会社honshoku代表/一般社団法人フードサルベージ代表理事)
1979年東京都生まれ。新潟大学理学部卒業。広告代理店での企画営業を経て独立。「サルベージ・パーティ®︎」を中心に企業・行政のfoodloss&waste にまつわる課題解決を手がける一般社団法人フードサルベージを設立。食のクリエイティブチーム株式会社honshokuでは、「食卓に愉快な風を。」をキーワードに、食にまつわるコンテンツ運営、クリエイティブ制作、プロデュース等を行う。2020年に食の学び舎「foodskole(フードスコーレ)」を開校。2021年に食のウェブマガジン 「shokuyokuマガジン」を創刊。
shokuyokuマガジン:https://shokumaga.com/

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ー 平井さんは、なぜこのラボに参画されたのでしょうか?
「エシカル」という言葉は、「SDGs」に続くキーワードになるだろうと思っているのですが、言葉って独り歩きする怖さがあるんですよね。SDGsもそうですし、僕が専門としていた「フードロス」もそうです。かといって言葉の定義をしすぎると、情報が固定化されて、受け取る側の思考停止につながることもあります。

そのような前提があった中で、「エシカルフード」という、ある意味新しい言葉を作ろうとしている場を覗いてみたいと思ったのがきっかけです。食に関わる専門分野で活動されている方のご意見を聞けることに加えて、「新しい言葉が作られるところに立ち会う」ということに非常に興味があって、参画しました。

調べると、「エシカル」というのは環境や社会に配慮することを指しますし、「エシカルフード」とはそのような性質の「フード」である、と定義を簡単に説明することはできますよね。ですが、それをどのように自分ごと化するか、暮らしの中に落とし込むか、という段階で、初めて言葉が生きてきますし、言葉が言葉を超えてくるのだと思います。そこが、一番難しいポイントになるはずです。

難しさを乗り越えて「エシカルフード」という言葉を作ることは、その過程自体もよいモデルになるのではないでしょうか。もしかすると、言葉の定義が結局うまくいかなかったり、社会実装しようとしても社会の歯車と噛み合わなかったり、ということが起きるかもしれません。万が一そうなってしまったとしても、やったこと自体に意味があると思うんです。

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ー これから「エシカルフード」が選ばれていくために、どのようなことが必要だと思われますか?


僕は食の学び舎「foodskole(フードスコーレ)」という学校をやっているのですが、その中で、アニマルウェルフェアを実践しながら牛乳をつくっている酪農家さんに授業をしていただいたことがあります。その場で酪農家さんのお話を聞くと、みなさん、こだわって作られた牛乳に興味を持って、ネットなどで購入して「おいしい!」とはなるんですよね。

ただ、大半の方は、「これを買い続けることは、価格的にできない」とおっしゃるんです。これまで、大手メーカーの牛乳を週2〜3回スーパーで買っていた場合に、同じような頻度で買うことは難しいと。そして、そのような方々も、いくつかのパターンにわかれます。牛乳自体の購入頻度を下げてその酪農家さんの商品だけを買い続ける人、大手メーカーの商品と農家さんの商品を8:2などの割合で購入する人、完全に大手メーカーの商品に戻る人、といった具合です。

それでも、「アニマルウェルフェアで作られた牛乳」に接することで変化が起きている人たちがいるので、やはりそうした活動自体は無駄ではないと思います。そして、そのような人たちの話を聞いたり生活に触れたりすることで、もっともっと仲間が増えていくはずです。

だからと言って、オセロのようにすべてが急にひっくり返ったりはしませんし、長い時間をかけて伝わっていけばいいのではないでしょうか。逆に、早く伝わりすぎてしまうと、それは流行りになり、言葉が独り歩きするのでよくないと思うんです。

食べものって、お金などと比べると、特殊な「財」なんですよね。生命維持のために必要な「財」でもあるし、欲求を満たすための「財」でもあるし、心の隙間を埋めるような「財」でもある。そんなものは、食べものだけなんです。だからこそ、食べものの取引や消費は複雑です。そのため、スピード感を持って広げるより、一歩一歩着実に進める方がいいだろうと思っています。

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平井さんが面白いと感じる、「エシカル」に関連する取り組み事例があれば教えてください。

ファーメンステーションさんの商品は面白いですね。岩手県の水田で作られたお米から、発酵の技術を活かしてエタノールを抽出して、虫よけスプレーなどを作っています。お米からエタノールを作る工程で発生する発酵粕を、鶏のえさにする、ということもやっているそうです。

ですが、エシカル商品を売ることの難しさは常にありますよね。やはりコストがかかって価格が上がりますし、消費者は最初だけ興味を持って買ってくれますが、似たようなスペックのものがあると大手メーカーの商品に戻ってしまいます。

ー 「自分のために買う」から「誰かのために買う」というマインドチェンジが必要なようにも思います。

僕もそう思いますが、マインドをぐるっと変えないといけないので、難しいですよね。やはり、どうしても今の時代って「わたし、わたし」じゃないですか。自分を持ちましょう、とか、自分でやりたいことを見つけましょう、とか。

でも、誰か困っている人のために、といった発想にどんどん切り替えていかないといけないと思うんです。選挙でも、「この人に投票すると、自分にどのようなメリットがあるか」と考えることが多いですが、そうではなくて、「僕はいいから、他の困っている人がどう助かるのか」という視点で投票してみるとか。そういった消費の仕方が、今後大切になってくるんじゃないかなと思います。

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ー 最後に、「エシカルフードアクション」を始めたい場合、どう取り組めばよいか教えてください。

たくさん、もやもやすればいいと思います。

以前であれば、「まずはこの酪農家さんの牛乳を買ってみましょう」のように、具体的なことを言っていました。もちろんそれもいいですが、その先に必ずもやもやがあると思うんですよね。「このまま、この酪農家さんの牛乳を買い続けた方がいいのかな」とか、「でもお財布に厳しいな」とか。買い続けられないことが「減点」のように感じられて、落ち込んでしまったりするかもしれません。

そのように、いちいち出てくるもやもやを、楽しめばいいと思います。僕たちの世代で、ものごとを100%変えることはできません。やることはやった上で、どうやって最適な形で次世代にパスするか、が大事だと思います。自分たちの世代だけで全て解決しようと思わずに、存分に色々なことにチャレンジして、壁にぶつかって、もやもやして悩んでみてください。

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