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『永遠に続く嵐の年』(2021年)

冒頭、「創造は足すことではなく引くことによってなされる」というロベール・ブレッソンの箴言が引かれ、パンデミック下における芸術行為はむしろそうした状況こそがスパイスとなって功を奏するのかと理解される。

が、もちろん彼の名に恥じる作品もなくはないわけで、というかそもそもオムニバス映画は個々の作品の優劣を気にしてしまいがちで総評がおろそかになってしまうこともあり、コロナ禍での映画製作を試みようという趣旨からしてどうかとも思う。

つまり一度このような「つまらない」方針を打ち出してしまうと、方針に馬鹿正直に従った結果それはないでしょうという作品もある一方で、これに背けば背くほど面白い映画ができあがることも見込めてしまう。むべなるかな、現代映画の最前線に位置するデイヴィッド・ロウリーの小品Dig Up My Darlingには胸を打たれる。

スマホ時代に手紙を用いる反時代的な心意気。徐々に明らかになる前世紀の感染症。そして『ア・ゴースト・ストーリー』の作家による生者と死者、時間と空間の捉え方。この声をいつか誰かが聞き取ってくれる0.1%に懸けている点が好きだと気づいた。特筆すべきは手紙の使い方で、ジルベルト・ペレスがキアロスタミの短篇で一節書いたようなことができるかもしれない。

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