小田急線

2月11日


私の部屋に置かれるくしゃくしゃな洗濯物が少なくなり乾くのは遅くなった 鼻腔を擽る乾き物 特有の匂い「行ってらっしゃい」「行ってきます」繰り返した暮れの夏 私の家に彼がきてから 毎週金曜日のあの時間を少しだけ楽しみにしていた


彼が好きだった 「金曜日の夜の幸せな答え合わせも」って歌詞の意味も今なら少しだけわかったよ お互いにプレイリストのハンドルネームしか教えることができなかった 夏を抜け出して季節がいつの間にか冬を迎えていた

 

純愛物のラブストーリーのような濾過した水のような関係にはなれなかったね「今から会える?」って呼んだら 東京メトロにユラユラ揺れながら イヌのようにやってくる そんな私が彼と出会ったのは 岡崎京子が好きな友達の紹介 「あなたには一緒にフェスで騒いでくれたり、ふとした時に一緒に泣いたり出来る人がいいよ」って会う度に言い聞かせ勝手に酔い潰れる困った人だった 中野駅から徒歩2分 立ち飲み屋さんのおかやんで半ば無理やり合わされた人だった


アジカンのムスタングから始まる 名称未設定のプレイリストは私と彼の交換日記みたいなものだった。同じようなものが好きだった私たちは1日ずつプレイリストを追加するようになった。


私の家は彼の家から、各駅停車で7駅目に住んでいたからyonigeの「各駅停車」や 今年イチ押しの花火大会!なんていうお題のテレビ番組を観ながら 「花火大会に行こうよ」って約束した次の日には、back numberの「わたがし」が追加されていた。アップリンク吉祥寺で一緒に観た「愛がなんだ」を観た後にはHomecomingsの「Cakes」が私の耳に流れてきた。


どんな人がタイプなの?って聞いたら、その時の自分がしていた姿を目の前で挙げられて 「……みたいな人かなって」笑顔で言っちゃうような口上手な人だった 「愛がなんだ」を見た時に私の名前を呼んで少しだけ泣いていたことをいまでも想い出す いまだに更新される彼のプレイリストを聴きながら ガタンゴトン、彼と最後に出会った時に追加された indigo la Endの「通り恋」とともに少し春の訪れを感じた0211





今回書いた、2月14日は8月31日の女性視点のお話です。

8月31日は男性視点の目線で一夏の恋を書いてみました。

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