
奇跡のキャンプ場のつくり方 #9 収益を目標にしない(売上を減らす)
「収益」は目標ではない
経営をしていると「収益」というのは、一つの目標になります。
「収益」を上げることで、会社やそこで働く従業員が経済的に豊かになるので、当然のことと言えるでしょう。
しかし、「バルンバルンの森」では、「収益」を目標にはしていないのです。
こういった話をするとすぐに、「経済最優先派」と「経済反対派」と二分して考える人がいますが、「バルンバルンの森」は、このどちらに所属するのかといった話ではありません。「バルンバルンの森」は、このどちらにも所属していません。いずれの考え方も、極端すぎるからです。
ここで言いたいのは、「収益は大切だが、それを目的にして、自分たちを見失ってしまうと、結果として、長い目で見た時に、収益増にはつながらない」ということです。
「バルンバルンの森」では、収益を減らすような施策を打って、結果として収益を伸ばしています。
「バルンバルンの森」には、宿泊者自身がテントを張って宿泊することのできる「フリーサイト」スペースがあります。
ここは、元々25張のテントを受け入れることができます。
しかし、ある時から25張受け入れれるところを15張に制限したのです。
普通はキャパシティーの限界まで受け入れるはずです。
1張、仮に4000円とすると、15張では6万円、25張だと10万円の収益になります。
その差、4万円。これが、何日、何十日、何百日続いていくと考えると、かなりの収益差が生まれます。バルンバルンの森は、この制限をしました。なぜなのでしょうか?
答えは、バルンバルンの森の「目標」にあります。
バルンバルンの森の「目標」は、ゲストに「家族や友人での幸せな時間を提供すること」にあります。


結果として「収益は増える」
25張のキャパシティーのフリーサイトに25張を受け入れてしまうと、人が多くなって、何をするにも混雑したり、ざわざわし過ぎたりして、特別な人との特別な時間を過ごすことがしにくくなってしまいます。
一人一人が森での時間を満足して過ごすためにも、こういった制限を設けているのです。
フリーサイトだけでなく、バンガローの収容人数も9人のところを4人にするなどしていたり、さらには、元々大部屋として、宿泊客を受け入れていた、集会室は、宿泊客の受け入れをやめたりしました。
集会室については、今は「森の読書室」になっています。
「森の読書室」は宿泊客がゆっくりとした時間を過ごすための読書などをする空間となっており、宿泊の際の楽しみの一つにもなっています。
このように、「収益を減らす」ような努力をしていくことで、結果として、客室の稼働率は上がり、宿泊者数や収益は増加しているのです。
収益増を目標にしないことで、結果として収益は増えています。
収益ももちろん大切ですが、大切なのは、自分たちの「真の目標」なのではないかということです。
佰食屋との共通点
目標を売上に置かずに、「売上を、減らす」という考え方をしている飲食店に「佰食屋」があります。
「佰食屋」は、京都にある国産牛ステーキ丼専門店で、文字通り、一日百食を提供するという経営手法を取っています。
この「佰食屋」は、「売上ファーストではなく従業員ファースト」という経営方針のもとに、売上よりも従業員の働き方に重きを置いています。
従業員の残業はさせずに、一日百食を提供したら、そこで終わり。早く売り切れば、従業員は、早く帰れるようにしています。
目指すのは「売上至上主義からの解放」と言っていますので、売上を目指すのではなく、決まったものを売上、その中で、従業員が幸せに働けることを目指しています。
なので、「売上を、減らす」という考え方をしています。
詳しくは、「売上を、減らそう。」(中村朱美)という本の中で書かれています。
「従業員が幸せに働くために、売上を減らす」という考え方は、「みんなが笑顔になれる空間を作るために、売上を減らす」というバルンバルンの森の考え方に、近いものがあります。
「売上を減らす」「収益増を目指さない」
大事なのは、売上や収益よりも「従業員の働き方」だったり、「訪れる人の心地よさ、満足」だったりするのではないでしょうか?
まだまだ、売上至上主義、拡大路線を目指す社会の風潮に、一石を投じるのが、佰食屋であって、「バルンバルンの森」でもあるのです。