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kindleで本を著作権侵害されて刑事告訴を検討した話

こんにちは。あるいはこんばんは。
今回は私にとって良くない話をします。おそらく読んだ人の気分を害することも書いてます。しかし、愉快な話でないとしても著作権侵害をされた際の対応の記録はすべての権利者と善良なる人類のために残しておくべきと考えました。
不快と感じたら最後まで読まずに離脱することを推奨します。

侵害の発覚

2022年1月26日。私は震えました。
Amazonで「ズルいエンジニア」と検索すると、私の本と非常に良く似たものがヒットしたのです。言いようのない恐怖と不快感が私にとりつきました。そして客観的な意見を聞くためにツイートをしました。
多くの意見が著作権侵害を疑うような感想でした。

侵害箇所は以下です。
黄色塗部分は同じ表現、緑は言い換えの模倣です。デザインも配色も似てます。偶然の一致では説明できないほど全体的に似てます。
本ページではAmazonで公開されている表紙と無料公開範囲の目次を引用して類似点を比較します。

さらに目次です。まず私のものです。「真面目であることをやめろ」というだいぶ尖ったことを書いてます。
見出しも「処世術1」「処世術2」と、独特の表現です。

次に模倣品の方の目次です。「真面目を捨てろ」と極めて似たことを書いてます。「処世術1」「処世術2」と見出しの表現も同じです。

誰に見せても侵害だとのリアクションがほとんどでした。
だいぶ個性的な内容なものをここまで似せるとは。明らかに私の著作を模倣して書いてます。

Amazonへ著作権侵害の申し立て

出版社からすぐに申し立てをしてもらいました。商品ページの下部から訴えることができるのです。
Amazonからは調査の時間をくれと言われました。
そして一か月以上経過した2022年2月28日になって、以下のような回答がきました。

ご指摘いただきました以下商品につきましては、貴通告に記載の内容を検討いたしましたが、現時点では http://Amazon.co.jp サイトでの販売を停止する判断には至りませんでしたので、ご報告申し上げます。

時間がかかった割に不誠実極まりない対応でした。

Amazonの問題点

kindleはここ数年個人で出品しやすく改善されています。そのため、個人が誰かにチェックを受けることなく電子書籍を販売することができます。言ってしまえば、同人誌と商業誌が同じように売っているようなものです。しかも消費者にはそれが区別できません。

個人出品が多いためかパクリ本が非常に増えているのですが、これはプラットフォーム側で自浄作用を持たなければなりません。ましてや通報があっても対応しないとは、あってはならないことです。
彼らは私たちの商品によって利益を得ています。商品の価値を毀損するような権利侵害をさせてはいけませんし、不正に加担するような行為はあってはならないことです。Amazonはこのパクリ本によって利益を得ているのです。ご大層な立場ですな。

もっと細かいことを言うと、Kindle Unlimitedで露出するからと頼まれて本作を2021年の11月にKindle Unlimitedに加えたのです。
Kindle Unlimitedというのは定額で対象の本が読み放題になるサービスです。読まれたページ数に応じてお金が入るらしいです。
はっきり言って、私の本はKindle Unlimitedの「ストアの人気タイトル」枠で露出されてめちゃくちゃ読まれました。ランキングがめきめきとあがっていて異常でした。しかし、それによる私への印税は思ったよりだいぶ少なく924円でした。著者にメリットがないので、Kindle Unlimitedはやめてもらいました。
11月はずっとランキング上がりっぱなしだったのですが、ほとんど収入にはならなかったのです。

1200という順位はめちゃくちゃ高いわけではないですが、既刊のビジネス書がこの順位を維持できていたというのは驚異的だと思います。

露出して目立ったせいか、11月24日にパクリ本が登場しました。こいつもKindle Unlimitedです。パクリ本は創作のコストが低いので、少ない労力でお小遣い稼ぎができればいいのかもしれません。

最大の問題は、こういった場合に取れる対抗措置がないことです。出版社を通して世の中に出た本ならいくらでも当事者同士でやり取りができますが、Amazonに出品されたものはAmazonを通してどうにかするしかありません。そのAmazonが取り付く島もないわけで、事態をややこしくさせてます。

我々はAmazonの依頼に応じただけなのに、どういう仕打ちなんですかね。てめぇの要望は聞いてもらいたいけどこっちの話を聞いてくれないってゴミクソですね。友達だったら縁を切るレベルです。損害額が大きかったら訴訟するレベルです。

その後も問い合わせしましたが、何も事態が好転することはありませんでした。Amazonのことは嫌いになりました。

でも、ネットを見ても本の権利侵害を訴えたら誤って自分の方が削除されたというブログがあったので、Amazonの対応は期待してはいけなかったのかもしれません。

公益社団法人著作権情報センター CRICに著作権侵害の相談

法律事務所で働いてる身内に言われて、CRICに無料相談しました。
本の表紙や目次は著作権が発生するので、法的措置がとれる可能性があるとのことでした。

民事責任と刑事責任を問うことができますが、自分で弁護士を雇って裁判したくないので、刑事告訴をすることにしました。
刑事告訴は相手を有罪にするってことです。著作権侵害は親告罪なので、有罪になれば相手は犯罪者です。
なんだか気分が重くなりました。なんでこっちがこんなに疲労しなければならないのか。理不尽さにイライラしてきました。
ただ、表紙や目次は著作権法で保護されるということを聞けたのは朗報でした。

警察に著作権侵害の相談

これもまたテンションが上がらない話です。
CRICからサイバーセキュリティの電話番号を言われたのですが、全然繋がりません。日を改めて何度かけても繋がりません。ネットで調べてもこの番号にかけるしかなさそうだったので、繰り返しかけました。ダメでした。

しかたないので、#9110にかけました。これは何でも相談できる便利な窓口で、住民相談係を名乗る人に繋がりました。
専門の担当が相談を受け付けるので、「予約して警察署に来てほしい」と言われました。平日日中のみとのことです。

出た。サラリーマンのユーザーエクスペリエンスなんて一切考慮されてない組織の対応。しかし、私は絶対に訴える覚悟だったのでその場で予約しました。

バスを乗り継いで、約束の5分前につきました。
警察署に入ると、多くの署員がいました。誰もこっちを見ない。挨拶もしない。
懐かしい。営業マン時代にこういう誰も挨拶をしない営業所が一つだけあったのを思い出しました。ろくな展開にならないことを早くも覚悟しました。

どれが窓口でどこに相談したらいいのかまったくわからず、客を迷子にさせるUIなので、きょろきょろして目があった人に聞くと、「座って待っててください」とのこと。
きっちり5分待たされて「相談室」という名のパーティションに仕切られたスペースに案内されました。

「今日は誰かと約束があったんですか?」
「電話で相談員の三浦さんと話して、著作権侵害がわかる人と本日9時に相談する約束してました」
「そうなんですか。三浦は今日休みなんですよ」
「三浦さんに言われて仕事休んで来たんですけど、聞いてないですか?」
「すみませんが聞いてません」
は?お前らクソなの?アナログな受付しかできないくせに電話番すら仕事できてないの?こっちは休み取って花粉浴びながら来てやってんのに。死ねばいいのに。
「私で良ければ話を聞きますので。ご用件は・・?」

仕方ない。目の前の男に罪はないのかもしれない。
これが仕事だったらこういう組織とは絶対に一緒に仕事しないが、無理やり気持ちを切り替えて、著作権侵害のことを訴えた。

「なるほど。確かに目次までそっくりですね。でも表現が違うのでこれを違法とまで言えるかどうか」
「でも偶然こんな風に一致しないですよね。明らかになぞってますよね」
「確かにそうですね。いったん預かって考えさせてください。また連絡します」
「連絡を受けたら、僕はまた平日日中に来なければならないですか?」
「そうですね」

一時間で進捗はこんなものだった。思ったより理解は得られたが、手ごたえは薄い。ここまでの過程ですっかり心がすさんでしまった。

警察署の最終回答

一週間経過して返事遅いなーと思っていたころの3/24にやっと連絡が来た。生活安全課を名乗る担当者から電話越しに伝わるテンションでダメだったんだなってことを察する。
めっちゃダラダラ言われたので要点を書いていく。

著作権違反で捜査を進めるのは無理。まるっきり同じレベルじゃないと刑事責任を問うことはできない。
例えば、表紙なら独自の画像があってデザイン性(背景画像)があるものをそのまま盗用されたら著作権侵害の対象になる可能性。
言葉については単語レベルでかぶってるくらいだと無理。

「じゃあ、パクリ本はやりたい放題になるわけですけどいいんですか?」
「いいか悪いかだとよくはないけど、刑事責任を問うことはできない」

「こういうことされると創作物は成り立たなくなるんですが、法律で守ることはできないんですか?」
「民事訴訟をやってほしい。刑事責任を問うことはできない」

「一言一句同じじゃなくても、検索結果には並んで出てきます。表紙の雰囲気も似てるし間違って購入する人もいるかもしれないですよね」
「民事訴訟をやってください。今後も同じようなことが続いたら警察署に相談をしてください」

「例えば警察から警告とかしてもらえば解決するかもしれないんですけど」
「違法ではないのでできない」

だいたいこんな感じ。
こうなるだろうなって気はしていた。僕も法学部で4年間法律は勉強してきてるんで、難しいことはわかってる。そんなことはわかってるが、不法行為なのも明らかなのだ。矛盾を感じてむなしくなった。

ゼロから何かを創作するのってものすごいエネルギーを消費して人生を切り売りするようなことなので、何もせずに看過できるわけがない。
表紙のデザインしてくれた人や編集や制作にかかわってくれた多くの人の情熱とか想いとかいろんなものが込められていて、当然金銭的な対価も発生すべきものだしすべての権利は守られなければならない。不当に誰かに侵害されるなんてたまったものじゃない。

パクリ本の内容

殺意を覚えながらもパクリ本は買って読みました。
内容ははっきり言って似てません。自身の経験や思想によるオリジナルです。たった30ページですし、そんなにめちゃくちゃおかしい内容でもなかったです。その代わり「ズルいエンジニア」の本でもありませんでした。何がどうズルい処世術なのかは不明です。このことから、人気本をパクって読まれれば、内容は何でもいいと考えていたと推測できます。ほんっとクソ野郎です。死ねばいいのに。

最後に

だいぶ無駄な工数をかけてしまいました。なので、本件はもう終わりにします。パクリ本のレビューコメントにチクリと文句を言ったので、もし僕に同情してくれる人がいたらそのコメントの評価でもお願いします。

最後にやけくそで最新作の宣伝もします。
普通のサラリーマンがなんでバズったりトレンド入りしたり作家になったりできたのか。なんでクビ寸前の末端メンバーのエンジニアが、いきなりプロジェクトマネージャーとして活躍してるのか。そういうことが地に足のついたノウハウとして本にまとめたものがこれです。読み物としてもするする読めるように頑張ったので、ぜひどっかで立ち読みでもしてやってください!

ほんっとに創作物って周りからの評価がモチベになるので、応援がないと継続は無理です。やる気が削がれると創作活動に悪影響を及ぼすのは言うまでもありません。
権利者に損害を発生させるような侵害はマジでやめましょう。

最後の最後に、パクられるほど面白い本も紹介しておきます。真の最高傑作なので気になったら読んでやってください。絶対によそのビジネス書では書けないようなネタがてんこ盛りです。


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