見出し画像

有機栽培で安定生産するには?

こんにちは、こんばんは、雇われ有機農家 Notari です。

今回は2018年9月に発表された

A global meta-analysis of yield stability in organic and conservation agriculture Samuel Knapp & Marcel G. A. van der Heijden(有機農業・不耕起栽培・慣行農業における収量安定性のグローバルなメタ分析)

を引用させていただきます。

メタ分析とは沢山の研究事例を考慮してより良い結論を導く分析方法です。

この論文では2896個の事例を参考にしています。


近年、予測不可能な気候変動や病害虫発生などが頻発しています。

自然は不安定そのものですが、

それでも農家は規格や出荷日に合わせて、安定的に農作物をつくることを求められます。

農作物の安定生産はこれからの時代の課題になると思います。

有機農業の安定化が難しい理由

有機農業は特に安定化が難しいとされています。

論文によると、窒素不足の圃場では、収穫量の安定性は慣行農業に比べて42%[11%〜81%]低下するとしています。*Relative stability

収穫量が安定しない理由として、

①雑草

雑草が吉とでることもありますが、基本的には日光と養分の競合が起き、収穫量の安定性を下げると考えられます。

②有機肥料の遅効性

化学肥料と違い、有機肥料は作物が吸収するまでに時間がかかります。作物の食べ盛りに肥料を与えるのが難しいです。

③有機農業向けの品種が少ない

多くの品種は農薬・除草剤や化学肥料が前提の慣行農業向けに作られています。そのため、様々な病害虫への抵抗性や雑草と競争力が低く、影響を受けやすいと考えられます。

有機で農作物を安定的につくるコツ!

①緑肥(カバークロップ)の利用

緑肥を使うことで、土壌生物が活性化して、有機肥料は作物が吸収できる形に変わりやすくなり、雑草の抑制に役立ちます。

②施肥

有機農業においても慣行農業と同じ量の養分を施肥することで、収穫量が安定化します。最適な資材選びと養分計算が必要です。(有機農業の施肥設計と肥料計算については今後解説しようと思います。)

③輪作+多品目栽培

輪作しながら、異なる作物間の正の相互作用(コンパニオンプランツなど)を活かした栽培体系では収穫量の安定性が高いとされています。

雇われ有機農家が思うこと

目新しい技術があったわけではないですが、科学的な裏付けがあると自信を持って緑肥などの方法を使えます。

有機農業の品種の問題は大きいなぁと思いました。最近の主流品種はF1です。とても優秀ですが、化学肥料が適しています。5年間自分の畑で種取りをすればF1品種からでも農法と農地に適した優れた固定種が作れると言われています。面倒ですが、種苗法が改正される前に雑草や病害虫に強いオリジナル品種を作ることも必要かな~と感じました。

この論文では慣行農業と不耕起栽培も比較しています。驚きだったのは慣行農業から不耕起栽培に移行すると、収穫量は5.7%下がるが収穫量の安定性は変わらず、品種によっては慣行農業より収穫量が高くなるそうです。耕耘しなくても大して変わらないなら、作業時間の削減になります。

台風がきて、その産地の慣行農家は大打撃を受けたが、有機農家はなんともなかった。みたいなニュースをよく聞きます。緑肥や輪作には大雨による土壌侵食や養分流出を抑える効果もあるので、気候変動に強い土づくりをして収穫量の安定性を少しでも高めようと思いました。


Notari

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?