マーケティングの「メガ盛り症候群」と「断捨離」、「Nice to have」と「Must」

<前説>

仕事を通じて、様々な機会で、様々な企業や様々な人たちのマーケティングに触れることがあります。

マーケティング論とかブランド論とかコミュニケーション論とかは相変わらず、というかますます百家争鳴状態で、「それは理論じゃなくて単なる考え方じゃない?」とか「それってあの話を難しく不思議な言葉で置き換えただけじゃない?」とか思ったりすることも多々。

また、実際のマーケティング戦略に接したり見聞きしたりした際にも、「確かにあのフレームワークには則っていて、一見いかにもちゃんとしているように見えるけど、空いたマスを埋めているだけで何にも心に響いてこない」=「仏作って魂入れず」なこともあり。

そんなことに遭遇した時の記憶と思いを、備忘録としてつらつらと書いていこうと思います。

※なお、今後も含め、記述内容に関しては、後から色々考えて追加・削除など変更する場合もありますが、その際には変更前の記述と、変更した理由も記していくこととしますので、ご了承ください。


<本文>

今回は、マーケティングにおける断捨離に関して。

前回の「最大公約数と最小公倍数」と重複する部分もあるのですが、ブランドの定義におけるパーソナリティ・ベネフィットの表記や、外部企業へのブリーフィング内容での「カバーしなければいけない項目」の記載といった際によくある「メガ盛り症候群」の話です。

ブランドの担当者・企業側からしてみれば、大切なことだしお金もかけているんだからあれも言いたい、これも言いたい、それも加えたい、こんなことも詰め込みたい、あんなことも入れ忘れないように、という気持ちになるのはわからないでもありません。

でも、そんな「メガ盛り」にしたら、結局は顧客(潜在顧客含む)の頭の中には何も記憶が残らない、って本当は♫わかっちゃいるのにやめられない、のが担当者の性。もちろん、上司や周りから「あれは入れなくていいのか」「何でこれが入っていないんだ」というプレッシャーを受けての結果、ということもあるでしょう。

昔よく言われていた、「家に帰ってお風呂から上がってビールを飲みながら見ているテレビCMには『そんなに色々言ったってわからないよ!』と一人ツッコミを入れるのに、いざ自分が当事者側になるとそんなことすっかり忘れて「これも加えてもらわないと困るんです」とかもっともらしい顔で言い放つ、ということですね。(それを逆手に取った?某外資系カジュアルコスメブランドの「超早口まくしたて息継ぎなしナレーション」手法はもう芸術の域でしたが(笑))

で。

そんな場に出くわした際に、よく使っていたのが

「それってNice to haveですか、Mustですか?」

という言い方でした。

「加えた方いいのでは、というようなレベルのものならやめませんか?これをなくしたら意味をなさない、というどうしても必須なことだけを、優先順位をつけて考えないと、結局どれも記憶に残らない、という最悪な状態になっちゃいますよ」
という意味ですね。

「そんなことはない、これとあれはこういうことで繋がっているし、それはこれを意味付けるために大切なんだ」とかいう反論も受けるかと思いますが、その際は
「それはあなたがそのことに関してとても詳しくその背景もよく理解している当事者だからで、そこまで知らない顧客にそれだけの理解・記憶を期待・要求するのはちょっと厳しくありませんか?」
「それをやって本当に重要なメインポイントすら記憶されない状態になったら元も子もないですよね」
と説明することにしています。
もちろんその場合は、その優先順位を相手に納得してもらえるだけの調査などへの深い分析が必要で、表現においてもしっかりインサイトを反映した優れたアイディアが重要となることは言うまでもありませんが。

「あったらいいんだけど、なくてもなんとかなる」ものを捨て、「これだけはないと成り立たない」ものだけを残すことで結果として相手の顧客への強い記憶(=ブランド)を効率的な人的・金銭的資源投資とともに狙う、という「マーケティングの断捨離」。捨てる勇気と優先順位をつける勇気、そしてそれを関係者に説得し納得してもらうための勇気と根気と忍耐力と気力と体力。冷たい水の中を震えながら登って行きましょう。ファイト!


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?