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『旅先で食べたもの・1』

 この話は2010年11月にトラベラーズノートのウェブサイト「みんなのストーリー」に掲載された旅のストーリーです。現在も掲載されています。そのままここに掲載いたします。現在も「みんなのストーリー」に毎月一作旅の話を書いています。これは掲載第37作目です。この話から写真を挿入するようになりました。

 毎月1本コツコツと書き続けてきた旅のストーリーも今回から4年目に入った。いつも楽しみに読んでくれる友人達の一人から、ストーリーに写真があっても面白いという指摘があった。
 文章だけで3年来たが、写真のストックからいいものがあればこれから載せていこうと思う。ただ、ほとんど食べ物の写真になってしまうと思うけれど・・・。
 これを書いているのはもう11月がすぐそこに見えている時期である。 今年も今日まで多くの方々に出会い、出会いが出会いを生み、今後も末永くお付き合いしていだだきたいと思う方々にたくさん出会うことが出来た。
 その中の一人で西麻布にある行きつけのRainyday Bookstore & Caféの店長に紹介していただいた料理家の枝元なほみさんも出会いが出会いを生んでお会いできたお一人だ。
 枝元さんは講演・料理教室・取材・キャンプ等で日本のみならず、世界中を飛び回っている。出会ってからその美味しさを知ったごはんのおともである枝元さんお手製のラー油がなくなると、月に4回ほど青山のFarmer’s Market に出店される枝元さん主宰の「チームむかご」のブースへ買いに行く。
 枝元さんがいらっしゃらない時は、アシスタントの通称ヨッシー嬢と、短い時間ではあるが、立ち話をし、枝元さんが今どこを旅しているのかを教えてくれる。最近では、昨日は山口で今日は北海道というスケジュールに溜息が出た。
 8月の猛暑の一日、枝元さんからメールをいただいた。猛暑の中台湾で湯気の立つ食べ物の取材に行ってきたとのことだった。作るだけではなく食べるのも仕事なのは大変だなあと思った。それにあの暑さだし。
 台湾と聞いて食べたくなるものはあれだなと思い、写真とシンガポールで買ってきて食べて以来気に入ってしまい都内でやっと見つけて入手したカヤジャムをお土産に持ってFarmer’s Marketへ出掛けて行った。
 航空会社に勤めていた頃、台湾は担当地区だったので台北にも高雄にも頻繁に行った。
 1999年の12月のある週末に、羽田空港から中華航空で台北へ行った。今でも可愛がっていただいている先輩のEstherと Sabrinaのご家族と食事をするのが目的だった。
 その時に滞在したホテルはダウンタウンにあるHoward Plaza Hotelだった。仕事で来て滞在した時にホテルの都合で一度スイートルームを与えられたことがあったホテルだ。
 Esther と Sabrinaのご家族と楽しい夕食の時間を過ごした次の日の朝、東京へ帰る前にホテルの近辺を散歩してみようと思い、ブラブラと歩き始めた。
 日曜日の朝だけに町は静かだった。12月だか日本に比べればそれほど寒さは感じなくて、歩くにはいい気候だった。
 10分も歩くと湯気が出ている一角に人だかりが出来ているのが見えた。近寄って行くと、そこは豆乳のお店だった。そこで出会ったのが蛋餅(タンピン 写真左)と.飯團(ファントワン 写真右)である。

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 作っているところを見てこれは美味しいに違いないと思った。蛋餅(タンピン)は溶いた卵を薄く重ね焼きしたもので、具をトッピングしたり、そのお店で用意されている醤油やソースをかけて食べる。三年前に再訪した際に食べた時は何もかけた記憶がないので中に何か具が入っていたと思う。
 飯團(ファントワン)ははもち米の中にでんぶ等の具や、おかゆにお好みで入れる油條(揚げパン)を人の手の力でギュッと圧縮して入れたものなどが入った棒状のおにぎりである。
 作り方は日本の海苔巻きのようであった。これは本当に美味しい。このお店が写真のように日曜日の朝なのに賑わうのも頷けた。(写真奥に見えるように店内にも待っている人達がたくさんいます)

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 1999年に出会ったこの味を再び楽しめたのは2007年だった。台湾には美味しいものがたくさんある。日本で発行されている台湾のガイドブックにも、台湾グルメの本にもこの伝統的で定番の朝ごはんはあまり詳しく載っていない。
 小籠包もいいが、台湾と聞いて真っ先に頭に浮かび、食べたくなるものはこの蛋餅(タンピン)と飯團(ファントワン)だ。
 2007年に当時約6年振りに台北を訪れた時、Howard Plaza Hotelに宿泊したので滞在中の朝食は全てここだった。毎朝歩いて食べに通った。
 いつになるかわからないが、次回ここを訪れる機会があったら、豆乳も現地の方々と同じようにしっかりと飲んでみようと思っている。
 朝の散歩の途中でその国の代表的な朝ごはんに偶然出会えたのは旅ならではだ。ホテルで朝食を済ませなくてよかったと心から思った。一歩踏み出せたお陰でこんなに美味しい朝ご飯に出会えたのだから。
 炎天下の中、Farmer’s Marketのベンチで枝元さんと写真を見ながら蛋餅(タンピン)と飯團(ファントワン)を初め、台湾の食べ物のことを主として旅にまつわる話をした。旅もお好きな枝元さんとの会話はいつも楽しい。嬉しいことに出会って以来毎月僕のストーリーを読んでくださり、コメントもくださる。
 台湾に行くと食べたくなるものがこの他にもいろいろとある。高雄で何度も食べた牛肉麺。これは高雄で食べる度に高雄にいること、台湾にいることが実感できる味だった。
 仕事で夜高雄に着くと、ホテルの近くのローカルな専門店に行って食べ、リラックスしながらも翌日からここで仕事なのだと気持ちを切り替えた。
 豚の角煮を饅頭に挟んだもの。これはコース料理の途中で出てきて知ったものだが、台北市内のあるレストランで食べたものが一番美味しいと思った。
 ちまきにチリソースを付けるとさらにおいしく食べられることを知ったのも台北だった。台湾ビールを飲みながらまたそれぞれを食し、舌鼓を打ちたいと思う。
 2007年以来ご無沙汰してしまっているEstherや SabrinaにVincent、2001年以来会っていないJohnny達に会いにまた台北に行きたくなった。みんなに久しぶりに会いに行きたいと思っているのと同じくらい、蛋餅(タンピン)と飯團(ファントワン)の朝ご飯を食べに台北へ行きたいと思っている。


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