「新訳 動物園が消える日」のための取材ノート -23(栗林公園動物園跡地)

画像1 日本を代表する庭園のひとつであり、四国屈指の名勝でもあるこの園には、非常に古い時代から動物園が設けられていた。戦前の1930年に開園し、最初期の日本動物園水族館協会加盟園にも名を連ねる、栗林公園動物園である。 香川県高松市 栗林公園にて。
画像2 財団法人が運営し、ゴリラやナマケモノの繁殖に成功したことでも知られていた栗林公園動物園は、経営難により2002年に休園。2004年には完全に閉園となった。跡地は駐車場に姿を変えているが、ここが動物園だったことを示す石碑が残されていた。考えてみれば、「日本三名園」の後楽園、兼六園、偕楽園には動物園は設けられていない。また、日本各地に点在する「お城の中の動物園」も、城跡の再整備とともに縮小したり存廃が問われている。
画像3 栗林公園はいま、日本庭園の池を彩る錦鯉を復活させるために寄附を募っている。園を構成する要素として生きものの姿は求められているが、志向されている目標は「動物園の復活」ではない。文化政策・訪日外国人向け観光政策の中で「日本伝統文化」の発信地として光が当てられている日本庭園や城跡と、「動物園」は相容れないものと見なされているのかも知れない。「日本の動物園」もすでに長い歴史を刻んできたが、次代にどのような形で残されていくのだろうか。