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ノソノスキー先生のモダン講座:MF横浜調整記〜青黒フェアリーとともに駆け抜けた3日間〜


Translated by nosonosan

やぁ、ノソノスキーだ。また会ったな!
みんなはMF横浜は楽しむことはできたか?!俺はもう最高だった。本当に最高だった。GP本戦は初日落ちという結果に終わってしまったが、俺にとってこのMF横浜は今までのマジック人生の中で最高のイベントになったんだ!


マジックプレイヤー(特に俺たちのようなアマチュアプレイヤー)にとって、GPのような大舞台でフィーチャーテーブルに呼ばれることはひとつの夢だと思っている。そして、その順番がついに俺にも回ってきたんだ。しかも、相手はなんとあの"Blazing Speed"ショウタヤソオカ!マジックプレイヤーとして興奮しないわけがないだろう?!対戦結果は...まぁ、察してくれ。俺もなかなかにBlazing Speedだったんだぜ(負け方が...

そしてもうひとつ、ミシックチャンピオンシップ(旧プロツアー)はマジックプレイヤーの大きな目標であり夢であることは間違いないだろう。幸運なことに遂に俺も、今回のMFにおけるMCQで優勝し初めてのミシックチャンピオンシップへの参加権利を手にすることができたんだ!

素敵なカバレージに心から感謝

忘れもしないGP神戸2014準決勝。スイスラウンドを1位で駆け抜けプロツアーの権利を獲得した俺たちの仲間が《溶鉄の雨》を打たれて敗れたことをきっかけに生まれたチームが、そう『モルテンレイン』だ。いつかは俺たちもあの胸が高鳴る大舞台へ行けたらと結成されたチームではあったが、今では地方でなんとかマジックとの関係を繋ぎ止め、数人で遠征に出るのが精一杯なチームというのが正直なところだ。そんな状況の中、チームの中からましてや自分が夢の舞台への切符を手にするなんてまるで夢のようだったよ。

チームのみんなでカバレージに載るのが夢だった。
前髪が若干"キテいる"気がするが光の加減のはずだ(震え声...

そこで、今回はいつもの戦略的記事とは趣向を変えて、このMF横浜に向けての調整の軌跡をお届けしたいと思う。


-青黒フェアリーとの出会い

フェアリーがスタン現役だった時のことはよく知らないが、イラストの美しさや青黒というカラー、《ヴェンディリオン3人衆》というカードに惹かれて、《苦花》がモダンで解禁されてからデッキだけは組めるようになっていた青黒フェアリー。ただ、せっかく組んでみたもののデッキのパワーはお世辞にも高いとは言えず、俺の実力ではカジュアルですら楽しむことができないほどだったため、すぐにタンスの肥やしになってしまったんだ。本当に好きなら勝てるまで調整するのが筋かもしれないが、俺にはただ好きだという理由だけではデッキを握ることはできなかった。

そして時が経ちあるツイートを目撃することとなる。

"フェアリーマスター"ユウタタカハシが青黒フェアリーを使いGPアトランタで上位入賞(俺の記憶が正しければ、2018/10/13のMOモダンチャレンジの結果を除いてこの型のフェアリーが世に出たのはこの時が初めてだ)。そして、続くGPポートランドではトップ8に入賞!2度の上位入賞で、このデッキの実力が確かなように思えた俺はすぐにMOを起動しリーグにジョインした。

負けた。

負けに負けまくった。その後も他のデッキと並行しつつ調整を行うも。このデッキが専用機、そして以前とは世界が変わったとしてもまだまだキツイことを思い知らされてしまう。12月〜2月にかけて約3ヶ月にわたるフェアリーの調整はここで一旦頓挫してしまうんだ。

だいたいこいつらのせい


-他に調整したデッキ

モダンで調整をする際に心がけている事があって-

①押し付けの強いコンボ・アグロデッキ。
②トップメタ。
③トップメタに強いデッキ。

以上、最低でも上記3つのデッキには触れておくという事だ。GP横浜までは10個以上の大きなプレミアイベントがあり大なり小なりメタの推移あるはずで、直前になって自分のデッキの立ち位置が悪くなったとしても他のデッキへの乗り換えを容易にするためだ。

そして、最も習得に時間のかかるコンボデッキに最初に手をつけうえで、プレミアイベントでのメタゲームの推移を追いかけつつ、調整するデッキを選択するという手順になる。


そして、主に調整したと言えるものは以下の4つのデッキだ。デッキの簡単な特徴に関しては上述したメタゲームブレイクダウンを参照してもらいたい。

・鱗親和
・イゼットフェニックス
・The Rock
・グリクシスシャドウ


・鱗親和
1月21日の禁止改訂を待ってからでは間に合わないと考え、多少のリスクはあったもののクリーチャーコンボデッキ最有力の鱗親和の練習に取り掛かった。動きが複雑で習得に期間を要することと、たとえ使用しなかったとしても敵にした際にわからん殺しをされないようにするためだ。リーグで5-0ができる程度に鱗親和にも慣れデッキに手応えを感じ、《古きものの活性》が禁止改訂を免れたため事なきを得たかのように思えた。しかしながら、すでに流行の兆しを見せていたイゼットフェニックスの爆発的流行が起こり鱗親和は急激にメタゲームの外に追いやられてしまう。

約束された盤面崩壊と7点パンチ。相手のフルタップも許容される除去の存在に圧倒的不利を強いられた。


・イゼットフェニックス

このデッキがいかに優れたデッキなのかは周知のとおりだろう。確かに強いデッキだが、俺がこのデッキを握れなくなったのは2つ理由があって、ミラーマッチが下手くそなことと、後述するグリクシスシャドウの台頭が原因で思うように勝率を上げる事ができなかったからだ。いくら対策されづらいとはいえ明らかにマークされているデッキを握るリスクをとることは許容できず、対策される側に回るよりも対策する側に回ることを選んだ結果このデッキは最終的に候補から外れることとなった。

グリクシスシャドウの台頭以降、イゼットフェニックスは《紅蓮術師の昇天》型に移行しその相性差を大きく改善することに成功する。このデッキを候補から外すには早すぎた。


・The Rock

メインから無理なく墓地・土地・バーン対策ができ、黒除去・ハンデス・稲妻で除去られないクロックを擁し"理論上"現環境ベストフェアデッキの筆頭であるBGミッドレンジ。人に勧めておいて自分で試さないわけにはいかないよな。もちろん試したんだが、そう、なんというか...一言で言うと性に合わなかったんだ。もちろん、そんな理由でデッキを避ける事はあってはならないはずなのだが、カードの引きムラや初手のかみ合い次第で勝敗が決まる事が多く、その勝率も満足のいくものではなかった。そして、単純なカードパワーで言えば、ジャンドやアブザンに比べて極端に落ちる点が気に入らなかったんだ。だが、もちろんBG系ミッドレンジが好きな人にとっては素晴らしいデッキで、GP直後の今でもこれほどまでにこの環境にうってつけのデッキはないと思っている。

後述する青白コントロールの台頭もこのデッキを選択する大きな理由になる


・グリクシスシャドウ

イゼットフェニックスキラーとして再興したグリクシスシャドウ。トロン・ドレッジ・バーン・鱗親和・The Rockなど苦手なデッキは多かったが、それでも勝率は6割を超え手応えは十分に感じていた。メイン墓地対策が当たり前となりドレッジが数を減らした事も追い風となり、もうこのデッキを限界まで調整しGPにサブミットする...

はずだった。しかし、現実はそう甘くはなかったんだ。


ここからの2週間でどん底まで落ちる事になる


その流れを簡単に説明すると-

①メイン墓地対策の影響はグリクシスシャドウにも及び弱体化を招いた。
②《紅蓮術師の昇天》型イゼフェニが主流になり以前ほど相性が良い相手とはいえなくなった。
③《紅蓮術師の昇天》《外科的摘出》がイゼフェニのメインに定着し《はらわた撃ち》が消えたため、環境から姿を消していた5C人間が再興してきた。

④GP直前のSCGオープンで《オルゾフの簒奪者、ケイヤ》を擁するエスパーコンが入賞したことを契機に、MOを中心にグリクシスシャドウにとって致命的なデッキ(エスパー・アブザン)が一時的かもしれないが流行した。

⑤極め付けは、GP超直前のモダン神決定戦で青白系コントロールが上位を座間したことだ。国内でGP以外に行われる最も大きなモダン大会で結果を残したデッキは、まさにこの環境における最終回答であり青白コントロールがGP横浜で激増するであろうことは火を見るより明らかだった。

以上の流れから、グリクシスシャドウの優位性は失墜してしまいこのデッキを握る理由がほとんどなくなってしまったんだ。最も調整を続けてきたデッキを手放すことは悲しい決断だが、これらの不利な要素を覆すだけの経験もデッキ構築能力も持たない俺は、GP直前にグリクシスシャドウに別れを告げねばならなかった。

調整開始当初の自信は何処へやら...


-青黒フェアリーとの再会

GP横浜直前の最終的なメタ予想はこうだった。

①依然として多いイゼフェニ
 -やはり強いデッキは多い。
②青白コンの激増
 -直前に結果を残したデッキを握りたいと思うのが人間の性だろう。
③ドレッジの減少
 -あれだけの墓地対策を見せられればきっと減るはずだ(願望)。
④トロン・バーンはやはり多い
 -トロンとバーンは日本モダンGPの風物詩。そしてイゼフェニ・青白コンにも強いため、いつも以上に増加する可能性が高い。

※TOP8にドレッジが3人入賞している事を除けば、2日目進出時点でのメタゲームブレイクダウンをみると、悪くないメタ予想だったように思う。

以上を踏まえて、イゼフェニ・バーンに強く、青白コンにも5分以上。トロンにもジャパニーズサムライダマシイで立ち向えるThe Rockが最有力候補になった(『あとは、イゼフェニ・青白コンに良いものの、バーンとトロンが懸念材料の青黒フェアリー...』)。一抹の不安はあるもののこれで行くしかないと思っていた俺はとあるツイートを目にすることとなる。

『圧倒的僥倖ッ!!』

プロに直接アドバイスをもらえる機会なんて滅多にない!
『あ、ありのまま今起こった事を話すぜ。俺はクレジットカードを作り課金していたと思ったら、いつも間にかクレジットカードを作り課金していたんだ(当たり前)』

そして...


最高のアドバイスをもらった俺はバーンとトロンを意識して青黒フェアリーの最終調整に取りかかり-

最後のMOリーグで5-0を達成しデッキが決定!
(青白コン、呪禁オーラ、The Rock、唸りプリズン、緑トロンとメタデッキに当たった上でというのも大きかった。)


金曜MCQとGP本戦

この時のリストは、トロン・バーン・青白コンにもサイドインできる《呪文貫き》を《最後の望み、リリアナ》と入れ替えたかたちに。

-金曜MCQ〜4-2〜
R1:○○青白コン
R2:○×○イゼフェニ
R3:○×○鱗親和
R4:○○イゼフェニ
R5:××赤緑エルドラージ
R6:×○×アミュレットタイタン

このデッキはエルドラージアグロにはほぼ勝てないんだ。だが、仮想敵への感触は良くそのまま本戦へ。

-GP本戦〜5-3の初日落ち〜
R1:bye
R2:○○イゼフェニ
R3:×○○《虚空の盃》型ドルイドコンボ(Onogamesユウタクボ)
R4:×○○青白コン
R5:××イゼフェニ(ショウタヤソオカとのフィーチャーマッチ)
R6:○○SCZ
R7:××Gトロン
R8:○×-白単エメリア

ショウタヤソオカのイゼフェニには勝つ事ができず!流石に違いすぎる格の差を見せつけられたが、一緒にマジックができた事は本当に幸せだった!!
そして、最終戦は引き分けの末...オーストラリアから日本にやって来たというMTG紳士にトスをすることに。(彼は2日目でプロポイント1点を獲得できたことを報告に来るともに、日曜MCQのバブルマッチに挑む俺の事を応援に来てくれた!MTGというゲームは改めて最高だと思い知らされたよ!!)

GP本戦は初日落ちという残念な結果に終わってしまったが、何も得られなかった訳じゃない。

『《ヴェールのリリアナ》は確かに強いけど手札を抱えたいフェアリーの戦略と食い違ってしまうから減らしても良いかもしれない。』
byショウタヤソオカ
『黒ボム《虚無の呪文爆弾》は取っておかなきゃダメだよ。』
byユウタタカハシ

2人の偉大なプロプレイヤーのアドバイスを胸に日曜MCQへ。

日曜MCQ

このデッキでは《ヴェールのリリアナ》と役割の似ている《ヴェンディリオン三人衆》を1枚入れ替え、《虚無の呪文爆弾》をサイドに取るかたちに。

R1:○○青赤ストーム
R2:○×○マルドゥパイロマンサー
R3:×○○アブザンカウンターカンパニー
R4:○×○バントスピリット
R5:×○○青白コン
R6:○○イゼフェニ
SE1:○○緑トロン
SE2:○○青白コン
SE3:×○○青白コン(Onogamesタカヤサイトウ)(しつこいようだが、嬉しかったので念のためカバレージへのリンクをもう一度貼っておく)

5位抜けの9-0で優勝!!
明らかに不利なデッキ(ドレッジ・エルドラージ)に当たらなかったことは当然大きかったが、メタ読みがうまくはまったおかげで青黒フェアリーを活躍させることができたんだ。直前にデッキを握り変えたものの、それまでにこのデッキを調整していたおかげで割とすぐにこのデッキに適応することができたので本当に良かった。

もし青黒フェアリーに興味を持った人がいるなら、ユウタタカハシの青黒フェアリー記事をぜひ買って読んでみてほしい。実際に俺もこの記事のおかげでフェアリーへの理解を深め、MCQで優勝する事ができたんだ。(デッキの性質上、すでに購入済みというプレイヤーが多いかもしれないが...)また、許されるのであれば俺もフェアリーの記事を書いてみたいと思っている。

マスターの思考が垣間見れる貴重な機会



-終わりに

今回のモダン環境は当初の予想よりもメタの巡りが大きく、環境から姿を消していたデッキが突如としてメタの一角を形成するという激しさがあった(《はらわた撃ち》減少に伴う5C人間の再興がその最たる例だろう)。そのため、GP直前に使う予定のデッキが使えなくなってしまったり、止む無く心中するより他ないプレイヤーが少なくなかったように思う。これには、デッキ単位ではなくカード単位という形でデッキの有利不利が大きく変化する環境であったため、水面下でメタが変化しそれが突然姿を表すというかたちになったことが要因と考えられる。単純にデッキの多い少ないだけで判断するのではなく、採用されるカードの変化にまで注意を払いメタを予想する必要があったんだ。

そして、GPを優勝したデッキは鱗親和!イゼフェニ・青白コンと相性の良くないデッキが上位におり、決してメタ上の立ち位置が良いわけではなかったが、それらを意識した構築で優勝をかっさらっていった。どの環境でも共通して言えることかもしれないが、今回もまさにデッキ選択・構築の腕で差が出る環境だったと言えよう。


最後まで読んでくれてありがとう。GP横浜は終わってしまったが、もうしばらくモダンからは目が離せそうもない。なぜなら、今日から始まるMCロンドン。そして、俺も出場する(!)予定のMCバルセロナとモダンの大会が続いていくからだ。さぁ、みんなで応援していこう!日本からのプレイヤー達が異国の地で健闘することを祈って!


モルテン・ノソノスキー

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